黒柳徹子
そんな『徹子の部屋』の近年の名勝負を振り返り、名将・黒柳徹子の功績をたたえようではないか!!
『徹子の部屋』の魅力
「『徹子の部屋』って人間力の勝負の場なんです。徹子と対峙するとゲストの器がはっきりと出てしまう」
「まだ男尊女卑が色濃かった昭和の時代、物おじせずに鋭い質問で切り込んでくる徹子さんは女性として特異な存在でした。彼女のような存在を前に、大スターたちも困ってしまったのかもしれません」(テレビ誌ライター)
「徹子さんも今年8月で88歳になります。はっきり言って彼女に残された時間は有限。徹子の時間を無駄遣いしてほしくないからゲストの人選は大事にしてほしいのです」
「ご老人の茶飲み話のような内容こそ面白いんです。例えば、先日お亡くなりになった橋田壽賀子先生や、瀬戸内寂聴さんがゲストの回にハズレはありませんでした。
「岡田茉莉子さんと吉田喜重監督、岩下志麻さんと篠田正浩監督などが出た際、家庭に収まらない女優さんのことを徹子さんは絶対に責めません。だって、女優って世間のことを知らなくていいし、しみったれた家事なんてしない人たちですから。そもそも、徹子さん本人が家事はお手伝いさんに任せっきりですしね」(イライザさん)
相性抜群の「ジャニーズ」
「ジャニーズのタレントがよく出演しますが、彼らは粗相がないし、決して徹子さんを困らせません。徹子さんってゲストにむちゃ振りするじゃないですか。急に『ちょっと踊ってみてよ』と言われても、彼らはBGMなしに見事にダンスを披露します。場数を踏んでいるから何を振られても完璧なんです」
「ジャニー喜多川さんの教育の賜物か、ジャニーズタレントは礼儀正しいので大物の女性に気に入られやすく、徹子さんもご多聞にもれず喜んで話を聞き出そうとする。徹子さんの覚えもめでたくなるわけですから、ジャニーズタレントにとって『徹子の部屋』は特別な番組なんです」(芸能レポーター)
「V6の長野博さんが出演したときが素敵だったんです。徹子が『人生の最後に食べたいものは何?』って質問すると彼は『おにぎりです』と答え、徹子が満足げに『ご飯て、おいしいわよねえ』と言うと、エンディングテーマが流れ出した。おにぎりほど誰も傷つけない回答ってないじゃないですか? 本当に返しがうまいなと思いました」
お笑い芸人ならではの空回りも
『アメトーーク!』が特集を組んで以来、お笑い芸人の出演が話題になることが増えた。しかし、『徹子の部屋』をディープに見るマニアはこの風潮を決して歓迎していない。
「芸人さんってどうでもいいエピソードをナチュラルに話すのではなく、『面白いことを言わなきゃ』と力んで空回りすることが多いじゃないですか。それって、この番組の雰囲気に合っていないんです」(イライザさん)
「フワちゃんファンはTwitterで『徹子さんが食いついてる!』ってポジティブに捉えてたけど、そんなことはなかったですね。徹子さんを無理に力でねじ伏せようとしてるし、明らかに徹子さんは“勝負にならない”とばかりにドン引きしていました。事実、フワちゃんが『徹子ちゃん、また来ていい?』って聞いたら、徹子さんは真顔で『2度と来ないでください』って言っていましたから」
「ネタをやっても徹子が笑わずにつらい空気が流れたり、スベったところを笑いにする流れが芸人回ではお決まりになっています。でも、『徹子の部屋』のマニアは、その方向性を決して望んでいません。いいところを見せられない芸人にとってもマイナスだし、この方向性に食傷ぎみの視聴者が増えているんです。もしかしたら、お互いに得をしないコラボかもしれないですね」(テレビウォッチャー)
「思想的に偏りのある人や論客と呼ばれる人を呼んでみたら面白いかもしれません。徹子さんがすごいのは、世の中をよくしようと行動し続け、なおかつあの年齢でいながら思想的な偏りがほとんどないところです。あれは天才ですね。
「『徹子の部屋』が終わったら政治記者になりたい」なんて発言を残している徹子だけに、論客との相性のよさは必然だろう。
「あと、年末恒例だったタモリさんのゲスト出演も復活してほしいです。『徹子の部屋』のトークって、端的に言えばイニシアチブの取り合いなのですが、タモリさんはスタイル的に引き出すタイプの人。だから、間合いの取り方とか攻め方とか、師範同士の居合の勝負を見ているようですよ」(イライザさん)
思い出の名勝負たち
■草笛光子
〜徹子が飼い主・草笛の目の前で愛犬をバカ呼ばわり〜(2012年6月22日放送)
「草笛さんが愛犬を連れてきて『毎朝、私に新聞を運んでくれる』と再現しようとしたのですが、犬は新聞をバリバリに噛みちぎり徹子さんがマジギレしたんです。飼い主の前で犬を『バカ!』と怒鳴っている姿は衝撃でした」(イライザさん、以下同)
■片岡愛之助
〜紀香から贈られた“LOVE柄”の着物を自慢〜(2017年4月24日放送)
「妻の藤原紀香さんからプレゼントされた着物を着てきたんですが、『LOVE』の文字が柄として全身に入ってるんです。『LOVE LOVE LOVE』と入っている着物を、贈る側も『ありがとう』と受け取る側もすごいですよね。さすがの徹子さんも引き気味でした」
■千昌夫
〜肩にインコを乗せながら名曲を熱唱!〜(2012年11月1日・2018年4月2日ほか放送)
「定期的に出演する千さんは、ペットの鳥をよく連れてきます。徹子さんが烏骨鶏をひざに乗せるだけの不毛な時間が流れたり、千さんが肩にインコを乗せて『北国の春』を歌ったり。徹子さんが烏骨鶏に寄せた衣装を着てきたことも」
■いしだあゆみ&和田アキ子
〜先輩2人に囲まれたアッコがいじらしい!〜(2020年4月3日放送)
「アッコさんが出演すると徹子さんに気を使って借りてきた猫になるのが常ですが、いしだあゆみさんと出た回はすごかった。あゆみさんはとんちんかんな発言ばかりだし、徹子さんもズレたことばかり言う。会話をまとめようとする健気なアッコさんが見られるというレアな場面でした」
■平野レミ
〜亡き夫の思い出を泣き崩れずに語ったレミをいたわる徹子〜(2020年8月12日放送)
「夫の和田誠さんが亡くなってから初めてのゲスト出演でした。いまだ和田さんへの思いが断ちきれないと語るレミさんに、徹子さんは『愛し、愛されたことを胸に抱いていけば大丈夫』と。こういう感動できる回もあるんです」
■故・弘田三枝子さん
「ヨガにハマっているというミコちゃん(弘田さん)が呼吸法を披露したのですが、『フゥー』と息を吸ってから1分近く沈黙のままなんですよ。徹子さんもそれをまねするだけ。2人の超熟女が呼吸しているだけの1分弱は、テレビ的に異常事態でした」
■故・浅香光代さん
「毎日ストレッチをしているという浅香さんが徹子さんに実践講習を行ったんですが、江戸っ子だから数の数え方が『しち、はち、きゅう、とお』なんです。何度目かの『とお』の瞬間に、さすがにこらえきれなくなった徹子さんが噴き出してしまいました」
■天童よしみ
「コロナ対策でフェイスシールドを使用しているという話から、天童さんが装着したのは、つけまつげなどの化粧が最初から施された、すっぴんでもOKの自作シールドでした。徹子さんたら『あら、私も作ろうかな』ですって」
冨士眞奈美さんが語る『徹子の部屋』の魅力
「なんといっても照明が素晴らしいの!(笑)」
「あの番組がスタートしてから、20回近く呼ばれているんじゃないかしら。正確な回数を覚えてないわ(笑)。
『徹子の部屋』のいいところは……、なんといっても照明が素晴らしいのよ。ものすごく美人にしてくれるの。シワなんか全部飛ばしてくれる(笑)。あと、飾られているお花が、ゲストに合わせて生けてくださるそうで、とても素敵よね。褒めると帰り際にくださるの。
ふじ・まなみ 静岡県生まれ。県立三島北高校卒。1956年NHKテレビドラマ『この瞳』で主演デビュー。1957年にはNHKの専属第1号に。俳優座付属養成所卒。俳人、作家としても知られ、句集をはじめ著書多数。
『徹子の部屋』トリビア
●昔の『徹子の部屋』はタバコOKだった
●ビスケットに生クリームの“徹子ケーキ”は不動の人気
●ジャニーズは髪色をトーンダウンしてゲスト出演する
●マッチョは質問攻め&やたらボイパをやりたがる
●徹子が使うティッシュケースは五月みどり作
●故・ジャイアント馬場さん直伝スクワットの話をしがち
●攻略法「動物を連れてくる」が広まりつつある
●学者が好き、外見はなんと〇〇好き!?
イライザ・ロイヤル●コラムニスト、パンクバンド「イライザ・ロイヤル&ザ・総括リンチ」ボーカル&代表。感想を毎日Twitterに上げるなど、『徹子の部屋』ウォッチャーとしても知られている。
(取材・文/寺西ジャジューカ)