今年の2月に誕生した娘を抱っこするA子さん
精子提供を受けたA子と、 精子提供をしたB氏の出会い
「最初の子どもが生まれてから10年以上、私たち夫婦は次の子どもを授かりませんでした。ずっと欲しかったんです。だから2人目が生まれて、本当に主人は喜んでいます。戸籍上は主人の子どもですが、実の子ではないんです……」
「主人には内緒で精子提供を受けたんです」
「夫と同じIQ130以上で、偏差値がトップクラスの大学に入れる子どもが欲しかった」
「日本でAIDを行う医療機関はもともと少ないうえ、だんだん減っています。理由は精子提供者の情報開示の必要性が高まってきた点にあります。精子ドナーの方が将来特定されれば、養育費や扶養義務の話になりかねない。結果的に、法的規制のないネットで精子提供が行われているわけです」
「ネットでの精子提供は今回が初めてでしたが、実は大学時代に、知人から精子提供を求められたことがあり、不妊症で困っている人の存在を知りました」
「SNSなどで精子提供の活動をされている方の情報を集めて紹介するというサービスを行っています。男性の登録者は現在100人以上、20代から50代まで幅広い年齢層です。無責任な男性を排除する意味でも、提供者からは登録料3万円をいただいています。男性には、マッチングした女性から謝礼を受け取ることを推奨していますが、個人の判断なので、無償で提供している方もいます。必ず女性から毎日1人、2人はご連絡をいただいていますね」
提供方法は自然な性行為で
「サイトとしては、掲載されている以上の情報は保持していません。登録者がウソをつくことも可能ですが、結局、面談で女性に直接確認をしていただいていますね」(前出・運営者)
「絶対に精子提供を受けたいというよりは、条件の合う人がいたらな、くらいの気持ちで、サイトではなくSNSを通じて、5人ぐらいの方に会いました。なかなか条件に合う人は見つからず、話は進みませんでした」
「主人と容姿が似ていて、主人の卒業した大学と同じくらいの学歴で、奥さんや恋人がいないことなどが条件でした。B氏は主人と容姿の特徴が似通っていて、金融会社で働く京都大学卒という男性でした。本当に奇跡だな、と。でもその人が、結果的に私をだましたんです」
「日本人だと思っていたら、中国人でした。10年以上、日本で暮らしているので、日本語はペラペラでしたけど。奥さんがいることも後でわかりました。京都大学卒というのも大ウソ。それでも信用してしまったのは、感じのいい人だったこと、名前は伏せつつも社員証を見せられたのも大きかった。ネットでの精子提供では、あまりお互いの名前を明かさないことが多いのですが、彼は下の名前だけ教えてくれました。日本人の名前だと思いきや、後から中国人の名字だとわかったんです」
「6月に妊娠がわかるまで、週に2、3回だったと思います。私の要望で、精子提供は自然な性交渉を通じてお願いしました。毎回通っていたホテル代として総額15万円くらいは私が支払いました」
「精子の提供者と性交渉を行う危険性としては性感染症のリスク、夫婦間以外で性交渉をすることによる夫婦関係への悪影響などが考えられます」
B氏の素性を調べ出すA子さん
「私たち夫婦は深い信頼関係で結ばれている」と胸を張るA子さんが、なぜ異性をやすやすと受け入れることになったのか。真相はこうだ。
「私には中学生になる息子がいるのですが、息子と生まれてくる赤ちゃんに差をつけたくなかったんです。自然に妊娠して授かっている長男と同じように、自然に妊娠したかった思いがありました。
主人のことを考えると、性交渉を行わないで人工授精するほうが適していると思います。夫を裏切ることになっても、生まれてくる子どものことを選んだということです」
「6月に妊娠がわかった後も、赤ちゃんについての連絡を、B氏とクライアントとしてとっていました。ところが11月ごろ、急に彼のLINEの態度が粗暴になったんです。“は? お前何考えてんの?”と口調が荒くなってきて。生まれてくる子どもの父親ですから、彼がもし犯罪者だったりしたら取り返しがつかない。それで、彼のことを調べてみようと思いました」
「B氏には、お互い探り合わない約束なのに、会社にまでなぜ連絡するんだ! と怒られました。でも、そもそも初めの時点での話がウソだったことが問題なのです。奥さんがいるのを知っていたら、相手の人間関係を壊したくないと思っていたので、精子提供は受けていなかったはず。一流企業に勤めていることを悪用して人を信じ込ませたわけです。彼には謝罪や説明を求めましたが、まともに取り合ってもらえず今に至っています」
「そもそも初めから匿名での精子提供という約束で、お互いの個人情報を詮索しない約束でした。もちろん会社についても、私は何も話していません。初めて会ったときは、ケータイと財布しか持って行っていませんし、会社や家庭関係のことなんて言う必要がないんですよ。学歴については『国立大学卒』とだけ伝えています」
「妻や恋人はいるかと聞かれましたが、プライベートについて伝える必要はないので。ただ、妻はいます。後にA子さんが妻のフェイスブックのメッセージに連絡をしたことで、精子提供をしていたことは知られてしまいました。妻と私の間に子どもはいません。こんな状況でも離婚するつもりはないと言ってくれてます。
「むしろ私は彼女に脅されているんです」
当初は妊娠目的だったが その後も続いた“関係”
「私はあくまでボランティアとして匿名の精子提供を行っています。A子さんから謝礼をもらったことはありません。
「彼女とは今年の3月まで会っていて、身体の関係を求められました。嫌です、と断ると、ネットで誹謗中傷されました。私は彼女に対して恋愛感情はありませんが、彼女は私に好意があります。LINEで、何度も妻と別れて結婚してほしい、と迫られています。何度も断っています」
「確かに、妊娠が発覚した後も、何度かB氏といつものホテルで会っています。性交渉もしています。いま思えばおかしいですよね。どちらから誘ったのかはよく覚えていませんが……」
「彼女と本気で争うことになったら、旦那さんにすべてを知られることは明らかです。もしA子さんが離婚することになったら、生まれた赤ちゃんを養うことは難しい。そうしたらどうやって彼女は生きていくのでしょう。私は多国語を操ることができ、職も安定しています。万が一のときは、子どもの親権を主張する考えもありますし、妻にも承諾を得ています」
「日本産科婦人科学会としては認めていませんが、ネットの精子提供は法律で明らかに禁じているというわけではないので、横行するのでしょう」