辰乃輔くんが書いていたノートを指しながら当時を振り返る母・佳奈さん。SOSは再三、出されていた
《教育委員会は大ウソつき》
「今度こそさようなら」
《教育委員会は大ウソつき。いじめた人を守って嘘ばかりつかせる。いじめられたぼくがなぜこんなにもくるしまなきゃいけない。僕は、なんのためにいきているのか分からなくなった=略=くるしいしい、くるしい、くるしい、つらい、つらい、くるしい、つらい》《今度こそさようなら》
「うまく言葉にできないためノートは小学生から書いています。主に学校の先生に見せるためですが、苦しくなり見せてくれるときもありました」
「自殺の数日前にも、家からいなくなったんです。弟に“さよなら”と言っていたようで、すぐ探しに行きました。飛び降りたのと同じマンションの11階でうろうろしていたのを住人の人が見つけてくれて、話を聞いてくれたのです。“いじめがつらい”と言っていたようです。帰ってくると、卒業アルバムを見ながら“この先生が裏切った”“いじめを解決してくれなかった”と言っていました」
「(ノートに)遺書を書いていたので、(自殺を)決めていたのかもしれません。お笑いが好きなんですが、楽しいことよりも、フラッシュバックが強かったんです。いじめられたときから時間が止まっていたんだと思います。進めるにはどうにかしないといけないと思っていたんですが」
「いじめはない」と教頭
「6月にはカバンを踏まれ、シャーペンが折られ、水筒の中身がなくなっていました」
ノートをやりとりしていた担任は、いじめを知り「頑張れ、頑張れ」と書いたが、辰乃輔くんは「これ以上、どう頑張ればいいんですか?」と反発した。夏休みの宿題の作文にも、こう書いている。
《ぼくは、小5、6、今もいじめられて、かげで悪口やなかまはづれをされています。ぼくの存在って、存在なんてなくなればいいと思います》(原文ママ)
《ぼくは、サッカー部の友達からいじめられている。(具体名をあげ)2年の先ぱいたちに仲間はずれにされたり、むしされたり、かげ口を聞こえるようにする》(1日)
《ぼくはこれからどうしたらいいのか分からない。ぼくは消えたい》(11日)
「“なんでこんなに苦しまなければいけないの?”と言っていました」(佳奈さん)
学校に連絡すると校長が訪ねてきた。SOSに気がつかなかったのかと聞くと、校長は「あれ(手紙)がSOSですか?」と言ったという。
《学校は、いじめがないって言ってるけど、いじめられていたぼくはなんだろう》
《ぼくは、学校のじゃまものなんだ。いじめられたぼくがわるい。学校の先生たちはなにもしてくれない》
《死んでぼくがいじめられた事を分(か)ってもらいます》(25日)
なぜいじめっ子が学校へ行けるの?
「“いじめられた僕が学校へ行けなくて、いじめた子たちがなんで学校へ行けるの?”と言ってました」(佳奈さん)
「辰乃輔は“自分の意思じゃないのに”と言っていました。この暴言のあとから寝つけないようになり、悪夢を見たり、1日2時間ほどしか睡眠時間がありませんでした」
「(辰乃輔くんの死は)いじめや学校、市教委の対応による苦しみやつらさが積み重なった結果だと思う。高校は楽しいと言っていましたが、またいじめられるのではないかという不安や過去のフラッシュバックが勝ってしまった」
「子どもを守れるのは大人です。子どもの悲痛な叫びを握りつぶしたのも大人です。何げないひと言が子どもを死に追いやることをわかってほしい」(佳奈さん)
(取材・文/渋井哲也)