東日本大震災での避難所 撮影/週刊女性写真班
「避難所で、夜になると男の人が毛布の中に入ってくる。仮設住宅にいる男の人もだんだんおかしくなって、女の人をつかまえて暗い所に連れて行って裸にする。周りの女性も『若いから仕方ないね』と見て見ぬふりをして助けてくれない」(20 代女性)
「避難所での性暴力」 支援者たちが口を閉ざした過去
「性暴力は災害と関係なしに普段からある問題です。災害時に性暴力がいたるところで起こっていたわけでは決してありませんが、それでも、こういったことが実際にあったことを、多くの方に知っていただきたいと思っています」
「これらの話をすると、若い子の中には “じゃあ私は災害が起きても避難所に行かない”という子がいます。それは危ない話で、逃げるときは逃げないといけないし、そういう反応につながってしまっては本末転倒。当時何が起きていたか話すときには、必ず“対策”とセットでお話しするようにしています」
被害届を出せない「理由」
「避難所での強姦、強姦未遂も報告されていますが、それ以外では例えば授乳するところをジッと見られた、ストーカー行為をされたという話もありました。
「避難所で深夜、強姦未遂。“やめて”と叫んだので、周囲が気づき未遂に防いだ。加害者も被害者も被災者だった。110 番通報したので、警察官が事情聴取したが、被害女性が被害届を出さなかった」(50 代女性)
「まずは、加害者も同じ地域の人という場合も多い。今後も同じコミュニティーで生きていかなければならず、性被害を受けたことが地域の人に知れ渡ったり、加害者と正面から敵対したりするようなことは、できれば避けたかったんだと思います」
「避難所の運営ってすごく大変なんです。自主運営の避難所は、地域の方が寝ないで目を回しながらやってる。しかも、東日本大震災は大災害でしたから、運営する側の人たちも、家族を亡くしながら頑張っているかもしれない。
「対価型の中でも特に忘れられないのが、若いお母さんで、子どもを連れてもう食べるものもなくて困っているところに“特別に食べものをあげるから夜、取りに来て”と男の人に言われて行くと、あからさまに性行為を強要されたという話。現代の日本でこんなことがあるのかと、驚きました。
どちらに頼るでもない、 “男女がともに担う”防犯体制を
「多くの避難所では男性たちがリーダーシップをとっており、意見を出し合ったりいろいろ決める場に女性たちが少ないのが現状です。しかし、女性も男性とともに責任者として避難所の運営に関わることが必要。どこに女性用の仮設トイレを置いたらいいか、女性用品などは、やはり女性にしかわからない。安全対策も男性だけが担当者の場合、女性は訴えにくいものです」
男性に任せっきり、女性に任せっきりではなく、「男女がともに担う、防犯体制が有効」とのこと。さらにこんな具体策も。
「トイレを男女別にし、女性用トイレの場所は女性の意見を聞いて決める、避難所の開設直後から授乳室や男女別の更衣室を設けるなど、避難所のスペース活用にも安全確保の視点が重要です。また、巡回警備をしたり、啓発のポスターを貼るなど暴力を許さない環境づくりの整備や相談窓口を設けること、災害時の支援活動を行う人向けに、災害時の性暴力について知り、その防止に努めるよう研修を行っておくことも大切なことです」
「ひとりで出歩かない、周りに声をかけあって移動するなど、個人でできることもなくはないのですが、それだけが対策になってしまうと、“自己責任論”になってしまう。ひとりで出歩くなって言ったのに……と、守らなかった人の落ち度となっても困る。
また、先ほど“若いから仕方がない”と言って周りの女性が助けてくれなかったという事例を出しましたが、そのような間違った考えに加担しないのも、私たちにできることだと思います」
「多くの女性たちが声をあげ、それに男性たちが一緒に頑張ろう、この問題を考えようと思ってもらえたら」
参考:静岡県警 防災防犯マニュアル「防災女子赤のまもり」「防災女子青のまもり」