生活保護利用者に対し、差別発言をしたメンタリストのDaiGo
一度ネット上に出た言葉は、自分にずっと付いてまわる
「生活保護の人たちに食わせる金があるんだったら、猫を救ってほしいと僕は思うんで」
「自分にとって必要ない命は軽いんで。ホームレスの命はどうでもいい」
「いない方がよくない? 正直、邪魔だしさ。プラスになんないしさ。臭いしさ。治安悪くなるしさ。いない方がいいじゃん」
「もともと人間はね、自分たちの群れにそぐわない、社会にそぐわない、群れ全体の利益にそぐなわい人間を処刑して生きてきてるんですよ。犯罪者を殺すのと同じですよ。犯罪者が社会の中にいると問題だし、みんなに害があるでしょ? だから殺すんですよ。同じですよ」
「自分の税金が生活保護の人たちにまわるぐらいだったら、猫にまわしたいと思うんですよ」
「2020年には赤坂御所に招かれて天皇皇后両陛下に生活困窮者支援について、なんかこう説明とかしてるみたいなんですけど、その方にさっそく連絡をとって行かせてほしいと話しました」
と言うが、なぜわざわざ北九州まで、このコロナ禍に? 都内にも困窮者支援団体はいくらでもあるだろう? と不思議に思わざるを得ない。
命に優劣をつける権利が 自分にあるという考えは危険
「13日夜の謝罪では生活保護利用者全般や、ホームレスの人たち全般に対する差別を取り下げたわけですが、そこで使われているロジックが『頑張っている』という表現なんですね。抱樸へ行って奥田さんと話をするというのも、抱樸が支援したホームレスの人の『半分以上、57%ぐらいの人が復帰する。そのおかげで僕らが払ってる税金が無駄にならないで済むわけじゃないですか』と話していて、ホームレスの人たちの中でも頑張っている人は生きる権利を認めてあげていいよという話です。
それは、生産性とか、自分の好みとか、頑張ってないと自分が思う一部の人たちを社会から抹殺しても構わないという根本的なところが変わっておらず、線引きを変えただけです」
「(7日の動画の)発言のすべて、あまりに問題が多すぎてどこが問題かひとつに絞れないほどですね。根本的には死刑制度の例を出して、処刑してもいい、殺すといった言葉を使い、優生思想があります。命に優劣をつける権利が自分にあるという考えが、いちばん危険だと思います。他者の生きる権利を決定できると思っていて、その矛先がホームレスの人たちと生活保護の利用者に向かっている」
「ただでさえ生活保護の利用をためらう方がたくさんいらっしゃるのに、制度から困窮者を遠ざけてしまい、間接的に人を殺してしまいます。またホームレスの人たちについてかなりひどい言葉で差別して、『いないほうがいいじゃん』とまで言っている。昨年も岐阜と渋谷区で路上生活の人が襲撃によって殺されていますし、90年代半ばから全国で襲撃によって命を奪われた方は20数人います。ほとんどが若者による襲撃ですが、元々そういうヘイトクライムが日本各地で起こっている状況で、さらにヘイトクライムを誘発しかねない発言をYouTubeでチャンネル登録者数が250万人にも及ぶインフルエンサーとされる人がするのは、偏見をさらに助長する危険なものです」
それでも生活保護を後回しにする厚労省
「何かから抜け出そうと努力している人は評価されるべき」
「(生活保護利用者の中に)努力している人がいっぱいいます」
「自分はこんなに頑張れない。ひたすら後悔の念」
「厚生労働省が13日に生活保護の申請は国民の権利ですとした呼びかけをツイートしたことはよかったんですが、ホームページでは、生活を支援するためのメニューを紹介するページを、広告費をかけてまで宣伝しているのに、そこには最初のページに生活保護が出てきません。貸し付けの話がいちばん最初で、生活保護はページの最後にPDFのリンク先があって、そこに飛ぶと、18ページ目にやっと出てきます。生活保護の担当課はがんばっていても、厚労省全体として生活保護を後回しにしようとしているのかもしれません」
和田靜香(わだ・しずか)◎音楽/スー女コラムニスト。作詞家の湯川れい子のアシスタントを経てフリーの音楽ライターに。趣味の大相撲観戦やアルバイト迷走人生などに関するエッセイも多い。主な著書に『ワガママな病人vsつかえない医者』(文春文庫)、『おでんの汁にウツを沈めて〜44歳恐る恐るコンビニ店員デビュー』(幻冬舎文庫)、『東京ロック・バー物語』『スー女のみかた』(シンコーミュージック・エンタテインメント)がある。ちなみに四股名は「和田翔龍(わだしょうりゅう)」。尊敬する“相撲の親方”である、元関脇・若翔洋さんから一文字もらった。