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コロナ禍で変わりつつある卒業式
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「『整然と』、ということをすごく求めてきましたよね。だから学校にもよりますが、とても細かいところまで練習させていました。
「練習のとき、子どもたちにかなり厳しい指導が行われていましたが、そこまで『厳粛さ』や『完璧さ』を求める必要はあるのかな? と疑問でした。入学式は練習がありませんが、音楽などその場の雰囲気もあって、それなりにちゃんとできますよね。だから卒業式も、そこまで時間をかけて練習しなくてもいいんじゃないのかなって」
“卒業式の練習キツすぎませんか。「そろえる」ことに美徳を感じる系教師が本領発揮。入試前に授業をつぶし、極寒の中、長時間練習
「動きは全員そろえろ!」
「音をたてるな!」
「動くな目立つ!」
「我慢しろ!」飛び交う怒声
体罰?軍隊?ばりの練習は卒業生のためでなく、一部の大人の自己満と思う”
では、なぜそんなに「整然と」や「厳粛さ」が求められてきたのかというと、「そのほうが、保護者などから『よかった』と言われるから」とのこと。
「なんでそんなに全員そろって同じようにしないといけないのか? と思っていましたが、管理職(校長・教頭先生)や教務は『そういうところをきちっとやっていると、来賓や保護者からよかったと言われる』って言うんですよね」(前出のY先生)
「親の期待もあったりしますよね。いいものを見せてもらえると、やはり感動もするし、それが結果として子どもの成功体験にもなる、と考えられてきました」(公立小学校教員・N先生 神奈川県 50代)
「(ほかの年と比べて)今年はどうだった、と言ってくるのは保護者よりも、毎年卒業式に出ている地域の方(来賓)や、中にいる先生たちかもしれません。保護者は、きょうだいがいる人しか卒業式に何度も出ないので、そんなに言ってこないんじゃないですか」(公立小学校教員・O先生 千葉県 40 代)
「卒業式はほかの学校行事に比べると、そんなに親からいろいろ言われることはない気がします。卒対の保護者とのやり取りはけっこうありますが」(公立小学校教員・S先生 千葉県 50代)
簡素化されて「よかった」こと
「コロナの影響から、去年(2021年)の卒業式は練習なしで、当日30分説明をしただけ。でも、問題なくできちゃったので、『あ、できるじゃん』と職員室でも話題になりました(笑)」(前出のU先生)
「以前は『卒業式は、こういう流れでやるもの』というふうに我々(教員)自身も思っていたので、あまり変えずにきたところ、コロナでガラッと変わって、『それでいいんだね』と分かった。だから、練習にかける時間は減っていますね。減らすことに、抵抗がなくなったと思います」(前出のS先生)
「児童数が多い学校は、以前から『呼びかけ』を全員にやらせていなくて、『このほうがラクだな』と感じたことはありました。全員にやらせる学校では、声を出すのが苦手な子にも、無理に練習させたりしていたので」(同S先生)
「コロナの前の話ですが、一度、卒業式で礼法をやらなかった年があったんです。右手が先だとか、左を見てお辞儀だとかをやることに意味があるのか考えて、必要最低限に省いたことがあって。そのときの卒業式が、一番感動的でした。これはどっちでも変わらないだろう、ということを省いた結果、得たものは変わらなかった。それなら、大事な授業の時数を潰してまで練習することではないなと」(前出のO先生)
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大塚玲子(おおつか・れいこ)
「いろんな家族の形」や「PTA」などの保護者組織を多く取材・執筆。ノンフィクションライターとして活動し、講演、TV・ラジオ等メディア出演も。著書は『さよなら、理不尽PTA! ~強制をやめる!PTA改革の手引き』(辰巳出版)、『ルポ 定形外家族 わたしの家は「ふつう」じゃない』(SB新書)、『PTAをけっこうラクにたのしくする本』(太郎次郎社エディタス)など多数。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。
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