![](https://scdn.line-apps.com/stf/linenews-issue-832/rssitem-32820641/6dd733aeb575a86666818c21bee5a07f6e54113f.jpg)
飼っていた柴犬ジャッキーを囲む一家4人。左から長男の佑基くん、加藤利代さん、長女里奈さん、次男正悟くん。彼らはなぜ殺されたうえに焼かれなければならなかったのか
「被害者の夫は追悼式にもちらし配りにも参加したことがありません。自分の妻と子どもが殺害されたにもかかわらず、そうした行事に参加しないのは、人間の情からみればおかしな感覚だと思います」
「犯人は灯油をまき散らし、蚊取り線香を使った時限発火装置を使っています。殺害から時間がたって発火しているので、綿密なアリバイ工作をした可能性がある」
「例えば事件のことを忘れたいとかいろいろな感情があるから、不参加というのは理解できなくはないですが……」
利代さんの姉が語るありし日の4人
「もうすぐ9月9日だね」
「元気にしてる?」
「ちゃんと4人一緒にいる?」
「ゆうき、お母さん守ってやってね!」
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「利代は子どもを第1に考えていたから、どんな思いであの世へ行ったのかな。助けたかっただろうなと。利代とは本当に仲がよかったんです。だから事件直後、私は身体に大きな穴があいたような気持ちになりました」
「夫に離婚迫られ、悩んでいた」
「ものすごく月がきれいな空だったんです。ああ、うさぎさんがいるな。明日は正悟の誕生日だねって」
「まだ子どもたちがこれからというときに夢も希望もすべて持っていかれた。犯人が捕まらないとこの子たちは浮かばれない。だから私も事件の原因を知る必要があります。じゃないと、あの世に行っても利代と子どもたちに会えない」
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「私が活動するので、妹の夫は出る幕がないと思っていると人づてに聞きました。温度差は感じています。3人の子どもの父親として、犯人検挙に向けた活動に命を懸けてほしい」
「実は事件の数年前から、夫は自宅に帰ってこなくなっていました。離婚も迫られ、3人の子どもを抱えてどう生活していこうか利代は悩んでいました。それでも、元の優しい夫に戻ってくれると信じていたのです。それなのに……」
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愛人に溺れ、会社の金を詐取
「夫には事件当時、交際していた愛人がいました。夜の街に足しげく通い、金銭的にも相当浪費したようですね。借金を作ってしまったこともあり、自分が働いていた会社の金を騙し取って逮捕されました」
「詐欺事件のほうは別件で、本丸は放火殺人との関連性です。ところが愛知県警は証拠不十分で落とせなかった。それで批判を受けたので今も強気に出られないのです」
「私は全く関与していないのに、警察から容疑者として調べられた。ポリグラフ(うそ発見器)にもかけられた。私が関与しているかのような報道も一部でされ、残念だ」
夜の遊興は「バカだった」
「話すことはないです。今まであなたたちメディアが書いた記事を見れば、何も話したくはないね」
「お話ししません」
「パソコンの件は、私はきちんと罪を償いました。まあ浮気も罪といえば罪かもしれないね。会社でお金を水増し請求し、キックバックをもらった。夜の世界で遊興し、(女性に)お金をあげていました。そういう内容の記事を読んだら、その延長線上に(放火殺人事件につながる)何かがあったと思うよね? だからもう何を言っても無駄だね」
「ただ、遊びが面白かった。それだけ。ちやほやされるし。今思い返せばバカだなと思う。とことん思うね。そんときは、溺れとったね。(相手は)1人だけじゃなかったから」
「私は何を言われようが、浮気の過去に触れられること自体が、『すべてあなたが悪い。だから事件が起きた。あなたわかっていますか?』というふうにしか聞こえない」
「あるわけがないとは言えないなあ。白いものも黒にできるでしょ? 権力とペンは」
「それはもう警察に任せるしかない。もし犯人が逮捕されてひと区切りついたら、たぶん(メディアに騒がれた)過去のことなんてどうでもよくなるんじゃないか。もう年だし、穏やかに過ごしたいね」
「これが取材ということであれば、この場で話したことはすべて嘘です」
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※情報提供はこちらまで 0561-39-0110(愛知警察署特別捜査本部)
取材・文/水谷竹秀
ノンフィクションライター。1975年三重県生まれ。上智大学外国語学部卒業。カメラマンや新聞記者を経てフリーに。2011年『日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」』で第9回開高健ノンフィクション賞受賞。近著に『だから、居場所が欲しかった。 バンコク、コールセンターで働く日本人』(集英社文庫)など