新納慎也 撮影/森田晃博
思いついた人天才!
「この話を聞いた当初は、僕も“これどうだろう、失敗するんじゃないかな?”と思っていました」と笑う。
「だって黒澤監督を好きな人たちは“ミュージカルなんて軟弱だ”と思っている人が多そうじゃないですか。世界観としてもテイストも真逆だし、難しいんじゃないかと。
「そんな渡辺さんの心情が、歌になることによってものすごく伝わってくるんです。“そう感じているんだ”って映画を見たときもわかってはいたんですけど、“歌にされるとよけいに揺さぶられる、感動が倍増するよぉ!”と毎日思わされています。『生きる』という作品がまさに“生きて”刺さってくるんです」
「でもこのミュージカルでは、ストーリーテラーであるだけではなく、渡辺さんの人生にも最後までかかわります。彼に影響を与えるだけではなく、彼から影響を受ける人物のひとり。
抱きしめたくなったくらい(笑)
「僕はもちろん、鹿賀さんが素敵なことは知っていましたよ。でも、こんなに新しい魅力を発見できるなんて思ってもみなかった。初めて読み合わせをしたとき終わった瞬間にムギューって抱きしめたくなったくらい(笑)。
『真田丸』の秀次も舞台経験あってこそ
「ビックリするほど、日々、台本が変わっているんですよ! 休みの日を1日つぶして、ガッツリ変更された台本を覚えていったことがあるんです。
「まさかそんなに反響を呼ぶとは思ってもいませんでした。最初は2話くらいかも、と言われていましたし。でも15話も出していただけて、感謝ですね。
三谷幸喜さんとの出会い
「三谷さんが舞台の楽屋にコンコンって訪ねて来られて。“新納さん、僕と一緒にお芝居をしましょう”と言われ、翌日にオファーをいただきました。どこを気に入ってくれたのか、1度聞いたんですよ。
生きる意味とは
「この作品にちなんでよく聞かれるんですけど“みんなそんなこと考えながら生きてるの?”って思ってしまう(笑)。そんなことを考えずに生きていてもいいんじゃないかな。
■ミュージカル『生きる』
1952年に公開された黒澤明監督の代表作『生きる』をミュージカル化。作曲と編曲を手がけるのはブロードウェイで活躍するジェイソン・ハウランド、演出は宮本亜門。惰性で仕事をするだけ、死んだように生きていた市役所の市民課長・渡辺(市村正親/鹿賀丈史(Wキャスト))は、当時、難病だった胃がんにかかったことで、これまでの無為な人生と向き合う。そして市民のための公園作り実現に尽力、生きる意味を見いだしていく。10月8日~28日 TBS赤坂ACTシアターにて上演。
公式サイトは http://www.ikiru-musical.com
にいろ・しんや●1975年4月21日、神戸市生まれ。数多くの舞台で個性と実力を発揮。近年の主な舞台出演作品は、『BENT』『スルース~探偵~』『パレード』『パジャマゲーム』などがある。’16年のNHK大河ドラマ『真田丸』の豊臣秀次を好演以降、EX帯ドラマ劇場『トットちゃん!』、NHK正月時代劇『風雲児たち~蘭学革命篇~』など映像でも活躍中。12月より三谷幸喜作・演出の『日本の歴史』に出演。
(文/若林ゆり)