
中学時代の岩崎容疑者
「彼は叫び声を上げるでもなく、怒鳴り散らしているわけでもなく、無言でした。だから子どもたちは気づかなかった。子どもたちは、犯人を背にしスクールバスのバス停を見ているから、後ろから走りながら切りつけてきている犯人が視界に入っていない。“キャー”とか“痛い”と聞こえて、(子どもたちは)それぞれ初めて後ろを振り向いた」
首から大量の血を流していた
「『通り魔だ!』という叫び声を聞きました。見てみると、子どもが数人倒れていました」
「“ギャー”という聞いたことがない悲鳴が聞こえてきた。路上に子どもたちが倒れていました。時刻は7時45分くらいだったと思います」
「小学校1~3年生までは必ずスクールバスで通います」(20代の同校OG)という現場は修羅場と化し、多くの目撃者は、怖がる子どもたちの表情、悲鳴を上げている子、途方に暮れて立ち尽くす大人たち、「お母さん頑張れ」という声、お腹を刺されている女の子、“お母さん”と助けを求める子、担架で運ばれる女の子の手をずっと握っている女の人……をなすすべもなく見ていた。そんな中に、犯行後に自殺した岩崎隆一容疑者(51)の姿も目撃されていた。
「バス停の前で倒れていました。丸刈りの頭で、黒のTシャツを着ていて、両手には何も持っていませんでした。首から大量の血を流していて、時折、頭が動いていました」(前出・70代男性)
「両手に買い物のビニール袋をぶら下げて帰宅するところを見ました。髪は白髪まじりで、長くて耳までありました」

「両親が離婚したため、小学校入学前に父親の兄の家に預けられた。伯父夫婦と伯父夫婦の長女(容疑者より4歳ほど年上とみられる)と長男(同じく3歳ほど年上とみられる)と一緒に住んでいました」
「上級生と走り回ったり、野球をしたりしましたが、体力的についてこられないと、泣きはしなかったけどひとりで家に帰ったり、家の前でポツンと座っていたりしましたね」
スイッチとなった言葉
「学校や学校関係者への復讐心が強い。学校があるから家族からこういう扱いを受けて、今でも悶々と苦しんでいるんだ、と。親から見捨てられた容疑者にとって、幸せ=カリタスだったと考えられます。いとこが今幸せに過ごしているのもカリタスだから。そういうふうに視野が狭くなった可能性はあります」
「昼間は部屋にこもりながら、悶々とそのことばかり考えてしまうという、思考がスパイラルに陥っていた。差別的に傷つけられた自分といとこの違いを生んだのは学校。学校を出るか出ないかによって、こんなに違ってしまったととらえたのではないか」
「実行に移る前に、何らかのトリガーがあった。それが(伯父夫婦からの)手紙です。その中にあった『ひきこもり』という言葉がスイッチになっている。育ての親に強い口調で言い返していますから」

「引きこもり=危険」ではない
「コミュニケーションがない中で、親から正論を突きつけられると、多くの場合が爆発するしかない」
「中高生が不登校になると親が心配しますが、中高生には未来がある。それが30、40、50となると、そうはいかなくなる。学校に入り直すことも難しく、正社員での就職も厳しい。そうなると八方ふさがりで、ひきこもりになってしまいがちです。
親も、自宅に中年のひきこもりがいるとは人には言えない。とても恥ずかしい、と地域からも疎遠となり、二重のひきこもり状態になってしまいます。
「興奮状態になって犯行計画を考えるようになったのではないでしょうか。今回のことを考えついたのは、この手紙のやりとりをした後と考えられます」(前出・長谷川センター長)
「ひきこもり=危険ではありません。ひきこもりだからやったわけではないと思いますが、ひきこもっていなければ事件は起きなかった」
「(ひきこもりの当事者と)手を取り合っていく雰囲気づくりに社会が取り組むことが、悲劇を起こさないためにも必要です」
「中高年のひきこもりに対する法整備も必要だと思います」