貫地谷しほり 撮影/佐藤靖彦
「20代のころは現場に行くだけで楽しかったんです。周りの期待に応えられたときのうれしさみたいなものもあって。つまずいたとしても、ネガティブな自分の気持ちは全部無視して、とにかく突っ走ってきました。でも今は“待つ”。落ち込んだら、まずはそういう気持ちがあることを知って、それも味わってよかったと思えるようになれるといいなって。少しは大人になりました(笑)」
「こういった問題って、誰にでも起こりうるものだなと。もしかしたら隣の人がそうかもしれない。当事者にしかわからないつらさがあると思うんですが、わからないのに“悪”と決めつけてしまうのも違うなと思ったんです」
「周りに不妊治療をしている人はいないんですが、友達とは卵子凍結とか、高齢出産のリスクについて話題に上がったりすることも増えてきて。生きるうえで、社会のことを考えることは切っても切れない。決して他人事ではない問題なので、多くの方に見ていただきたいです」
いつか“お母さん”になれたら
「いつか、お母さんになれたらいいなぁという淡い願望はあります。30代半ば過ぎには……ってもう、すぐですね(笑)。母親って何事も子どもが基準になるじゃないですか。でも私は自分軸で生きてるから、まだまだかもしれないです」
「私、しつこい親になるんじゃないかな」
「幸せなことなんですが、両親の愛が過剰なくらいで(笑)。子どものころは、あれもこれも心配されて、友達との旅行でもひとりだけ荷物が多くなっちゃうタイプの子でした。大人になった今でも、実家に帰ると2人がトイレまで追いかけてきてしゃべってくるんですよ。私も母親になったら、わが子に口うるさく言っちゃいそうですね(笑)」
■父、号泣!?
「両親が私のことを大事に思ってくれるのはいいんですが、前に映画で、最後に亡くなってしまう役を演じたときに、作品を見たお父さんが大泣きしながら電話をかけてきて(笑)。激しく感情移入してしまったらしく、映画館から帰宅したとたんにひざから崩れ落ちたとか。“私は生きてるよ!”って必死に慰めました(笑)」
11月8日(金)より全国順次ロードショー
映画『夕陽のあと』
鹿児島県長島町。夫とブリの養殖業を営む五月(山田真歩)は、7歳になる里子・豊和の“本当の母親”になれる期待に胸をふくらませていた。そんな中、1年前から島の食堂で働く茜(貫地谷しほり)が、豊和の生みの母親であることが発覚し――。
<スタイリスト/番場直美、ヘアメイク/北一騎>