松本山雅に通算5年半在籍し、闘志あふれるプレーでサポーターを沸かせたパウリーニョさん(35)は惜しまれながら昨季限りで現役を引退した。今季から母国ブラジルを拠点に、松本山雅の強化担当として第二の人生を歩む。
■第二の人生は強化担当
―ブラジルを拠点に、松本山雅で活躍する選手を発掘する任務に就く。
「日本でプレーした経験があるので、日本人とブラジル人の考え方のどちらも理解していることが自分の長所だと思う。サッカーは、知名度の高い選手を連れてくれば活躍できるという単純なものではない。日本の生活環境、戦術、監督との相性…。そういう要素を考えて『この選手なら日本で活躍できるだろう』と見抜く力は持っている。その力を全面的に生かして、松本山雅のプラスになりたい。(海外の)選手を日本のクラブに売り込む代理人はたくさんいるが、自分がクラブと代理人の間の『フィルター役』になって、日本に順応できる選手かどうかを見極めたい。ただ、メインの仕事は自分自身で足を運んで選手を発掘することだ。ブラジルで試合を視察してプレーを見たり、(獲得候補の)選手と実際に会って話をしたりして松本山雅に順応できる選手をスカウトする」
■母国ブラジルを拠点に山雅に合う選手探す
―日本に適応できるブラジル人選手を発掘するのは簡単なことではない。
「2010年に来日して以来、いろいろなことを経験したが、日本の環境になじめなくて帰国した選手など、さまざまなケースを見てきた。試合に出場している時と出場していない時で態度が変わる選手もいる。ピッチ外、ピッチ内、家族構成、これまでの歩みなど、まずは選手の細部まで知ることが大切だ。その面で、自分はブラジル人なので、ブラジル人のことは一番よく分かっている」
―生活拠点はブラジルで、日本に滞在する時もあるのか。
「生活拠点のブラジルにいる期間が長くなると思う。仕事の内容としても(候補に挙げた)選手の細かい部分を見る必要がある。『松本山雅がブラジル人選手を欲しい』となったタイミングで、『これから探しに行きます』では遅い。日本と行ったり来たりにもなると思うので、日本滞在中は(松本山雅で)コーチングをしたり、練習のサポートをしたりすると思う」
■必要なのは謙虚さ
―どんな選手が、日本のサッカーに順応して力を発揮すると思うか。
「規律正しく、ハングリー精神を持っている選手だ。少しでも『日本だったら通用する』という考えを持っている選手は多くが成功しない。そして『聞く耳』を持っていること。つまり、謙虚さだ。日本とブラジルでは生活環境や文化が異なるので、自分も驚いたことがたくさんある。目指す目標が同じだったとしても、日本とブラジルでは到達するための道が全く違うこともある。だから『絶対にこの道が正しい』『これは絶対に曲げられない』という考えにとらわれると、みんなと一緒に前に進めないことがある。
『自分はいま日本にいる』ということを理解しなければいけない。『日本という国が自分に慣れる』のではなく『自分から日本に慣れる』しかない。そういう考え方を持つことが大切で、考え方がオープンな選手を探したいと思っている。パウリーニョという選手を見ても、正直、サッカーの才能はあまり持っていなかったし、特別に上手な選手でもなかった。でも、長所として(環境に)慣れやすく、聞く耳を持つ心があった。だから、これだけ長く日本でプレーできたと思っている。一般社会でも(転職などで)働く会社が変わった場合、仕事の内容が同じでも、方法が全く変わるケースがあるじゃないですか。でも、その環境に慣れなければいけない。頑固すぎたり、融通が利かないほど自分自身を持っていたりする人はなかなか成長できない場合がある。松本山雅を助けられる選手を発掘できるように頑張るし、その選手が少しでも早くチームになじめるようにサポートしていきたい」
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[パウリーニョ] 本名パウロ・ロベルト・ゴンザガ。ブラジル出身。2010年に来日してJ2栃木に加入し、J1川崎、J2千葉、J1湘南でプレー。16年途中に松本山雅に加入すると、闘志あふれるプレーで18年のJ2優勝と2度目のJ1昇格に貢献した。20年にJ2岡山へ移籍したが、22年に松本山雅に復帰。昨季限りで現役を引退した。Jリーグ通算355試合出場22得点。今季から松本山雅の強化担当を務める。35歳。
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