さぬき市の志度湾を拠点とする鴨庄漁協(山本浩智組合長)は県内で初めてアオノリの養殖に成功し、年々収量を伸ばしている。6年目の2018年度は5トンを突破。新たな収入源としての期待は高く、同漁協は香川をアオノリの一大産地にしようと、県内の他漁協にも積極的にノウハウを伝授し、養殖地の拡大を図っている。
養殖しているのはスジアオノリ。粉末状にしてポテトチップスに使ったり、料理に振りかけたりすることが多い品種で、徳島県の吉野川などが産地として有名だ。関係者によると、香川県内ではこれまで、養殖の中心が魚類だったため、アオノリの養殖に挑む漁業者はいなかったという。
■背景に業績悪化
鴨庄漁協がアオノリ養殖に取り組み始めたのは13年度。背景には、それまで柱としていたノリやカキの養殖の業績悪化があった。アオノリは淡水と海水が混ざり合う汽水域でよく育つことから、志度湾に流れ込む鴨部川河口(同市鴨庄)を漁場として養殖に乗り出した。種網を作る「採苗」は兵庫漁連が協力。養殖は、種網を鴨部川河口に張り、20センチほどに成長するのを待って収穫するという工程を4月から6月までに4回繰り返す。徐々に収量が増えていき、6年目の本年度は6500万円超を売り上げるまでになった。
ただ、初めから順調だったわけではない。兵庫漁連は採苗には成功していたものの、十分なサイズまで成育させるノウハウは持っていなかった。素人同然で挑んだ初年度の収量は、わずか8キロ。翌年も400キロほどしか採れなかった。
■品種変更で活路
転機は3年目。それまではウスバアオノリという品種を育てていたが、「子どものころに川にあったのは天然のスジアオノリだったのを思い出してね」と山本組合長。3年目は品種を変え、約1・2トンのスジアオノリの生産に成功する。
その後も網に付くケイ藻類を洗い流すことでノリの成育を促すことや、防除網でカモやボラなどの食害被害を防ぐといった独自の方法を生み出し、生産量は右肩上がりを続けている。
一方、一つの漁協では生産量が少なく、鴨庄漁協は現在、愛媛県漁連西条支部の入札に参加している。そこで県内で入札を行えるようにしたいと考え、県内の他漁協に積極的に技術提供してきた。本年度から宇多津漁協が養殖を始め、初年度から1トン超の生産に成功。来年度は東かがわ市や小豆島などでも試験的に養殖を開始する予定。アオノリの養殖は初期の設備投資が1千万円以下で済み、ポテトチップス用の国産アオノリの需要は多く、利益率が高いのも大きな魅力という。
■特産品化も視野
加えて、アオノリの特産品化も視野に入れている鴨庄漁協は、まずは産地としての認知度向上に取り組みだした。本年度は地元さぬき市などにアオノリを無償提供。9月10日には市内の全ての幼稚園と小中学校計19校・園の給食でアオノリが振る舞われた。漁協関係者らは同市津田町の津田小学校を訪ね、4~6年生の児童と一緒にアオノリを使った給食を食べて交流するとともに、子どもたちに生産方法や工夫を伝えるなど、地元で育った新しい海産物のおいしさをアピールした。
「取り組みだした直後の2年間は全くお金にならなかったが、必ずできると信じて辛抱した。そのかいあって3年目に花開いたときには本当にホッとした」と振り返る山本組合長。今後はアオノリの二毛作や、ヒジキなどの養殖も手掛けていきたいと考えている。