古くから安産に御利益があると親しまれてきた東かがわ市東山の宝光寺。その庭園が今年9月、47年ぶり2件目となる県の名勝に指定された。巧妙な石組みが特徴の庭園は、日頃の忙しさから離れてほっと一息つける雰囲気。のどかな里山の風景と一緒に庭園を眺めながら、癒やしのひとときを過ごそう。
白鳥大内インターチェンジから車で約20分。田園風景の中をひた走ると、山の中に静かにたたずむ宝光寺にたどり着く。
加部弘元住職(59)が明るく出迎えてくれた。加部住職によると、宝光寺は讃岐ではかなり古い禅宗寺院だという。本尊は千手十一面観音像で、定朝の作と伝わる。古くは竜王が祭られていたそうで、雨乞いや安産、子授けの寺として信仰を集めてきた。
庭園は、本堂などを再興した江戸時代前期の築庭と考えられている。本堂のすぐそばに泉と池があり、丘陵傾斜地を巧みに利用した築山が広がる。縦に長い立石は一つ一つが観音を表現しているそう。庭園に向かって左側にあるシンパクにはモミジが宿る。この木は庭園よりも古いと思われるという。
加部住職によると、庭園を見るポイントは、庭園に向かってやや右よりの位置。本堂に賓客を迎え入れる部屋があったそうで、そこから見る景色が一番いいとのこと。
庭園の中ほどにある泉からは今でも水が湧き出ている。加部住職が子どものころは池から水を引いて生活用水などに使っていたという。庭園の裏は台風や大雨などで泥が流れやすく、檀家(だんか)の人たちの協力で庭園を守っている。
県の名勝に指定されて以来、寺は多くの人に知られるようになり、最近では日本画や絵手紙を描く人、俳句をたしなむ人らが訪れるようになったという。
さらに、お地蔵さんを祭るお堂にも案内してもらった。お地蔵さんは、安産や子授けを祈願する人が自宅に持ち帰り、願いがかなうと新しい1体を持って返す。所々隙間が空いていて、今でも信仰を集めていることがよく分かる。
隣は江戸時代に作られた五百羅漢がおわす羅漢堂。さまざまな表情をした羅漢の中には、獅子や虎、小さなサルのような動物を従えた羅漢も。庭園だけでなく、見どころたっぷりのお寺だ。