1870年代初頭に製造された米リーバイ・ストラウス(通称・リーバイス)社製の最古級ジーンズを、新潟県弥彦村の古着ショップが1650万円で売却し話題になっている。買ったのは、米国のビンテージ商品ディーラー。来年はリーバイス社がジーンズ製造を始めて150年の節目に当たり、当時のジーンズが脚光を浴びている上、円安によりドル換算で割安に買えるようになったことが購入の背景にあるようだ。発送前に実物を見てきた。
古着ショップ「マッシュルーム」は、新潟県最大のパワースポットといわれる弥彦神社から近いところにある。おしゃれな店内の一番奥にある、古めかしいショーケースの中に〝お宝ジーンズ〟が飾られていた。
同店代表の土田鏡(あきら)さん(45)が「あす米国に発送するところでした」といいながらケースから取り出し、みせてくれた。全体的にかなりすれていて、ところどころに穴があき、かなりの年代物であることがうかがえた。
購入したのは、米国のビンテージ商品ディーラー、ブリット・イートンさん(52)。保全状態のいいビンテージ商品を仕入れ、マニアや同業者に転売する業者だ。マッシュルームでは現金に加え、ビンテージもののジーンズ300着を合わせた計1650万円で購入した。
「イートンさんはうちと取引がある顔なじみのディーラー。来年、リーバイスがジーンズ製造150年を迎えるのを意識しての購入のようだ。ビンテージ商品のマニアやディーラーの間で需要が高まるとみているのだろう。また、円安になり、ドル換算で買いやすくなったことも購入の背景にあると思う」と土田さん。
米国の40~60代のベテランディーラーが最近、円安を追い風に、日本までよくビンテージジーンズの買い付けに来ているという。
炭鉱跡で発見
このジーンズは、別の米国人ディーラーが埋もれたビンテージ商品を探すため炭鉱跡の崩れた岩を掘り起こして発見した。炭鉱で働いていた鉱員の作業着だったのではないかという。
土田さんは「1873年に製造されたリーバイス最古の製品と考えられる。当時はジーンズという名称ではなく、ウエストオーバーオールズと呼ばれていた。当時のものは切れ端がみつかることはあるが、原形をとどめるものが見つかるのは奇跡中の奇跡といっていい」と説明する。
土田さんがこのジーンズを入手したのは、令和2年11月のこと。取引のあったさらに別の米国人ディーラーから持ちかけられ、購入した。
「この年の年末に店舗を新潟市内から現在の弥彦村に移転させる計画があり、リニューアルした店の宣伝になればと購入した」(土田さん)
海外でも有名
土田さんが経営する古着ショップは、国内外のビンテージ業界で知らない人はいないといわれるほど有名だ。今回の1650万円のジーンズなど、商品の品ぞろえと年代物としての信用性の高さのほか、古着などの修繕技術も高く評価されている。修繕は店長の加藤香苗さん(36)が一手に引き受けており、その名前は国内外のビンテージ業界で知らない者はいないとまでいわれている。
店内には約5千点、総額5億円弱のビンテージ商品が並ぶ。土田さんが古着ショップを始めたのは平成14年12月で、来月、オープン20周年を迎える。土田さんは「びっくりするようなビンテージジーンズを記念販売する」と意気込んでいる。(本田賢一)