「いつの間にか この日さえも懐かしんで すべてを笑うだろう すべてを愛すだろう」
(関連:藤井風、『関ジャム』恒例企画で大注目 人気プロデューサー陣も嫉妬する才人の登場)
1月21日から始まった木曜ドラマ『にじいろカルテ』(テレビ朝日系)。その主題歌「旅路」の一節を聴いて、今これほどまでに人々の心を救える優しい言葉があるだろうかと深く頷いてしまった。
書き下ろしたのは2021年最も飛躍の期待されるシンガーソングライター藤井風。昨年リリースした1stアルバム『HELP EVER HURT NEVER』は各方面から高い評価を獲得し、最近では同局の音楽番組『関ジャム 完全燃SHOW』の恒例企画「売れっ子プロデューサーが選ぶ2020・年間ベスト10」にて、番組史上初めて3人から同時に選出されるなど着々と支持を集めている(参照:https://realsound.jp/2021/01/post-692457.html)。
「旅路」は彼にとって初のタイアップ曲。今回の放送では最後の場面で静かにフェードインし、ドラマの世界観に寄り添うようにしてエンディングを演出していた。彼はこの曲について以下のようなコメントをしている。
「ドラマの主題歌って、派手で、それこそドラマチックなイメージがありましたが、このドラマに、そーゆーのは全然合わない気がしました」(参照:https://realsound.jp/2021/01/post-687849.html)
『にじいろカルテ』は、これまで多くの名作ドラマを生み出してきた脚本家の岡田惠和が初めて手掛けた医療ドラマだ。山奥の診療所にやってきた主人公の紅野真空(高畑充希)が個性豊かな村人たちと繰り広げる笑いあり涙ありのヒューマンドラマである。なので、いわゆる一般的な医療ものに出てくるようなカリスマドクターだったり、衝撃的な展開は登場しない。真空はどちらかと言えばポンコツで、どこにでもいそうな普通の医師である。そんな主人公を中心にして描かれる登場人物たちの様々な人間模様が魅力の作品だ。
このドラマについて藤井風は、実際に現場に足を運んだことで作り手たちの“自然体な空気感”を感じられたという。そして主演を務める高畑充希のナチュラルな演技に感銘を受けたのだとか。
「わしももっと自然で、自分の内側から勝手に溢れてくるような、あったかい音楽を添えられたらなと思いました」
この曲には、それこそ派手な“キャッチーさ”のようなものはないかもしれない。しかし、聴けば聴くほど心の奥底に染み渡っていくような温かい魅力を感じる。記事冒頭で引用したフレーズのように、どんな日々もいずれは懐かしんで笑えるものになる、愛せるものになるというこの曲のある種の悟りに似た境地は、現在辛い境遇に置かれている人々、あるいはこのドラマが扱う(まさに今状況の逼迫している)医療の現場に従事する人々にとっても心を軽くするものになるのではないか。
「この作品を生きる皆さんを、作品に触れる皆さんを、後ろからそっと見守って、時々ふわっと包み込んでくれるような、そんな音楽になっていたらいいな」
まだまだ厳しい状況の続く2021年、人々の疲弊した心を包み込む温かい”風”にこの曲はなるだろう。(荻原梓)
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