広瀬すずさんが櫻井翔さんとダブル主演を務める日本テレビ系連続ドラマ「ネメシス」(毎週日曜 後10:30)が始まりました。広瀬さんにとって、連ドラ主演はこれが4作目。その記念すべき第1作が2015年に放送された「学校のカイダン」(日本テレビ系)です。
その舞台となったのが私立明蘭学園。スクールカースト最下層だった女子高生・ツバメ(広瀬さん)がそのスピーチ力によって自らを高め、ライバルたちと友情を育みながら、学校そのものを改革していきます。視聴率的には平凡だったものの、広瀬さんの初々しくも力強い演技は大いに注目されました。
放送終了後、彼女はラジオ「GIRLS LOCKS!」(TOKYO FM)でこう振り返っています。「ガムシャラにしがみついてて、ここまでモノ作りに熱くなったのは初めて」だったとした上で「みんなに負けたくないって思ってて、みんなの方ができるから。初めてこんな気持ちが芽生えて、人間としても、ものすごい成長したなって、1段ずつ階段を上ったなって思いました」とのこと。女優としての一大転機となったわけです。
ここでの「みんな」とは、共演した同世代の役者たちを指すのでしょう。中でも、ヒロインの前に立ちはだかるのが「プラチナ8」と呼ばれる8人。そこにも、今をときめく役者たちがいました。
「おちょやん」でコンビ
まずは、杉咲花さん。現在放送中のNHK連続テレビ小説「おちょやん」(月~土 前8:00)の主演女優です。彼女が演じたみもりんは、プラチナ8で最初にツバメに心を開きました。彼女も広瀬さんも声に強さのあるタイプなので、後の朝ドラ女優2人がぶつかりながら打ち解けていく回(第5話)は、今見返しても迫力を感じます。
そんな杉咲さんが「おちょやん」でコンビを組む成田凌さんも、プラチナ8を演じた一人です。2人の共演はこれが最初で「おちょやん」が5回目。彼女は朝ドラヒロインという大役を務めるにあたって、「これまで何度も共演させていただいていることもあり、今回も昔から知っている幼なじみという役柄なので“同志”という感じです(略)成田さんが現場にいると安心感があります」(関西ウォーカー)と語りました。
成田さんが「学校のカイダン」で演じたのは、小説家志望の陸。ブログでは最終回を前に「同世代の役者さんたちと毎日仕事をして、たわいもない会話やお芝居の話をして、楽しく幸せな毎日でした」とあいさつしていたものです。
しかし、最近、その中の1人を当初は嫌っていたことを告白しました。その相手とは、同じプラチナ8で、リーダー格の夏樹を演じた間宮祥太朗さんです。
3月21日放送の「行列のできる法律相談所」(日本テレビ系)でのこと。成田さんはモデル出身であることを間宮さんにばかにされている気がして、「なんか嫌」だったと明かしました。全10話のうち8話あたりまではせりふ以外で口を利かず、目も合わせなかったそうです。
一方、この番組にVTR出演した間宮さんも成田さんに「軟派な印象を持っていた」として、「お互いに嫌い合ってのスタートでした」と語りました。高校生たちが火花を散らすというストーリー同様、舞台裏でもちょっとしたバトルが展開されていたわけです。とはいえ、途中で仲良くなり、今では親友と呼べる関係に。2人とも再共演を楽しみにしているようです。
プラチナ8には、飯豊まりえさん扮(ふん)する玲奈もいました。インタビュー(モデルプレス)では「あの役がすごく嫌だって言われることもありました(笑)」としながらも「女の子みんなでご飯を食べに行ったりします。旅行に行こうっていう話も出るくらい仲良くなりました」と現場の雰囲気を明かしていたものです。
また、現在は活動休止中ですが、伊藤健太郎さんもプラチナ8の一人、波留を演じました。昨年10月、交通事故に伴う不祥事を起こしてしまったものの不起訴処分が決定。SNSで謝罪も行い、活動再開が期待されています。
同世代のせめぎ合いによる効果
ところで、「学校のカイダン」には、ヒロインやプラチナ8以外にも重要な存在がいました。
神木隆之介さんが演じた慧です。明蘭学園の元生徒会長で、当時のプラチナ枠の生徒たちによって大けがをし、それを隠蔽(いんぺい)した学校に対して復讐(ふくしゅう)しようとする役柄でした。ヒロインにとってはスピーチの師匠でもあり、最終的には恋人同士になります。
広瀬さんや杉咲さん、成田さんたちに比べたらやや年上ですが、芸歴の違いはそれ以上。何せ、生まれた2年後にはCMデビューを果たし、「学校のカイダン」の時点で役者歴は15年を超えていました。広瀬さんの言う「みんなの方ができる」をまさに象徴する存在だったわけです。
この4年後、広瀬さんは映画「ラストレター」で神木さんと再会。パンフレットでは「仲良くなり過ぎていて、逆に恥ずかしいというか照れる感じでした(笑)」としつつ、「(舞台裏では)何でも言い合える」「(2人のシーンでは)全く違和感がなかった」と語っています。一方、神木さんは「言ってみれば腐れ縁」「(自分のアクションを)面白がって受け取ってくれる人」と親しみあふれる賛辞を送っていました。
どちらにとっても「学校のカイダン」での共演はプラスに働いているのでしょう。同じ世代の役者同士のせめぎ合いは、さまざまな相乗効果を生み出します。そんなせめぎ合いが必然的、かつ多発的に起きる学園ドラマが若手役者の成長や飛躍につながりやすいのは、そういう理由からなのです。
そこで思い出されるのが、やはり学園ドラマだった「3年A組-今から皆さんは、人質です-」(日本テレビ系)です。この作品でも、生徒役の役者同士はもとより、世代の近い主役の教師を演じた菅田将暉さんをも巻き込んだ相乗効果が起きていました。いわゆる衝撃作だったため、そのあたりはすでに随所で語られていますが、「学校のカイダン」の相乗効果もまた、なかなかのものだったと言えます。
果たして、広瀬さんや杉咲さん、成田さんといった明蘭学園出身者たちは「芸能のカイダン」をこれからどう上っていくのでしょうか。さらなる期待を持って見守りたいものです。
作家・芸能評論家 宝泉薫
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