5代目レガシィの年次改良に合わせて登場したFA20DIT。 直噴システムやツインスクロールターボの採用など、最新のアイテムを身にまとった高出力・低燃費エンジンである。
TEXT:世良耕太(SERA Kota) PHOTO:住吉道仁
FA20DIT:スバル初の直噴ターボエンジン。ツインスクロールターボ、キャビティ付きピストン、ロッカーアームなど、現時点の最新定番技術を投入することにより、排気量を20%縮小しながら、従来機種を上回る出力・トルクと燃費性能を実現した。既存シャシーへの適用でもあるし、衝突安全性の確保を含めたレイアウトの都合上もあり、インタークーラーはEJ型と同様にエンジン上部に置く。
「FA」のエンジン型式はBRZ向けに開発されたポート噴射&直噴併用の高回転型自然吸気エンジンとの関連を連想させるが、実のところ関連は薄い(直噴システムも異なる)。クランクシャフトと動弁系の一部を共用するものの、FA20DITは、実質的には2010年に登場した「FB」型をベースに、直噴ターボ化したと理解するのが正解。86×86mmのボア×ストロークがFA型と共通(FB型は84×90mm)なので、社内の決め事に従い、FA型を名乗ることになった。86×86mmとしたのは、ストロークを短くしてブロックジャーナル部を肉厚にし、過給による高い筒内圧に耐えるだけの強度を確保するためだ。
ピストンは、タンブル流をうまく閉じ込めるためのキャビティに加え、リード噴霧を受け止めるためのキャビティを掘った2段構造になっているのが特徴。FA20型と違って直噴インジェクターしか持っていないため、混合気をうまくまぜて燃やすための策。リード噴霧は6つ開いた穴の一番上から噴射される噴霧のこと。タンブル流の弱い始動時にはこの噴霧を速度差と圧力差で上手に巻き上げ、点火プラグまわりに集める。スカート部には従来のコーティング層の上に、二硫化モリブデンの層を載せている。表面の平滑化によるフリクション低減が目的。
NAエンジンをベースにターボ化しようとする際、高くなる筒内圧に耐えるためブロックをセミクローズドにするのが従来の流れ。ただし、FA20DITを設計するにあたっては、燃焼室の近くを効率良く冷却するため、オープンデッキにこだわった。筒内圧がかかった際のライナーの動きを抑制するため、吸排気方向には浅底にして剛性を確保している。低フリクション化を徹底するため、エンジンオイルは4社競合で、のべ十数種類を試作。FA20DITにベストマッチする仕様に絞り込んだという。5W-30の規格自体はEJ25型ターボと同じ。
■FA20 DIT
シリンダー配列 水平対向4気筒
排気量 1998cc
内径×行程 86.0mm×86.0mm
圧縮比 10.6
最高出力 221kW/5600rpm
最大トルク 400Nm/2000-4800rpm
給気方式 ターボチャージャー
カム配置 DOHC
ブロック材 アルミ合金
吸気弁/排気弁数 2/2
バルブ駆動方式 ロッカーアーム
燃料噴射方式 DI
VVT/VVL In-Ex/×