可愛いモンキーが、後付けのターボチャージャーシステムによってイカツいイメージに変身。約50m(SS1/32mile)を3秒中盤で駆け抜ける、街乗り兼ドラッグ仕様のモンキー改をご紹介しよう。
REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
PHOTO●岩島浩樹(IWASHIMA Hiroki)
※4MINIチャンプ7より(2004年発売)
※この記事は4MINIチャンプ7(2004年発売)を元に再編集したものです。情報は掲載当時のものとなります。
ターボカスタムのポイントは『エアチャンバー装着』『エンジンオイルのバイパス』『燃料ポンプの追加』
写真は約50mのタイムを競う、月刊モト・チャンプでおなじみのドラッグレース『SS1/32mile』で3秒691という記録を持つモンキー改。怒涛の加速力を発揮する、ターボ付きの超カスタムだ。
オーナーであり、製作したのは、エンジン構造を知り尽くした熟練の自動車整備士。「小さなモンキーで、ビッグバイクを追い回してやろう!」という遊び心が、ターボ仕様のモンキーを手掛けたきっかけだった。
ただし、ボア&ストロークアップしているとはいえ、クルマと比べると圧倒的に排気量の小さいこのモンキーのエンジンでは、単にターボチャージャー機構を付けただけではパワーアップするのは困難だった。
1:ターボ=排気圧を利用してタービンを回すシステムのため、一般的にモンキー等の小排気量車には不向き。
2:単気筒エンジンは、バルブが完全に閉じている時間がある=インテークパイプに溜まった圧力が逆流するなど、細かな問題が発生してしまうのがネックとなる。
このモンキーのターボ化のポイントは、『エアチャンバー装着』『エンジンオイルのバイパス』『燃料ポンプの追加』の3つ。上記の1や2の問題を解決するため、
・『エアチャンバー』を設置。この『エアチャンバー』は、吸気バルブが閉じている間、圧力を一時的に溜め込んでおく場所。『エアチャンバー』の採用により、インテークパイプ内に溜まった圧搾空気の逆流を防止。『エアチャンバー』は低中速域用、高速域用の2個を装備。
・強烈な負圧が、オイルパンに溜まっているエンジンオイルを吸い出してしまう。そこでエンジンのブロバーガス排出口からの『バイパス』を設置。これによりパイプ内の気圧が安定し、オイル吸い出しのトラブルを解消。
・キャブレターによる混合気の供給量が、圧倒的な負圧による吸気量に追いつかない。そこで『燃料ポンプ』を追加して、混合気の供給量をアップ。キャブレターはFCRΦ33をチョイス。オーナーによばれ、Φ28だと口径が小さすぎ、逆にセッティングも難しくなるという。
このモンキーのエンジンは、シリンダーヘッドをSP武川製スーパーヘッドに変更し、キタコ製Φ52シリンダー&ピストン、51mmロングクランクシャフトで108ccに排気量アップ。ミッションはノーマル4速から、社外5速に変更。クラッチはキタコ製2次側ウルトラクラッチで強化済みだ。ターボユニットは、四輪のアルトワークス用を流用。ターボチャージャーによる過給圧は0.3kg以上。
前後のアルミホイールは、ノーマルと同寸の8インチ。前後タイヤサイズは3.50-8をチョイス。フロントフォークはノーマル改、スイングアームはGクラフト製アルミロングタイプ(ツインショック型)をセレクト。前後ブレーキはノーマルのドラム式としている。
シャシーダイナモによる後輪軸出力は、16馬力以上。最高回転数は1万4000rpm。最高速度は130km/hを記録し、2速で120km/hに到達。ファイナルのセッティング次第で、最高速はまだまだ伸びるはず。
ベースマシンのモンキー、ターボユニット、パイプ類に使用したガス管、エアコン用のリキッドタンクを流用したマフラーなど、このマシンの製作費は80万円程度(車両+パーツ代)。
写真はウイリーバーを装備したドラッグレース仕様だが、普段はバーを取り外してビッグバイクと一緒に峠などをツーリング。自動車整備士が作り上げた、プロの知識とワザが凝縮された超本格派カスタムだ。
モンキー改の右側前部(排気パイプ~タービンに向かう配管)には、「ホンダ アクティ」用の触媒を流用装着。
これにより、エンジンが温まってくると、触媒がマフラーを加熱し、マフラーの抜けが良くなるのが特徴。その結果、低中速域での伸びが、飛躍的に向上した。オーナーによれば、「スタート直後なんて、ホイールスピンしながら進んでいくんです。右脳と左脳が、いっぺんに後ろに持っていかれる感じがします(笑)」という。
「5000rpmあたりからターボが効き始め、1万4000rpmまで気持ち良く回ります。DOHCシリンダーヘッドにステップアップして、さらに速くしたいです!(オーナー談)」
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