人気に押される形で、短命に終わってしまったヤマハBW’S。そのため程度の良い個体は非常に少なく、見つけたら買い!なのだ。
PHOTO:モルツ
REPORT:佐藤大介
取材協力:TDF
スポーツのヤマハが放った 渾身の? ファニーバイク
80年代のヤマハスクーターラインナップを振り返ると、初代ジョグにはピレリを履いたスペシャルエディションを用意。スポーツモデルのチャンプはRSを出し……ってな感じでストイックに実用性と走りを求めていたことが分かる。
そんな硬派なヤマハが80年代後半に割り切ったスクーターを出してきた。それがビーウィズだ。背景にはちょっとしたオフロードブームがあり、XLR250RやDT200Rなんかが売れていた。さらに古いXLをストリートで乗りこなす若者が出始めたころだ。そのあたりの需要を見越したモデルという認識だったように思う。
ただ、ヤマハらしいスポーツ性が欲しいという意見があったのか、その後ビーチボートのようなカラフルなカラーから一転、渋めのカラーをまとったビーウィズ・スポーツをラインナップしてきた。こいつはカラーのみならずオフパターンのタイヤからハイグリップタイプに変更したことで、スーパーモタードイメージ(当時でいうスーパーバイカーズ)を付加することに成功している。
今このスポーツを見ると、メットイン前提になりつつあったスクーターのなかでは非常にすっきりとしたフォルム。ヤマハらしいストイックさもあり乗っているだけで「映え」るデザインだといえる。
他にないユーロ風味が◎ アフターパーツも豊富
駆動系はかのボクスンの後継機、 チャンプCX由来の長いスイングアーム(駆動系)が特徴。主なユニットは後年のギアに受け継がれているからリペアパーツが使える。乗り味はおいしいところで変速するヤマハら しいセットだ。
ちなみに海外では、MBK(フラ ンスのバイクメーカーでヤマハの現地関連会社)から「ブースター」という名で発売されており、2015年くらいまで2スト50ccのまま売っていた。そのため、ユーロ系のパーツが入手しやすいのがうれしい。ノー マルで乗っていても目立つし、パーツもあるから長く乗れてユーロ風カスタムもできる。いいんじゃないすか、これ。
BW'Sのファットタイヤ、TW200並の存在感なんだけど、装着を実現できたのは、チャンプCXのクランクケースがあったから。機構の元祖のみならず独創性という意味でもCXは元祖といえる。
ヘルメット義務付けによる需要の高まりによって荷室の増大はマストになり、60km/hまでなら交通をリードできるパワフルなモデルが次々と登場。原付は「便利な乗り物」として一大市場を形成した。逆にこの2点を満たさないものは生き残れない時代だったのだ。
BW'S・SPECIFICATIONS
●サイズ:1735×630×1030mm ●エンジン形式:空冷2ストローク単気筒 ●総排気量:49cc ●最高出力/最大トルク:6.0ps/0.67kgm ●乾燥重量:65kg ●タイヤサイズ(前・後):120/90-10・130/90-10 ●当時価格:14万9000円