名車が多く登場する作品「名探偵コナン」
「名探偵コナン」は、原作者の青山剛昌氏により、1994年から小学館「週刊少年サンデー」で連載されている人気長寿漫画です。1996年からはTVアニメの放映がスタート、1997年からは映画版アニメが上映され、いまだに根強い人気があります。
そんな「名探偵コナン」ですが、作中で登場する車たちの再現率の高さは見どころに挙げたいポイントの1つです。
推理・刑事もののジャンルにあたる漫画作品ならではのカーチェイスや、登場キャラクターたちが移動で使用しているシーンで描かれている車に、つい注目してしまうのではないでしょうか。登場する車は、いずれも実際に存在するモデルの特徴を上手にとらえています。
今回は、名探偵コナンに登場する主なキャラクターたちが愛用している車たちを17台ピックアップしました。作品公式で行われた人気投票ランキングでも1位・2位を争うキャラクターに加えて、各登場人物が使用している車を詳しく解説します。
安室透の愛車:マツダ FD3S RX-7
安室透は、別名で「降谷零」や「バーボン」と名乗り、主人公・江戸川コナン(工藤新一)が立ち向かう「黒の組織」ともつながりがある複雑な立場をもつキャラクターです。
作品公式の人気キャラクター投票で第2位を獲得し、ファンの人気が上昇中です。安室透の声は、自動車紹介番組でもナレーションを務めている声優・古谷徹氏が担当しています。
安室透が作中で使用している車は、マツダが誇る名車「FD3S RX-7」。
ホワイトのボディカラーとなっている安室透仕様のRX-7は、玩具メーカーが展開しているミニカーシリーズでも実物化して販売された程の人気です。加えて、マツダ公式SNSでもネタに取り上げられるほどの知名度を誇ります。
マツダ RX-7(アンフィニ RX-7 FD3S型) とは?
「マツダ RX-7」は、1978年に初代が登場した2ドアクーペです。安室透仕様のモデルとなった3代目・FD3S型は1991年に登場し、2002年まで販売されていました。バランス重視の「ライトウェイト・スポーツカー」をテーマに開発され、多くのマツダファンや走り屋などの車好きより人気を獲得しています。
マツダの魅力の1つである「ロータリーエンジン」と、FR(フロントエンジン・後輪駆動)レイアウトと低重心化を施したボディを組み合わせたパッケージは、コーナーが多い山坂道での走行安定性に優れています。
安室透仕様のRX-7は、1991年から1996年まで販売されていた前期モデルがベースとなっているようです。フロントボンネットに貼られているエンブレムはマツダが展開していたブランド「アンフィニ」のロゴとなっているほか、フロントヘッドライトが細い楕円形となっています。
前期モデルの発売から時間が経過しているため、オリジナルの状態で安室透仕様を味わうのは困難な状況です。
他の漫画・アニメ作品でも人気の登場車種となっているため、車のファンだけでなく漫画・アニメファンにも知名度が高いスポーツカーではないでしょうか。
赤井秀一の愛車:フォード マスタング シェルビーGT500 など
赤井秀一は、FBI捜査官の立場で黒の組織を追うキャラクターです。並外れた推理力と優れた狙撃力で江戸川コナンとも手を組み、黒の組織と対峙します。作品公式での人気投票では第1位を獲得したほど、作品ファンから高い支持を得ています。
赤井秀一は、正体を隠すために使用している「沖矢昴」名義も含めて、歴代で3台の愛車が存在します。ピックアップトラックやハイスペックのスポーツカー、日本で庶民向け自家用車の始まりとなった車まで、バラエティーに富んでいる点に注目です。
シボレー C1500(C/K)
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「シボレー C1500(C/K)」は、アメリカの自動車メーカー「シボレー」が販売していたピックアップトラックです。
赤井秀一が使用していたシボレーC1500は、1987年に登場した通算4代目がモデルとなっています。黒のボディと左ハンドル仕様、車体後部に備わった荷台が特徴です。
漫画およびアニメの作中で度々登場し、最後の登場では”諸事情”により爆破された悲劇のピックアップトラックでもあります。赤井秀一の正体が詳細まで明かされていない時期に使用されていたことから、ファンの間でもさまざまな憶測が立てられ、黒の組織の一員ではないかと推測したポイントにも挙げられていた車です。
フォード マスタング シェルビーGT500
「フォード マスタング シェルビーGT500」は、アメリカの自動車メーカー「フォード」が販売している2ドアクーペです。
2016年公開の映画「純黒の悪夢(ナイトメア)」にて、赤井秀一がカーチェイスのシーンで使用していたスポーツカーのモデルとなっています。赤地に2本の白いストライプが入ったマスタングで、安室透のRX-7とともに黒の組織を追う姿を覚えている人が多いのではないでしょうか。
シェルビーGT500は、ベースの「マスタング」に約660馬力を発揮する5,800㏄V型8気筒スーパーチャージャー付きガソリンエンジンを搭載したハイスペック仕様となっています。
ホールド性に優れたレカロ製バケットシートやブレンボ社製のブレーキパーツが標準装備されることで、サーキット走行へすぐに対応できる充実した装備も魅力です。
公道でカーチェイスはできませんが、サーキット走行などで赤井秀一の雰囲気を味わえるスポーツカーです。
スバル 360(「沖矢昴」名義)
「スバル 360」は、1958年に日本の自動車市場で誕生した「史上初の一般家庭向け乗用車」で知られる軽自動車です。
ある事情で「沖矢昴」と名乗ることとなった赤井秀一が操る車となります。
RR(リアエンジン・後輪駆動)レイアウトを採用し、排気量が360ccのエンジンでコンパクトな車体ながら4人乗車を実現しています。1960年代の高度経済成長期を迎えていた日本で、一気に街なかで乗用車の普及に貢献しました。
沖矢昴こと赤井秀一仕様のスバル 360は、漫画紙面上での応募者全員サービスのミニチュアカーともなっています。ファンなら気軽にコレクションができる点にも注目です。
その他の登場キャラクターが使用している車たち
名探偵コナンは、安室透や赤井秀一が使用していた車だけでなく、その他の登場キャラクターが使用していた車も個性が現れていて注目です。
国産車や外車問わず、実車をモデルとした車たちが登場しています。
この項目では、その他の登場キャラクターが使用していた車たちをピックアップして解説します。
フォルクスワーゲン タイプ1(阿笠博士)
阿笠博士は、江戸川コナンの正体を知る数少ないキャラクターで、コナンの探偵捜索を手助けする理解者でもあります。
阿笠博士の愛車は「フォルクスワーゲン タイプ1」です。タイプ1は別名で「ビートル」とも呼ばれ、1940年代の戦後から1970年代まで販売が続けられていた2ドアハッチバック。
阿笠博士がドライブするタイプ1は黄色のボディが特徴です。コナンと行動をともにする際に登場する機会が多くなっています。加えて、コナンが小学校で結成している「少年探偵団」のメンバーとキャンプや遠くへ出かける際に使用するケースが多いようです。
また、鳥取県東伯郡にある展示ミュージアム「青山剛昌ふるさと館」では、阿笠博士の実物人形が運転席に乗っている黄色のタイプ1を展示。毎月第2週の水曜日には記念撮影のイベントも開催されています。
マツダ RX-7(アンフィニ RX-7 FD3S型、佐藤美和子)
佐藤美和子(以下:佐藤刑事)は、警視庁捜査一課に所属する刑事であり、コナンが関わる事件にも度々登場するキャラクターです。
佐藤刑事の愛車はマツダ RX-7で、安室透と同じくモデル前期の「アンフィニ」バッジがフロントバンパー上に貼り付けられています。
安室透仕様との違いは、ボディカラーが赤で、リアスポイラーが装備されている点です。殉職した佐藤刑事の父から受け継いだというエピソードもあります。
佐藤刑事はかつて「峠の白い魔女」とも呼ばれ、道のない霧の上を駆け抜けていくと伝説を残したほどの凄腕ドライバーであったようです。峠でのドリフトバトルをメインにした漫画の登場人物とも張り合える実力があるのではないでしょうか。
日産 スカイライン(ER34型、高木渉)
高木渉(以下:高木刑事)は、警視庁捜査一課に所属する刑事であり、コナンが関わる事件にも登場する頻度が高いキャラクターです。
高木刑事が使用している車は日産 スカイラインのER34型で、主に事件捜索の際に登場します。フロントマスクのバンパー形状から、2000年に実施されたマイナーチェンジ後のモデルと推測されています。
実車は、2種類の2,500cc直列6気筒ツインカムエンジンをラインナップしていました。ターボ仕様では当時の馬力自主規制上限の280馬力を絞り出すなど、今も高い人気を獲得している車です。
ミニ クーパー(妃英理)
妃英理は、探偵・毛利小五郎の妻であり、ヒロイン・毛利蘭の母でもある女性弁護士です。
妃英理の愛車は「ミニ クーパー」で、英理が本編に登場する際にドライブしている描写があります。名探偵コナンに登場するミニ クーパーは、オースチンやローバーが製造を担当していた車種がベースとなっているようです。
実車は、1959年にイギリスで誕生し、40年以上も生産が続いたコンパクトカーです。「ゴーカートフィーリング」と呼ばれるほどのクイックなハンドリングと軽快な走りによって人気を集めています。
ジャガー Eタイプ (工藤有希子)
工藤有希子は、江戸川コナンの正体である工藤新一の実母で、黒の組織に立ち向かう息子をサポートしています。
工藤有希子の愛車は「ジャガー Eタイプ」です。イギリスの高級自動車メーカー「ジャガー」で3世代にわたりスポーツカーラインナップを支えてきた2ドアクーペとなります。工藤有希子が作中に登場した際、ドライブしているシーンが描写されているようです。
初代「シリーズ1」から4,000cc直列6気筒ガソリンエンジンを積み、3代目「シリーズ3」では5,300ccV型12気筒ガソリンエンジンを搭載するなどモデルを重ねるごとに大排気量・ハイパワー化を実現した車です。
トヨタ プリウス(初代10系、新出智明)
新出智明は、江戸川コナンの正体である工藤新一やヒロイン・毛利蘭が通う高校の校医で、黒の組織による怪しい動きにも巻き込まれていくキャラクターです。
新出智明の愛車は「トヨタ プリウス」。初代・10系のプリウスがモチーフとなっており、漫画版で登場しているようです。
実車は、1997年に登場した、トヨタによる21世紀突入に向けてのエコプロジェクトを代表するハイブリッドカーです。エンジンとモーターを組み合わせたシステムは当時の自動車業界に衝撃を与え、のちのハイブリッドカーブームに繋げていったことで知られています。
トヨタ プリウス(2代目20系、目暮警部)
目暮警部は、警視庁捜査一課に所属している警部で、佐藤刑事や高木刑事の上司にあたるキャラクターです。
目暮警部が使用している車はトヨタ プリウスで、モデルは2代目・20系とされています。漫画版での事件捜査のシーンなどで登場している車です。
実車は2003年に登場しており、初代・10系の4ドアセダンタイプから5ドアハッチバックにスタイリングが変更されている点が特徴です。世界トップレベルの10・15モード燃費を実現したことでも話題となり、のちの3代目・30系以降につながっていく技術を取り入れていたハイブリッドカーで知られています。
スズキ SX4(白鳥任三郎)
白鳥任三郎(以下:白鳥刑事)は、警視庁捜査一課に所属している警部です。アニメ版オリジナルでしたがのちに漫画版でも登場するようになった珍しいパターンを経ているキャラクターです。
白鳥刑事が使用している車は「スズキ SX4」です。漫画版にて白鳥刑事が運転している描写があります。
モデルとなったスズキ SX4は、2006年から2014年まで生産されていたコンパクトハッチバックです。イタリアの自動車メーカー「フィアット」と共同開発し、「クロスオーバーレボリューション」のコンセプトで世界戦略車に据えられていました。クロスオーバーSUVの要素を先取りしていたことでも注目された車です。
フィアット 500C(千葉和伸)
千葉和伸(以下:千葉刑事)は、警視庁捜査一課に所属する刑事で、高木刑事の後輩にあたるキャラクターです。
千葉刑事が使用している車は「フィアット 500C」です。アニメ版で千葉刑事の手で運転している描写があります。
モデルとなったフィアット 500Cは、コンパクトカーの「フィアット 500」がベースとなっており、2008年から日本でも導入されています。スイッチを押すだけで開け閉めが調整できるソフトトップを採用しており、4人乗車ができるオープンタイプの小型コンパクトカーです。
プジョー 607(ジョディ・スターリング)
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ジョディ・スターリングは、FBI捜査官であり工藤新一や毛利蘭が通う高校の英語教師として潜入捜査をしていたキャラクターです。
ジョディ・スターリングが使用していた車は「プジョー 607」で、アニメ版で運転している描写があります。
モデルのプジョー 607は1999年に登場したラグジュアリータイプの4ドアセダンです。日本仕様では3,000ccのV型6気筒エンジンを搭載しています。ロングホイールベースに全幅が1,830mmと大柄なボディで、プジョーのフラッグシップを担っていた車です。
メルセデス・ベンツ CLKカブリオレ(ジェイムズ・ブラック)
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ジェイムズ・ブラックはFBI捜査官であり、ジョディ・スターリングや赤井秀一の上司にあたる人物です。
ジェイムズ・ブラックの愛車は「メルセデス・ベンツ CLKカブリオレ」で、2002年に登場したA209型がモデルとなっています。アニメ版でジェイムズ・ブラックが運転している描写があります。
A209型のCLKカブリオレは2ドアクーペをベースに、リモコンキーでも操作が可能なソフトトップルーフを搭載している4人乗りオープンカーです。
ポルシェ 356A(「黒の組織」ジン)
ジンは、黒の組織に属するメンバーであり、工藤新一が子どもの身体となり江戸川コナンとなる要因を作ったキャラクターです。
ジンの愛車はポルシェ 356Aです。同じく黒の組織に所属するウォッカと2人で乗っているシーンが多く描写されており、コナンなど他の人物と接する場面で登場しています。
ポルシェ 356Aは、1956年から1959年までドイツの自動車メーカー「ポルシェ」が手がけたクーペおよびオープンカータイプの車です。
5種類の4気筒ガソリンエンジンが用意されており、上級グレード「1500 GSカレラ」では、最高出力100馬力まで底上げされています。
シトロエン BX(水無怜奈/本堂瑛海/キール)
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水無怜奈は、テレビ局の人気アナウンサーでありながら、「本堂瑛海」および「キール」の名前で黒の組織に潜入するCIA諜報員です。
水無怜奈の愛車はシトロエンBXで、アニメ版にて運転している描写があります。モデルとなったシトロエンBXは1982年に登場したミドルサイズ乗用車です。
イタリアの「ベルトーネ社」によりデザインが施されており、リアタイヤを半分クオーターパネルで隠す「ハーフスカート」を採用しています。
毛利小五郎の借りているレンタカーにも注目!あの名車で峠バトルも?
名探偵コナンでは、登場キャラクターがそれぞれ車を所有しているほかにも車を使用しているシーンが描かれています。その中でも、毛利小五郎が使っている「レンタカー」にも注目です。
毛利小五郎は、ヒロイン・毛利蘭の父でありコナンが居候する「毛利探偵事務所」を営む私立探偵です。所有している愛車がない様子ですが、度々旅行や外出でコナンや蘭を連れていく際にレンタカーを借りては故障、あるいは破壊されるシーンが用意されています。
毛利小五郎が名探偵コナンファンに印象を強く残したエピソードは、2009年に放映されたアニメ版第545話&546話「霧にむせぶ魔女」です。
第545・546話で毛利小五郎が借りたレンタカーが「三菱 ランサーエボリューションX」です。ランサーエボリューションXは、とある峠に出現するという「銀白の魔女」がドライブするマツダ RX-7(FD3S型)と遭遇しバトルを演じる活躍を見せていました。
その他のアニメ放映話や映画版、漫画でも毛利小五郎は移動用で度々レンタカーを借りている様子ですので、いっしょにチェックすると名探偵コナンの世界がより奥深く楽しめるでしょう。
名探偵コナンの世界では「FD3S RX-7」が人気?
名探偵コナンで描かれている世界では、マツダ RX-7(FD3S型)の登場頻度が高いということにも注目です。
安室透や佐藤刑事の相棒として登場するほか、アニメ版第545話&546話でも伝説の女性ドライバーがマツダ RX-7を操っている設定になっています。RX-7がいかに活躍しているか見て取れるのではないでしょうか。
RX-7が作中に登場する理由に、原作者・青山剛昌氏の愛車であることも含まれているようです。鳥取県にある「青山剛昌ふるさと館」でも所有している「黒のRX-7」を展示するイベントが開催されたなど、車好きであることが垣間見られます。
「白のRX-7」を駆る安室透と「赤のRX-7」を駆る佐藤刑事、加えて黒のRX-7を駆る青山氏が加わり、RX-7と名探偵コナンの世界は切っても切れない関係にあるのではないでしょうか。
新作劇場版「ハロウィンの花嫁」でも登場車の活躍に期待
名探偵コナンは連載開始から30年近くが経過し、アニメや映画版も長寿作品となっている人気の漫画作品です。
今回ピックアップした登場キャラクターが使用する車たちは、これからも活躍を続けるでしょう。加えて、新しく登場する車たちも増えていくかもしれません。
そして、2022年4月15日に公開された映画版新作「ハロウィンの花嫁」には、安室透や佐藤刑事、高木刑事も登場します。
今回紹介した安室透や佐藤刑事が愛用するRX-7をはじめ、カーチェイスのシーンがあるかどうか、ぜひ劇場でご覧ください!
ぜひ、映画版も含め、名探偵コナンの世界で活躍する車たちに注目しましょう。