コロナ禍の自粛期間で自炊が増えたという人もいるのではないでしょうか。そこで今回は、パラアスリートの妻として、食事面で夫を支えるおふたりに、コロナ禍で練習に励む夫への思いと工夫が詰まった一品を紹介してもらいました。
東京パラリンピック金メダル候補・佐藤友祈選手の妻麻由子さんの一品
佐藤家の食卓に並ぶ具だくさん味噌汁(photo 本人提供)
陸上競技・車いす(T52)で4つの世界記録を持つ佐藤友祈選手。東京パラリンピックでの金メダルが期待される400mを制すには、スタートの遅れが命取りになる。そこで重要になるひとつがベスト体重を維持すること。妻の麻由子さんが食事内容を管理するようになってから、コンディションをいい状態で保てるようになったという。
ーー佐藤選手から「妻の味噌汁がおいしい」と聞いています! 食事作りの際に工夫していることを教えてください。
結婚する2019年夏まで、お互いに一人暮らしだったので、コンビニや宅食サービスでまかなっていた夫にお味噌汁を飲む習慣がないことは容易に想像できました。そこで、自分自身が田舎の母に出してもらってうれしかったように、夫にも食べてもらいたいと思って作るようになったんです。味噌は実家から定期的に送ってもらい、一緒に届くキャベツや大根なども具材にします。
夫は車いすユーザーなので、どんなにきつい練習をしても一般のアスリートに比べてエネルギー消費量が少ないんです。本当は疲労感のあるときこそ、たくさん食べさせてあげたいと思いますが、そういうわけにもいきません。だから、具材をたくさん入れておかずにもなるような食べ応えのある味噌汁を出すことを心がけていますね。
具材には必ず野菜を入れます。キャベツにはさつまいもやえのきを合わせます。あとは、ほうれん草とコーンにバターを入れたり、カレー味の味噌汁も作ることもあります。アスリートの食事作りはときに責任が重いと感じますが、やっぱり喜んでくれるから作り甲斐がありますね。
ブラインドサッカー日本代表キャプテン・川村怜選手の妻
美希さんの一品
川村選手のおにぎりは食欲をそそる味付けがポイント(photo 本人提供)
今夏、パラリンピック初出場を迎える5人制サッカー(ブラインドサッカー)日本代表のキャプテンであり、攻撃の中心でもある川村怜選手。豊富な運動量でピッチを駆け回り、屈強な海外勢相手に得点のチャンスで混戦を突破するためには、言うまでもなく普段からの身体づくりが不可欠だ。妻・美希さんも、食の面で競技生活をバックアップする。
ーー川村選手は、トレーニングについてだけでなく、日ごろから栄養や睡眠など意識高く取り組んでいると聞きます。食事ではどんなことを意識しているのでしょうか?
一番気をつけているのは、食事のタイミングです。もちろん食事の内容も大事ですが、試合において前半から後半までいい状態をキープするために、毎日の食事をしっかり食べることが重要です。練習後や練習の合間には補食を摂るので、日々、ご飯を作る時間に追われていますね(笑)
とくにコロナ禍では、練習場所の近くで外食したり、気軽に買いに行くこともできないので、練習後にパパっと食べられるようおにぎりを持参します。
体重の減少は避けたいですし、食欲が低下しがちなハードな練習後も食べやすい具材選びが私なりのポイントです。夫の好きなおかかや昆布を入れたり、ひき肉となすを炒めた肉味噌おにぎりにしたりして、食欲をそそる味付けを意識しています。ちなみに、肉味噌は1歳の娘の幼児食を具材にしてみたらおいしかったという偶然の産物です。あとは、日本代表の栄養士からのアドバイスで、栄養価の高いサバのふりかけを入れたこともありますね。
自宅での食事は、サイズの異なる小鉢をお盆に並べるなど視覚障がいの夫にとって取りやすい配膳を心がけています。育児をしながら、夫のスケジュールに合わせる生活は決して楽ではありませんが、夫と同じものを食べていたら私も健康診断結果の数値に変化が表れるなどいい変化も感じています。
text by Asuka Senaga
key visual by Getty Images Sport