トゥーロン国際大会2018の初戦であるトルコとの試合を落とし、決勝トーナメント進出のためには是が非でも勝利が必要な中で迎えたU-19ポルトガル代表との試合を逆転勝ちで終えたU-21日本代表。
後半途中にGKの山口瑠伊が退場し、さらに1点をリードを奪われる劣勢の状況下の中、途中出場した法政大2年の上田綺世がDFラインの裏に抜け出す得意の形で同点弾。さらに、試合終了間際に訪れたPKの機会では豪快に右足を振り抜き、チームに勝利をもたらした。
試合展開は一つ下のカテゴリーにあたる相手に対して終始後手に回る場面が見られ、決して褒められるものではなかった。
だが、様々なストレスがかかる中、数えるほどしかない決定機をものにして逆転勝ちに成功した「勝負強さ」は、U-21カナダ代表とのグループリーグ第三戦目だけではなく、さらに先に待ち構えている戦いにも活きてくるはずだ。
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では、前回の引き続き、今回もこの試合において、特に筆者の印象に残った選手を両チームから数名を選出してみたい。
冨安健洋
現在のU-21日本代表において、首脳陣が「最も安心して見ていられる選手」と称しても差し支えないだろう。それほどまでに、彼の冷静さや安定感は際立つものだ。
恵まれた体格に注目が集まりやすいが、彼の真骨頂さは「クレバーさ」をウリにした攻めの守備。相手攻撃陣の動きを先読みし、ピンチを未然に防ぐディフェンスは、19歳という年齢が俄かに信じられないほど老獪である。
この試合でも一戦目に引き続き、3バックの中央に構えて、その長所を存分に披露。
U-19ポルトガルの圧倒的な個の力を前に、終始攻め込まれるシーンが多かったが、シュートブロック、カバーリング、インターセプトなどで決定機をことごとく遮断した。
前半9分、ジョアン・フィリペのループシュートを(事前に予期して)ゴール前直前でクリアしたプレーは、この試合のハイライトの一つ。
サッカーにおいて「たられば」は厳禁ではあるが、もし、このゴールが決まっていれば、試合展開は全く異なるものになっていたのではないだろうか。
上田綺世
やはり、この試合で同点弾と逆転弾の2ゴールをマークし、「英雄」となった彼のことは触れざるを得ない。
現在のU-21日本代表は、例年通り、「Jリーグ組」が大半を占めるが、その中において少数派である「大学組」の一人。
二年生ながら法政大のエースとして既に名を馳せており、その得点感覚については「当世代屈指」との呼び声も高い、純然たるストライカーだ。
同点弾も逆転弾のPKを呼び込んだプレーも、持ち前のスピードとDFラインの裏を突くタイミング取りの巧さを活かしたものであったが、この年齢にして「明確な自分の形」を持っている点は末恐ろしい。
誰もプレッシャーで押しつぶされそうになる、試合終了間際に訪れたPKの場面については「(プレッシャーよりも)点を取りたいという気持ちが勝っていた」と振り返っていたが、「ゴールへの貪欲さ」では現時点でもプロ相手に試して欲しいレベルにある。
「特別強化指定選手」として、Jリーグの舞台に立つ日もそう遠くないだろう。
橋岡大樹
「良さを出せていたか?」と問われるとその回答に困るかもしれないが、「効いていたか?」という問いに対しては、疑いなく首を縦に触れる。
3バックの右で出場したことや、対峙する左FWジョアン・フェリペや左SBフランシスコ・モウラの注視し続けていたため、浦和レッズで見せているような「アグレッシブな上下動」や「前への推進力」は影を潜めていた。
しかし、代わりに「粘り強い対人守備」で、積極的にボールにアプローチ。味方と連携してもボールを取り切れないシーンや個人技に翻弄されるシーンはあったものの、その守備能力はディフェンダーとして十分にカウントできるものであった。
浦和で起用されている右ウィングバックはもちろんのこと、今回の試合のようなセンターバックに、試合途中でのシステム変更により起用された右サイドバックなど、複数のポジションをハイレベルにこなせる柔軟性も大きなアピールとなったことは間違いない。
ジョアン・フィリペ
言わずもがな、トゥーロン国際大会はエリートたちがビッグクラブへステップアップするための登竜門である。
当時、スポルティング・リスボンで売り出し中だったクリスティアーノ・ロナウドがこの大会で注目を浴び、後にマンチェスター・ユナイテッドへ移籍するきっかけの一つになったことは有名は話だ。
そして、その偉大なる先輩の「後継者候補」として、ポルトガルで大きな期待を抱かれているのが、ジョアン・フィリペ。ジョタの愛称でも親しまれ、この試合においても「最も違い」を感じさせたプレーヤーである。
独特な緩急の付け方に一瞬のスピード、1vs1において絶対的な自信を持っている抜群のボールテクニックが融合したドリブルは、この世代の「枠」を完全に逸脱。
そのクオリティーは、上述したロナウドの若き日を彷彿させるものであるが、プレーバリエーション、状況判断能力、インテリジェンスなどの面では、当時のロナウドのそれを明らかに凌駕している。
14歳でマンチェスター・ユナイテッドへのトライアルに招待されるなど、成功者への道のりを順調に歩みつつあるが、ここ数年の間に大転換期を迎える可能性は高い。
サッカーファンであれば、その名前は必ず覚えておいて損がない、若き俊英だ。
フロレンティーノ・ルイス
この試合におけるU-21日本代表は、上述のジョアン・フィリペや、欧州王者に輝いた2016 U-17EUROにて得点王とMVPをダブル受賞しているゼ・ゴメスらの個人技を前に苦戦した印象が強いが、同様に攻撃の面でもほとんどの時間帯で自由を得ることができなかった。
その理由がアンカーポジションにこの男の存在があったからだ。ポルトガル代表の応援の名選手コスティーニャを連想させるような確かな判断力と高いボール奪取を持つが、同時にフィジカルの面にもストロングポイントがあり、今回のワールドカップには残念ながら怪我で招集が見送られたダニーロ・ペレイラにも近いタイプだ。
攻守両面で常に首を振りながら周囲の状況把握に努め、ただ、バイタルエリアを埋めるのではなく、時にはポジションを上げて高い位置からボールをかっさらうダイナミズムは、いかなる戦術にも対応できるだろう。
所属するベンフィカのBチームは「クラブ史上最強世代」と一部で言われ、今季4季ぶりに国内リーグを制した。
このフロレンティーノ・ルイスだけではなく、中盤には同じくトゥーロン国際大会にも参加しているダヴィド・タヴァレス。前線には、今稿で何度も触れているジョアン・フィリペとゼ・ゴメス。さらに、スピードスターのメサケ・ジュ―など、数多のタレントが揃っているチームであれば、至極当然。そして、この中から未来のA代表が生まれることもまた当然の流れだろう。
お知らせ
突然ですが、Qolyでも連載経験のあるフリースタイルフットボーラーパフォーマーのtatsuya氏と共にYouTubeチャンネルを開設しました。
拙いところも多々あるかと思われますが、「二人の個人的な主観に基づき、ホットな話題や今後のサッカー界などについて徹底討論。メディアが言えない事にも、何も恐れず突っ込みます。」という意気込みでやって参りますので、お暇な時にでものぞいて頂けると幸いです。
以上、カレンからのお知らせでした。