天文ファンも鉄ちゃんも大興奮!? 時と宇宙と海峡の欲張りな科学館/明石市立天文科学館(兵庫県明石市)
-明石市のシンボルと言えば?
-明石海峡大橋!
惜しい! 明石海峡大橋は神戸市垂水区と淡路島をつなぐ橋なので、明石市からは『それがよく見える』にとどまります。
市民が口をそろえてシンボルに挙げるのは、高さ54mの時計塔が立派な明石市立天文科学館。
1960年6月10日の時の記念日(日本初の時報が671年6月10日に鳴ったことに由来)に開館しました。
日本標準時子午線上に建つ明石のシンボル
この地に天文科学館が建てられたのには理由があります。
それは、東経135度の日本標準時子午線(しごせん)が通っているから。
館内にもいくつか子午線の表示がされています。
子午線が永遠に続く続く続く……鏡の前や、エレベーターの中までもです。
明石では1910年頃から教育者らが熱心に子午線通過地点の標識設置を働きかけ、はじめは地図に基づいて標識が設置されたそうです。
しかし、1915年に日本の地図原点の経度に修正がおこなわれ、標識と地図上の東経135度の位置がずれたため、今度は天体観測による子午線の決定と標識の移動・新設が行われました。
さらに、戦後、再度天体観測が行われた結果、この通称『トンボの標識』が現在の明石市立天文科学館北に移設されました。
子午線決定のための2度に渡る天体観測が、プラネタリウムを擁する天文科学館の開館へとつながっているんですね。
3階の『天文ギャラリー』では、隕石を触ったり、宇宙開発の歴史をたどったりしながら、遠い宇宙に思いを馳せます。
星空に感動! 現役最古のプラネタリウム
「宇宙は広いな大きいな」の感覚を引きずったまま、2階のプラネタリウムへ。
フルフラットで最高の寝心地、いや空の見上げ心地を保証するシートに身を預け、約50分間の星降る夜へ出発です。
これは、旧東ドイツから取り寄せられたカールツァイス・イエナ社製の投影機で、現役で稼働するプラネタリウムとしては日本で最古の、とても貴重な機械なんです。
プラネタリウム投影中は、まず学芸員さんを信じて、言う通りにすることが大切。
「目を閉じて」と言われれば閉じる。片目をこっそり開けてはいけません。言う通りにすれば、最高の星空が目の前に広がるはず。
そして、プログラム進行中の投影機の動きにも注目してみてください。
立ち上がったり回転したり、まるで生き物のようで愛おしさが湧いてきます。
16階の天体観測室には、口径40cmの反射望遠鏡と、屈折望遠鏡が設置されていて一般公開のある土・日曜日には昼間の星を観測することができます。
太陽が眩しい晴れの日にきらりと輝く星を見られると、感動しますよ。
瀬戸内の大パノラマ広がる展望室
さて、この記事のタイトルを覚えているでしょうか。
『時と宇宙と海峡(ときとそらとうみ)』の科学館だと言いましたね。
海峡を見るには、14階の展望室に向かってください。
明石海峡大橋はもちろん、淡路島も、そしてJRと山陽電車の線路が平行して走る様子も六甲山系も、360度大パノラマで堪能できます。
子午線標識のある人丸前駅に電車が停まり、人が乗り降りするさまはまるで鉄道ジオラマのよう。
14階まではもちろんエレベーターで上ることもできますが、螺旋階段の壁に宇宙カレンダーや全天88星座が描かれているので、エクササイズ兼お勉強に上ってみるのもいいですね(ただし、責任は取れません)。
この科学館のいいのは、館内に体験しながら学べる展示がたくさんあるところ。
人間日時計は、今日の日付に立つと自分の影で時間が分かる日時計です。
「立ちましょうか?」
学芸員の石井さんがノリノリで立ってくれました。
明石市立天文科学館では子午線をPRする大人気ヒーロー『軌道星隊シゴセンジャー』が活躍したり、夕焼けとアンテナ塔が重なる『夕焼けパンダ』の観測会が開かれたりしています。
アイデア豊富で天文愛に溢れた楽しい学芸員さんや職員さんがいるから、ユニークなイベントやキャラクターが誕生するのだろうと思います。
明石からの帰り道の夜空には、いつもと違ってたくさんのストーリーが見えてきます。
知的好奇心をくすぐる刺激的な科学館へ是非お出かけください。
※明石市立天文科学館では、開館の翌年から続く『星の友の会』の会員を募集しています。例会や野外天体観測会の参加、広報誌や会報による情報収集ができるなど会員特典がたくさんあります。
明石市立天文科学館
所在地/兵庫県明石市人丸町2-6
電話/078-919-5000
最寄駅/JR明石駅、山陽電車人丸前駅、山陽電車明石駅
駐車場/有り。有料
休館日/毎週月曜日、第2火曜日(ただし、月曜日または第2火曜日が祝日の場合は開館し、翌日が休館)、年末年始
開館時間/午前9時30分~午後5時まで(入館は午後4時30分まで)
観覧料/一般700円、高校生まで無料(団体料金、年間パスポート有り)
URL/http://www.am12.jp
瀬戸内Finderフォトライター 堀まどか