ビジネスパーソンなら必ず耳にする“マーケティング”。でも、あなたは、「マーケティングって何ですか?」と聞かれたら、きちんと答えることができるでしょうか。マーケティングは、商品企画をしたい人なら必須の知識です。なかでも“ターゲティング”は、必ず知っておきたい基礎知識のひとつ。マーケティングとターゲティングを理解して、仕事で活かせるようにしておきましょう!
この記事のポイント
- ①マーケティングとは「顧客が欲しいと思う商品やサービスを作り、欲しいと思ってもらうこと」。移り変わるマーケティングの歴史とは
- ②「マス・マーケティングだけでは成功しない時代」? 多様化した消費者に対応するための“ターゲット・マーケティング”。基本的な3つの考え方と具体例
- ③多様性を増すニーズに対応する最新マーケティング3つ紹介。“マーケティング”と“ターゲティング”の基礎知識を理解し、最新情報にも常にアンテナを!
“マーケティング”と“ターゲティング”そもそも、マーケティングとは何か?
マーケティングには、さまざまな定義がありますが、一例として、“顧客が欲しいと思う商品やサービスを作り、欲しいと思ってもらうこと”と表現することができます。
商品を開発すること、ターゲット顧客を定めること、価格や売る場所を決めること、広告を作ること。これらはすべて、マーケティングを構成する要素であり、顧客に欲しいと思ってもらうための手段なのです。
経営戦略の名著を多く執筆しているピーター・F・ドラッカーは、「マーケティングの理想はセリング(販売)を不要にすることだ」と述べています。では、マーケティングとは、具体的に何をすることなのでしょうか?
“マーケティング”と“ターゲティング”マス・マーケティングで、市場を一気に取ることを狙う
マス・マーケティングとは、全ての顧客を狙うマーケティングの考え方です。市場が成長期(新しい製品群が市場に浸透してくる段階)に入り、一気にシェアを取って競合に差をつけたいときに効果を発揮します。
マーケティングの歴史を紐解くと、第二次世界大戦後にまで遡ります。当時のアメリカは高度経済成長期を迎え、大量生産の仕組みや流通網が整い、テレビが一気に普及しました。この時代背景に後押しされ、商品を一気に市場に浸透させる『マス・マーケティング』が誕生したのです。
代表的な手法としては、CMや看板など、生活のなかで自然と目に入る手段で広告を出すことです。それらの広告には、次のような特徴があります。
- 派手で目立つデザインにする
- 企業名や商品名を連呼する
- キャッチフレーズを作る
消費者の記憶に残すために、これらの広告を大量に打つのです。
マス・マーケティングの有名な事例がコカ・コーラです。商品のロゴにあわせた赤く派手な広告デザインや、「Always Coca-Cola」「No Reason Coca-Cola」というキャッチフレーズを覚えている人も多いのではないでしょうか。誰もがすぐに思い出せる商品であることは、マス・マーケティングが成功している証です。
ほかにも、スマホ決済アプリであるPayPayは、テレビCMを頻繁に流す方法をとっています。ただしPayPayは広告だけではなく、「ポイント還元キャンペーン」などの施策とセットで展開しているのが特徴です。
現代はマス・マーケティングだけではなかなか効果を発揮できない時代になりました。それはなぜでしょうか?
“マーケティング”と“ターゲティング”ターゲット・マーケティングでは、狙う顧客だけが欲しいものを考える
物があふれている現代は、消費者の好みが多様化しています。同じ世代の人であっても、洋服や音楽の好みは人それぞれですよね。このような状況では、マス・マーケティングの考え方で一律の施策を打っても効果を発揮できにくくなっています。そのため、「ターゲット顧客」に的を絞ったマーケティングが必要なのです。
ターゲット・マーケティングの施策を打っていくための基本的な考え方は以下の3点です。
- ターゲティング:どのカテゴリの顧客に支持してもらうかを決める
- セグメンテーション:消費者をいくつかのカテゴリに分ける
- ポジショニング:競合との差別化をはかる
セグメンテーションの具体例と仕組みづくり
セグメンテーションの切り口は、年代や性別などの属性が代表的ですが、ライフスタイルや嗜好性の切り口で考えるほうが、競合とは違う斬新なターゲティング・ポジショニングを考えることにつながります。
有名な事例として、写真館の「スタジオアリス」が挙げられます。子供の成長の節目に家族写真を撮りたいものの、さほど手間はかけたくないファミリー層が主なターゲットです。伝統的な町の写真館とは違い、スタジオに貸衣装が準備されており、ショッピングセンターなどのテナントとして出店していることが特徴です。普段着のまま、買い物の途中で立ち寄っても記念写真が撮影できるシステムです。
このように、マーケティングには、ターゲット顧客の不安や不満を解消するための商品・サービスを設計して、買いやすい仕組みを作ることが求められます。スタジオアリスの主な顧客層は30代以降のファミリーですが、逆に若者向けの商品であれば、よく使うSNSマーケティングに力点を入れることが考えられるわけです。11月11日の”ポッキーの日”のキャンペーンが有名ですね。
競合が示しておらず、自社の強みを活かせるポジショニングとは
ターゲット・マーケティングでは「ポジショニング」の考え方が重要です。ポジショニングとは、ターゲット顧客に自社の商品・サービスをどう認知してもらうかを考えることです。競合とは違う独自の認知を作ることを目指します。
これを考えるツールとして、『ポジショニング・マップ』というものがあります。顧客の購買要因(買う理由)を2軸に取り、自社と競合の商品・サービスをプロットして考えるものです。
ここでは、2軸の立て方が重要です。顧客自身も気づいていないような購買要因を見つけ出し、自社の強みが活かせて、更には競合が示していない軸を発見できると、先に発売されている競合商品にも勝てる可能性を見出せます。
“マーケティング”と“ターゲティング”近年の最新マーケティング戦略
近年では、SNSやデータ活用技術が発達し、新しいマーケティングの考え方が出てきています。代表的なものを3つご紹介します。
・One to Oneマーケティング
顧客ごとにマーケティング施策を変える手法で、既存顧客の繋ぎ止めが目的となります。Amazonが購買データを使って個々の顧客に応じて商品を薦める「これを買っている人はこれも買っています」が代表的です。
大企業ではデータを駆使してOne to Oneマーケティングを行いますが、個人店において、馴染み客の好みに合わせて商品を薦めるのも同じ考え方に基づいています。
・ロイヤルティ・マーケティング
熱狂的な信者を作ることが目的です。クーポンや景品の配布にはじまり、優良顧客を限定イベントに招待したり、特権を提供したりすることが代表的な手法として挙げられます。
各航空会社はこのロイヤルティ・マーケティングに力を入れています。空港に行くと優良顧客専用のラウンジが用意されていたりしますよね。ハーレーダビッドソンやアップルは、熱狂的信者が多いといわれている代表的なブランドです。
・アンバサダー・マーケティング
熱心なファンに、主にSNSで商品の紹介をしてもらう手法です。消費者も企業のPRだけでは心が動かない時代になり、実際に使った感想である“口コミ”の影響力が増してきています。事例としては、ネスカフェアンバサダー、ライザップ公認アンバサダーなどが有名です。
【まとめ】マーケティングには、ターゲティングが必須の知識!
マーケティングとは、派手なキャンペーンや広告だけを指すものではありません。顧客が満たされていないニーズを見つけて、商品やサービスを企画し、情報を顧客に届け、興味を持ってもらい、買ってもらう一連の仕組み作りのことです。
商品企画をするには欠かせないマーケティング。基礎知識は最低限押さえて、最新動向にもアンテナを立てておきましょう!
出典:カール教授のビジネス集中講義 マーケティング(平野敦士カール著、朝日新聞出版)
出典:マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則(ピーター・F・ドラッカー著、ダイヤモンド社)