新型コロナや原油価格・物価の上昇の影響は、わたしたちの生活に大きな影響を及ぼしています。その負担を軽減するために、政府は給付金を設けています。しかしこの給付金、誰でももらえるものではありません。今回は、給付金のなかから、臨時特別給付金・子育て世帯生活支援特別給付金の概要と、給付金の対象となる世帯を紹介します。
10万円がもらえる「臨時特別給付金」
政府は、2022年度から新たに住民税が非課税となった世帯に対して現金10万円の給付金を支給する方向で調整しているという報道がありました。
すでに2021年度時点の住民税非課税世帯などには「臨時特別給付金」として現金10万円の支給がスタートしています。しかし、この新たな給付金は2022年度から非課税になった世帯が対象。2021年度時点の住民税非課税世帯は対象外となる方針です。本稿執筆時点(2022年5月12日)では政府からの発表もまだないので、続報が気になるところです。
臨時特別給付金は、生活が困窮する世帯を支援する給付金です。
2021年度時点の住民税非課税世帯などが受け取れる臨時特別給付金の支給対象となる世帯は、次のどちらかの世帯です。どちらに該当する場合も、給付を受けるには手続きが必要です。
●①世帯全員の令和3年度「住民税(均等割)が非課税」の世帯住民税には、一定額を負担する均等割と、所得に応じて負担する所得割があります。このゆち住民税均等割が非課税となる世帯は
・生活保護を受けている
・未成年者、障がい者、寡婦、ひとり親で前年の合計所得金額が135万円以下(所得が給与所得のみの場合は、給与収入が204.4万円未満)
・前年の合計所得金額が各地方自治体の定める額以下
のいずれかの条件を満たす世帯です(なお、これらの世帯は所得割も非課税です)。
「前年の合計所得金額が各地方自治体の定める額以下」の条件は、お住まいの自治体によって金額が変わります。
臨時特別給付金の対象となる世帯には、令和3年(2021年)12月10日時点で住民登録のある市区町村から確認書が届きます。中身を確認して市区町村に返信することで、後日臨時特別給付金がもらえます。
●②家計急変世帯家計急変世帯とは、令和3年1月以降の収入が減少し、住民税非課税相当の収入になった世帯です。
家計急変世帯に該当するには、新型コロナウイルス感染症の影響で収入が減少したと認められる必要があります。また、世帯員全員の年収見込み額(令和3年1月〜令和4年9月までの任意の1か月の収入の12倍)が住民税の非課税相当水準であることが必要です。
住民税の非課税相当水準となる金額は、扶養している人数やお住まいの自治体によって異なります。下の表は東京都区部の給与所得者の例です。
●家計急変世帯の判定方法のイメージ内閣府の資料より
家計急変世帯に当てはまり、給付金をもらう場合には、申請時点で住民登録のある市区町村に申請が必要です。そのうえで、必要書類を提出することで、後日臨時特別給付金がもらえます。
なお、申請期限は2022年9月30日まで。これを過ぎると、給付金はもらえなくなります。
5万円がもらえる「子育て世帯生活支援特別給付金」
さらに、2022年4月に政府が決定した物価高騰の緊急対策の中に、所得が低い子育て世帯の生活を支援するため、子ども(0歳から18歳、障害のある子どもは20歳未満まで)1人あたり5万円の給付金を支給することが盛り込まれました。早ければ6月にも給付が順次始まる見込みです。
給付金の対象となる世帯は、次のどちらかの世帯です。
●①2022年4月分の児童扶養手当をもらっている世帯児童扶養手当は所得が一定未満のひとり親世帯が受けられる手当です。児童扶養手当をもらっている場合は給付金の対象です。
●②2022年度の住民税非課税の子育て世帯両親がいる世帯でも、住民税非課税の子育て世帯は給付金の対象です。
この①②に該当する世帯の方は、いずれも申請不要。児童扶養手当・児童手当を受け取っている口座に直接給付金が振り込まれます。ただし、臨時特別給付金と同じく、直近の収入減少などで児童扶養手当・住民税非課税の対象になる場合は、申請が必要になります。
住民税非課税世帯には他にも優遇措置がある
ここまでたびたび登場してきた住民税非課税世帯には、生活救済の観点から、さまざまな優遇措置が用意されています。
●住民税非課税世帯の優遇措置・2歳未満の保育が無償化される
幼稚園、保育所、認定こども園などを利用する3〜5歳児の保育は無料ですが、住民税非課税世帯の場合はさらに0〜2歳児の保育も無料になります。
・高等教育無償化の対象になる
大学等に進学する際の費用の給付・減免を受けることができます。金額は通う学校の種類やどこから通うか(自宅か自宅外か)で異なりますが、住民税非課税世帯は第I区分といって、給付・減免が手厚くなります。
・高額療養費の負担が減る
毎月の医療費の自己負担を一定額に抑えることができる高額療養費制度の自己負担額は所得水準で異なります。住民税非課税世帯は、高額療養費の自己負担額も少なくて済みます。
・介護保険料の負担が減る
住民税非課税世帯の65歳以上の介護保険料は軽減されます。
・国民年金保険料や国民健康保険料の負担が減る
国民年金保険料は申請すれば免除が受けられます。免除を受けた場合でも、将来、国民年金保険料を支払った場合の2分の1の年金を受け取れます。また、国民健康保険料の負担も2割〜7割軽減されます。
まとめ
臨時特別給付金・子育て世帯生活支援特別給付金はいずれも収入が少ない、または少なくなってしまった世帯を対象にした給付金でした。また、住民税非課税世帯には優遇措置があることも紹介しました。もしも対象になるのであれば、忘れずに申請・手続きを行って給付を受けるようにしましょう。
また、今後も新たな給付金が出てくる可能性もあります。自分が利用できる給付金がないか、最新の情報にも目を光らせておくといいでしょう。
文: 畠山 憲一 Mocha編集長
1979年東京生まれ、埼玉育ち。大学卒業後、経済のことをまったく知らないままマネー本を扱う編集プロダクション・出版社に勤務。そこでゼロから学びつつ十余年にわたり書籍・ムック・雑誌記事などの作成に携わる。その経験を生かし、マネー初心者がわからないところ・つまずきやすいところをやさしく解説することを得意にしている。2018年より現職。ファイナンシャル・プランニング技能士2級。教員免許も保有。趣味はランニング。