かつて清水エスパルスや横浜F・マリノスでプレーし、韓国代表として“ワールドカップ4強神話”の立役者にもなったアン・ジョンファン(43)。サッカー解説委員も務める彼は、自身のことを徹底して“サッカー人”と名乗る。
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韓国で近年は芸能人のイメージが強いアン・ジョンファンだが、自身のアイデンティティは明確にしているようだ。
アン・ジョンファン
アン・ジョンファンは2012年に現役を引退後、異質のセカンドキャリアを歩んだ。
指導者の道を進む引退選手が多いなか、アン・ジョンファンは芸能という新たな領域に進むことを選んだ。今やスポーツとエンターテイナーを合わせた造語である“スポーテイナー”の代名詞ともいえる。
第2の人生を謳歌するアン・ジョンファンだが、彼の心の中にはいつもサッカーがある。
昨年末、本紙『スポーツソウル』の単独インタビューに応じたアン・ジョンファンは、「私は現役時代、たくさんの愛を受けてきた。疑いの余地もなく、自分は“サッカー人”だ。芸能ももちろん良いが、結局はサッカーに携わるべき人間なんだ」と強調した。
現役時代のアン・ジョンファンは、寡黙なキャラクターとして有名だった。そんな彼が芸能で活躍する姿に、代表でともにプレーした後輩たちは驚いたようだ。
アン・ジョンファンも「実際、本来は口数が多かったり、笑かしたりするような人間ではなかった」と話す。
インタビューに応じるアン・ジョンファン
「自ら変わったわけではない。テレビ番組をこなしながら、ジャンルに合わせて自然に変わっていったのだと思う。最初は私も難しかった。面白いシーンだけがお茶の間には流れるが、実際にはとても長く撮影をしている放送も多い。編集の力もある」とアン・ジョンファンは笑った。
そして、「引退直後は空虚さがあった。サッカーだけにのめり込み、限定された部分があったが、芸能の世界で過ごしてみるといろんな人と出会う。サッカーとはまったく異なる分野の人々の生活を見ながら、人生について多くのことを学んだ」と明かした。
解説、芸能…新たな世界で学んだ経験
アン・ジョンファンは、サッカーと芸能のコラボにも注力している。
彼の特技であるサッカーにエンターテイメントを加えた放送が、韓国で大きな人気を呼んでいる。
アン・ジョンファンは「私の知る限りでは、サッカーをテーマにした映画やドラマで成功したケースが少ないように見える。リスクのある選択だったが、放送側も私が得意とする部分を生かそうとしてくれたようだ。サッカーは面白くも難しくもあるが、その過程にドキュメンタリーと芸能の要素を組み合わせれば、視聴者も受け入れてくれるだろう」と述べた。
昨年11月5日、新番組制作発表会でのアン・ジョンファン(写真左)
芸能活動を通じてアン・ジョンファンが得たのは“人間関係”の重要性だ。アン・ジョンファンは「現役時代に多くの監督、選手と出会いながら、やはりサッカーも人間関係が重要であると実感した。人が集まることでチームは成り立つ」と話した。
現役引退後から務めるサッカーの解説も、アン・ジョンファンにとってある種の指導者レッスンである。
「私はグラウンドにしかいなかった。目を閉じても選手がどこにいるかわかっていたが、解説の立場になり、一歩外でサッカーを見るようになって学ぶことが多かった」と語る。
また、「最初は生放送中に上手く伝えることに苦労し、ミスもたくさんした。まだまだ未熟だが、経験を積んだことで普通に伝えられるレベルにはなった。もし今後監督の道を進むことがあれば、解説での経験が大きな糧となるだろう」と話した。
「私は“サッカー人”。準備が整えば復帰する」
韓国サッカー界ではアン・ジョンファンの復帰が気がかりとなっている。生まれた川に帰る鮭のように、アン・ジョンファンもいずれサッカー界に復帰することを考えているようだ。
「何度か提案を受けたのは事実だ。指導者をすることへの気持ちも大きい。P(プロフェッショナル)級指導者ライセンスの獲得も計画している」と、アン・ジョンファンは明かした。
しかし、今のところは気を付けたほうが良いだろう。アン・ジョンファンという名前に大きな重みがあるからである。
サッカー界復帰への思いを語ったアン・ジョンファン
彼は「テレビの中のアン・ジョンファンは専門の芸能人ではないから、失敗しても理解してくれる。でも、サッカーではそうはいかない。私はサッカーだけをしてきた人間だから、一度の失敗も許されないだろう」と、サッカーの現場に立つ厳しさを述べた。
そして、アン・ジョンファンは「やるなら最大限、完璧に準備して臨みたい。多くを学んでから臨んだほうが、失敗する確率も減るだろう」と、指導者として成功できる時期だと確信できたとき、再び“サッカー人アン・ジョンファン”へと戻る決意を明らかにした。