多くの方が知っているであろう、トランポリン。おそらく、小さい頃に屋内遊園地などで体験した人もいることでしょう。トランポリンは幼少期の運動に適しており、室内でも他の運動では得にくい能力を身につけることができます。いったいどんな効果があるのか、コーディネーション能力(調整力)の観点から解説しましょう。
コーディネーション能力とは
コーディネーション能力とは、外部から得た情報をすばやく反応・判断し、それに対して適切にカラダを動かす能力のこと。日本では「調整力」と言われ、おもに以下の3つに分類されます。
1. 敏捷性
2. 平衡性
3. 協応性
コーディネーション能力を提唱したドイツでは、トップアスリートを育成するため以下のような7つの神経能力に分類しています。
1. リズム能力
2. 反応能力
3. バランス能力
4. 変換能力
5. 連結能力
6. 定位能力
7. 識別能力
幼少期は、神経がもっとも育つ時期です。そのため、私はドイツのコーディネーション能力の考え方を推奨しています。
コーディネーション能力は、子どものときに急激に向上します。そのため、子どもの頃は多くのスポーツを経験し、いろいろな動作を身につけることがよいとされています。コーディネーション能力をはじめとする神経系(脳や脊髄・感覚器)が向上する時期を「ゴールデンエイジ」と呼び、その時期の運動経験が運動能力を左右するとまで言われているのです。
子どもの運動神経を左右する「コーディネーション能力」とは?ゴールデンエイジ期におすすめのトレーニングも解説 より
トランポリンで身につくコーディネーション能力
定位能力
あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、言い換えると「空間認知能力」のこと。一般的に鬼ごっこなどで育つ能力です。鬼ごっこでは、鬼に触られないよう時間や速さ、距離を常に考えながら逃げます。しかし、これは平面での話です。トランポリンでは、他の遊びにはない立体的な空間認知能力を育てることができます。
以前、あるお店を訪れた際、小学校低学年くらいの子どもがトランポリンを使って空中でくるくる回っていました。お店の人に話を聞いてみると、少しはやり方を教えたものの、ほぼ本人の独学で覚えていったとのこと。ジャンプしてから下りるまでの時間を計算し、自分で「こんなことしてみよう」と考えたのでしょう。しかも、同じような子が何人もいました。
バランス能力
通常「バランスをとりましょう」というと、片足立ちを試す方が多いでしょう。そして、そのまま静止しようとします。しかしスポーツにおいて、止まってバランスをとる動きはあまりありません。そのため、動きながらバランスを調整する能力が必要です。
トランポリンを跳んでいると、勝手に跳ね上がって勝手に下りてくるため、常に動いている状態になります。その結果、動きながらバランスを整える力が身につくというわけです。平均台なども動きながらバランスを整えていきますが、どうしても動きが遅くなってしまいます。これに比べ、トランポリンは速いスピードでバランスを整える力が身につきます。
また、足だけでなく背中や座った状態で着地しても、勝手に跳ねてくれます。いろいろな体勢を取ったり、空中で回ったりできるので、格段に高いバランス能力が育つでしょう。
変換能力
トランポリンを体験すると分かるのですが、跳んでいると、ちょっとしたブレが生じるものです。しかし、それをとっさに立て直そうとするため、予測が難しい動きにも体が反応するようになります。日本ではステレオタイプの練習が多いためこの変換能力が育ちにくい傾向にありますが、トランポリンなら、その能力を自然と身につけることができます。
他の遊びでは育ちにくい能力を自然と身につけられる
このように、他の遊びでは育ちにくい能力も、トランポリンなら遊びながら身につけることができます。最近ではトランポリンのある施設も増えてきていますので、ぜひ探してみてください。
<プロフィール>
赤堀達也(あかほり・たつや)
1975年・静岡県出身。小中大でバスケを指導し、独創的理論・論理的指導で体力テスト低水準校が県大会優勝するなど選手育成を得意とする。最高戦績は全国準優勝。2019年度より旭川大学短期大学部准教授として、この理論を応用した幼児体育・健康の研究を行う。またパーソナルストレッチやスポーツスタッキング、部活動改革にも取組む。
[HP] {{https://mt-a.jimdo.com|https://mt-a.jimdo.com/|https://news.line.me/reflink/427/3/d8818caeef53ffda38efa69f057b096860c29fe4}}
<Text:赤堀達也/Photo:Getty Images>
外部リンク