文:滝水瞳
ゲイやバイセクシュアル、トランスジェンダーなどのいわゆる性的マイノリティに対しての理解が、少しずつ世間に広まりつつある。しかしここにきて、別の側面から公平性が失われていると疑問が呈されていることをご存じだろうか。
米国の非営利団体「PragerU」が先月16日に公開した動画が、大きな物議を醸している。タイトルは「女子スポーツの終焉」だ。
“性別”に疑問「生物学的には勝てない」
米国コネチカット州に住むセリーナ・ソウルさんは、8歳の時から陸上競技をはじめ、家族やコーチの支えを受けながら鍛え上げ、2018年には高校女子陸上競技大会のトップ5に入るほどの実力をみせた。
しかしセリーナさんは、その年の州選手権である大きな壁にぶち当たる。セリーナさんを負かした1位と2位の選手が、トランスジェンダーの女子、つまり性自認は女性だが生物学的には男性とされた選手たちだったのだ。彼らは2年連続で女子の枠で1位と2位を獲得。結果、この2人は合計15種目の州選手権でタイトルを獲得した。
ここでセリーナさんの中に疑問が浮上した。「男性が女性と競い合うのは公平か?」。生物学的な性別の違いが競技結果に影響を及ぼすと考えた。
セリーナさんは、放課後や週末に友達と遊びたい気持ちを抑え、毎日2時間以上のトレーニングを欠かさず、週末は朝練や大会に出場した。まさに彼女の青春時代は、100メートル走と200メートル走でコンマ何秒を削ることに費やされていた。
仮にそのトランスジェンダーの1位と2位の選手が男子チームに出たとすれば、出場する資格が得られなかったレベルだったと話すセリーナさん。男性と女性の体力は生物学的な違いが明らかで、とてもかなわない部分があると語った。例えば、世界最速の女性陸上選手と称される米国の金メダリストのアリソン・フェリックス選手は、400メートル走の自己ベストが49.26秒だが、2018年のデータによれば、この世界記録を米国内の男子高校生約300人が追い抜かれるという。
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「アスリートに公平性を」訴訟へ
今のままでは、女子選手が失うのはトロフィーやメダルといった栄誉だけでない。セリーナさんは、奨学金を得られるチャンスも減り、競う場さえもなくなると危惧している。実際、セリーナさんは2019年の選手権でトランスジェンダー女子が1位2位を占めたため、その後のニューイングランド選手権に参加する機会を失った。このために、トップコーチからスカウトされる機会を失い、奨学金を得る機会も失ったとのこと。
ここまでの現状を伝えながらも、「女子が強さやスピードの生物学的違いについて反対しようとするとき、それは偏見とみなされる」と考えていたセリーナさん。それでも、コネチカット州の2人のトップ女性ランナーと共に、公正な競技に女性の権利を求めた連邦訴訟を起こした。
動画はPragerU公式サイトの他、YouTubeでも配信され、現在80万回以上再生され大きな反響を呼んでいる。セリーナさんは「これは性同一性の問題ではありません。フェアプレーの問題です」という言葉で動画を締めくくっている。運動能力に対しての公平性はどう保つべきだろうか。