俳優業のみならず、映画監督にプロデューサー、アーティストとしても活躍を見せる斎藤 工さん。
近年は、映画関連の支援活動にも力を入れ、注目を集めている。
絶えず変化を求めて走り続ける男が、今思うこととは?熱い胸の内に迫った!
クールな表情に潜む、確固たる信念とは
夜景が見える高層ホテルのスイートルームに佇む、斎藤 工。趣と色気が交錯している。
不思議なことに、肉眼では草食系に見えるのに、カメラのレンズを通すと肉食系に変貌する。
当の本人は東京カレンダーを手にすると、デートシーンの写真を見て、「こんな状況、もう何年ないだろう」とつぶやいた。
「お洒落なお店を誰かと共有するなんて理想ですね。僕の食事は毎日ほとんど同じ。鯖缶と納豆とお豆腐、アカモクという海藻を和えたものと、りんごだけです。それを現場の隅でひとり淡々と(笑)。
自分で作ったお味噌や酵母菌ジュースも、よく摂り入れています。発酵食を中心に一日一食の生活です」
たまの外食で行きたくなるのは和食か鮨。「何箇所かメモりました」と東京カレンダーの中でチェックした店も、魚介が美味しい割烹だった。
しかし、懸念点が。
「コースが2名からとあり、僕は誰かとごはんに行く概念がなくて、ひとりでも2名分用意してもらえるのかな……」
ひとり前提を隠さず、でもお店に合わせて2名分は食べると仮定する。
「食事を自分のスタンスで気を使わずにしたいということと、単純にそういう人材がいないのでひとりになります。ひとりで温泉旅行も行きますし、けっこう単独行動には慣れていますね」
今、主演映画『シン・ウルトラマン』が公開されている。斎藤さんが演じるのはウルトラマンになる隊員、神永新二。
不思議な縁で、映像業界で働いていた父親の最初の仕事も、円谷プロダクションの『ウルトラマンタロウ』。アルバイトで入り、爆破を担当していた歴史がある。
斎藤家は教育方針により、おもちゃが限られていたが、フィギュアで唯一あったのもウルトラマンと怪獣。彼らを手に、いろんな物語を想像した少年時代だった。
小さな頃から、父が働く映像制作の現場に連れて行ってもらっていたそう。
「カメラの手前に父がいて、仕事仲間のみなさんが可愛がってくれました。作品を観ると、エンドロールに彼らの名前が載っている。
ああ、これはめちゃくちゃ格好いい仕事だなと思って、どこでもいいからエンドロールに自分の名前が載ることを目標にしてきました」
斎藤さんの過去と今、そして思い描く未来とは?WEB限定カット、撮影裏話も大公開!
「不遇も受け止め方次第では心の筋肉となり、30代になってから役に立つ」
今や、エンドロールのトップに名前が載る俳優となった。「気がつけば、という感じです」と、本人は静かに言う。
すんなりとはいかなかった。
2014年のドラマ『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』でエランドール賞の新人賞を獲ったのは、33歳の時。俳優デビューから15年が経っていた。
20代は同世代と一緒にオーディションを受けても、9割9分落ち続けていたという。
それでも、折れずにいられたのは?
「こういう時に格好いいことを言いたいんですけど、ただやめなかっただけなんです。やめる勇気が出ない宙ぶらりんの状態が長かっただけ。
20代前半は同世代が多くいたけど、みんなが他の道へと決断する中、やめないでいると、絶対数が減っていくんですよ。30歳を過ぎて、同世代がこんな少なくなったんだという感覚はありました。
だからといって仕事が潤うわけでもなく、家賃も払えず、祖母と暮らしていました。30代前半まで新聞配達で食い繋ぐ生活。あの頃に、変な逞しさを培ったんでしょうね。
配達中に犬に吠えられたりしていました(笑)」
斎藤さんは、こう続ける。
「価値を生めない時間が長かったので、そもそも自分にそんな期待していないんです。
期待するから傷つく。冷めた感覚かもしれないけれど、自分をこう捉えてほしいと主張することに意味はないと思っています。
ニーズがあるだけありがたくて、その人の都合で好きに捉えられれば、ただそれでいい」
「映画を届け、現場環境を良くすることも、映画に育てられた僕ができる恩返し」
【未公開カット!】艶っぽい眼差しでじっとこちらを見つめる、斎藤さん
「いろんな映画を観てきたことが血となり肉となり今がある」と話す斎藤さんは、2014年に移動映画館『シネマバード』を発案。
被災地を皮切りに、日本各地、さらに海を越えて途上国にも映画を届けてきた。
並行して、来年公開の映画『スイート・マイホーム』も絶賛編集中だ。
監督作の現場では、「食はクリエイティブに直結すると思っていますし、職人さんたちの腸の状態を良くしたい」と、自然食のお弁当を差し入れする。
女性スタッフが出産により仕事を諦める状況を変えるべく、託児所も設置した。映像業界の環境改善に具体的に取り組んでいるのだ。
「発酵じゃないですけど、変化すべき方向に動いていくのみ。小さな規模でもトライし続けるのが今の目標です」
映画の可能性を人一倍信じる男が、新たな連鎖を起こしている。
原動力には、映画への深い愛情と、時間が培った人への優しさがあると、眼差しが語っていた。
撮影の舞台は…「セルリアンタワー東急ホテル」
撮影場所は、『シン・ウルトラマン』のロケ地となったスイートルーム3703号室。
何の示し合わせもない、完全なる偶然だった。
【WEB限定】編集部は見た!斎藤さんの撮影当日の裏話
4月某日、撮影現場に颯爽と現れた斎藤 工さん。
5月13日から公開中の「シン・ウルトラマン」のプロモーションのため、この日も多忙なスケジュールだったにも関わらず、終始穏やかな空気を放つ斎藤さんのおかげで撮影はスムーズに進行。
取材前のアンケートにて、“発酵”にハマっているとお答えいただいていたため、インタビューでも斎藤さんが実践する“発酵生活”について詳しくお話を伺ったが、そのこだわりが想像以上に凄かった!
“一日1個のりんごで医者いらず”という古からの言い伝え通り、りんごは一日1個を食べ、海の幸というものを意識して、食事は魚介類を中心に。魚介系の料理を見ると食欲がそそられ、味噌も自家製だとか。
最近買った高価なものは?と尋ねると、お風呂に入れる“竹炭”であることも教えてくれた。(触れるものも、あくまでオーガニック!)
映画やドラマで受ける印象とはまた少し違う、斎藤さんの人間としての深い魅力にすっかり魅了されたひと時でした。
■プロフィール
斎藤 工 1981年生まれ、東京都出身。高校時代にモデルを始め、2001年に俳優デビュー。現在公開中の映画『シン・ウルトラマン』に主演。Netflix配信中のドラマ『ヒヤマケンタロウの妊娠』では主演の“妊夫”を演じている。監督長編最新作 映画『スイート・マイホーム』(主演:窪田正孝)が2023年公開予定
■衣装
ジャケット 79,200円、シャツ 39,600円、パンツ 37,400円〈すべてAURALEE TEL:03-6427-7141〉、時計 116,600円〈Hamilton|ハミルトン/スウォッチ グループ ジャパン TEL:03-6254-7371〉、その他 スタイリスト私物
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東京カレンダー最新号では、斎藤 工さんのインタビュー全文をお読みいただけます。
斎藤さんが小学生のときにはじめて観て爆笑したという、名作映画とは?
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