7月21日(水)から27日(火)まで、福島・あづま球場、神奈川・横浜スタジアムで開催される『2020東京オリンピック』。ソフトボール・マガジンWEBでは、元日本代表の山根佐由里さんに、各試合を振り返っていただく。本日は、24日(土)に行われた第3戦のイタリア戦の振り返りと、25日(日)14時30分から行われるカナダ戦の見どころをお伝えする。
後藤がピンチの芽を摘み
原田、山本が流れを引き寄せる
先発投手は18歳のA.ラカテナ。データもほぼない中で対戦も初めてだったと思います。それでも二巡目となった4回に原田のどか選手がボールを見極めて四球で出塁したことが大きかった。そして、1点欲しいところで四番の山本優選手がしっかり結果を残しました。山本選手は気持ちの波がない選手。いつも通り、練習してきたことを出すだけというスタンスで、冷静に打席に入っていたのが印象的でした。少し話が逸れますが、ああいった打席への入り方は、ソフトボールをやっている学生さんにもお手本になるのではと思います。
▲日本にとっては今大会初のナイターゲームとなった(写真/JMPA代表撮影)
▲イタリア先発のA.ラカテナ。18歳ながら、堂々としたピッチングを見せた(写真/JMPA代表撮影)
▲4回に、頼れる主砲・山本優から2ランが飛び出した(写真/JMPA代表撮影)
5回には、藤田倭選手から3ランが出ました。ピッチングでは悔しい思いもしたと思います。ようやくつかんだ先発のチャンスでしたが、3回途中で降板になってしまった。上野由岐子投手も苦労していましたが、初戦の入りは難しいものです。ただ、普段から「打たれても打って返す」と言ってきた藤田選手。しっかりとそれを証明してくれましたね。
▲先発し、打っては3試合連続本塁打をマークした二刀流・藤田倭(©WBSC)
後藤希友投手へ交代した場面ですが、宇津木麗華ヘッドコーチも攻めの継投策を選択されたと思います。これまでの国際試合ではあまり見られなかったこと。そういった継投策を取れる投手が出てきたということなのでしょう。上野投手、藤田投手、後藤投手、誰が欠けても成り立たない、3人が一枚岩になって戦っているのを感じました。それがいい守備、いいバッティングにつながっていると思います。
後藤の力を引き出した緩急を使った我妻の配球
我妻悠香捕手の配球もすごく冴えていましたね。後藤投手の良さを、本当に上手に引き出していました。イタリア戦に関しては、右バッターのアウトコースを上手に使えていたのが良かった。後藤投手も中に入らないように、シュート気味に投げる意識を持っていたと思いますが、右バッターにアウトコースの意識を持たせておいてインコースを攻めたり、チェンジアップを使ってみたり、相手の意表を突く配球をしていました。我妻捕手のほかにも峰幸代選手、清原奈侑選手と捕手が二人いますし、さらにコーチの山路典子さんも捕手出身ということで、いろいろな人の考えを参考にてきているのかなと思います。捕手陣も一つのチームとなって戦っているんだと思います。
▲若き左腕・後藤希友の良さを引き出す好リードを見せた我妻悠香(写真/JMPA代表撮影)
後藤投手自身も、大会を通して日に日に成長してきているのを感じます。彼女が出てきたら大丈夫という雰囲気も出てきました。制球力があって、躍動感もある。注目されていることをプレッシャーに感じず、逆に力に変えて堂々と投げ込んでいってほしいですね。自信は一つひとつの積み重ね。そういう意味で2戦目のメキシコ戦が大きなきっかけになったと思います。自分の世界観をつくるというか、相手を自分のペースに巻き込むことができる、そういう雰囲気を持ったピッチャーなので、残りの試合も頑張ってほしいです。
▲オーストラリア戦、メキシコ戦に続き好リリーフを見せた後藤希友(写真/JMPA代表撮影)カナダ戦の見どころ
これまでの試合でカナダは細かな継投策を取ってきています。そういう意味ではメキシコ戦のように、つないでつないでエンドランとか、細かいプレーで得点を重ねる戦いになりそうです。大事にしたいのは、1球でしっかり決めること。アメリカの試合を見ていると、二番打者がすごくいい働きをしているんです。先頭のバッターが出たら確実に送る。しかも1球で決めて速攻で点を取りにいく。こういう攻撃は相手バッテリーに威圧感を与えます。緊迫した試合では、そういった細かいプレーができるかどうかが勝敗を左右します。
守りは、日本のような堅実な守備をしてくるチームです。1点勝負の試合になる可能性が高いので、日本もまずはエラーをしないことを心掛けたいですね。今日の1試合目、アメリカはオーストラリアに勝って4勝目を挙げました。日本は3勝、カナダは2勝1敗でこの試合に挑みますが、非常に大事な試合になってくるので、ぜひ注目してください。
【PROFILE】
やまね・さゆり/1990年1月24日、三重県生まれ。右投右打。投手。宇治山田商業高-レオパレス21(2008年~09年)-トヨタ自動車(10年~17年)。トヨタ自動車では12年から16年までの5年間でリーグ記録の42連勝を打ち立て、14年には最優秀投手賞を受賞。日本代表では10年、14年、16年と世界選手権出場。17年限りで現役を引退し、現在はトヨタに勤務しながらソフトボール普及のためメディア等で活躍中。
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