テーマをより濃くするために生まれた彼女たち、そのモデルは先生自身!? アニメ『彼女、お借りします』宮島礼吏先生インタビュー! 第2期ではより掘り下げられるキャラ像に期待
ダメダメ大学生・木ノ下和也と魅力的なヒロインたちの無鉄砲ラブストーリーが描かれる、「週刊少年マガジン」にて連載中の漫画『彼女、お借りします』(以下、かのかり)。
本作のTVアニメが2020年7月から9月にかけて放送! 和也とヒロインたちの繰り広げる先の読めない人間ドラマが最終話まで、ドキドキ・ハラハラ満載に描かれました。
最終話放送後、第2期が発表されるなど、今後の展開にも注目が集まる『かのかり』。今回、原作者・宮島礼吏先生へのメールインタビューが実現しました! 物語やキャラはたちの誕生秘話、第2期の見どころについて語っていただいています。
作品のテーマをより濃くするために生まれた個性的な彼女たち。ヒロインたちのモデルは……?
──「レンタル彼女」という題材を漫画に落とし込むにあたって悩んだり苦労されたことはありましたか? 「レンタル彼女」を題材としたきっかけについてほかの媒体などで、親に紹介するためにレンタル彼女に似たサービスを利用する人が多いという中国の内情と仰っていました。
宮島礼吏先生(以下、宮島):「大学が一緒」や「家が隣」、「女優を目指している」などの設定でしょうか。「レンタル彼女」という題材を、漫画としてもう一段階面白く見せるための肉付けの部分です。
「レンタル彼女を借りて、紹介した」というだけでは流石に好きにはならないし、それだけの縁になってしまいます。その子がどんな子で、どんなバックグラウンドを持っていて、どんなシチュエーションにいたら恋に落ちてしまうだろうか、という部分にアイデアが必要でした。
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──バラバラな個性を持ったヒロインたちですが、それぞれの設定や作中における立ち位置など、どのように決まったのでしょうか? 各ヒロインの誕生秘話を教えてください。
宮島:水原と和也の関係性の中に、どんなキャラクターがいたらもっとテーマが濃くなるだろう?とか、2人だけだったら描けないやり取りが描けるだろう?ということを、新しいキャラを出すときは基本的に考えています。
その中で、瑠夏だったら「好き好き言ってくれる後輩っぽいキャラ」墨ちゃんだったら当時人気だった「口下手キャラ」など、漫画的な「抑えるべきポイント」みたいなものを抑えられるように意識しています。
麻美の場合は、実は1話の和也をこっぴどく振っているシーンしか最初は考えていなかったんです。でもそのシーンを掘り下げて、「こんな振り方をする女の子ってどんな子なんだろう?」と想像していって、今の麻美のキャラクターになりました。
──アニメイトタイムズでは雨宮天さん、悠木碧さんにインタビューを実施し、作品に関するお話を伺っています。その中で、女の子の少し陰湿な部分がリアルに描かれている麻美について「モデルとなった人物がいたのでは?」というお話になりました。麻美を含め、ヒロインたちのモデルとなった人物、もしくは生み出すきっかけになったエピソードなどはありますか?
※参照記事:理想の彼女を演じる雨宮天さんがダメダメ主人公に怒り爆発!?悠木碧さんはリアル過ぎる麻美から女心の謎を解く?夏アニメ『彼女、お借りします』声優インタビュー
宮島:「この人!」という特定の誰かはいないです。全員自分がモデル、という言い方もできるかもしれません。いろいろな人を観察していて、「この人のこういうところ麻美っぽいな」とか「千鶴っぽいな」と感じる部分を集めて描いているので、特定の誰かということはないんです。
ただそれも、その言動をそのまま描くことはできなくて、その「麻美っぽい」と感じた部分が、自分に置き換えた時に「ああ、あの時の気持ちに似てるな」とか「あの時してしまったことと同じなんだ!」ということが腑に落ちて初めて描けるようになるんです。
それが分かると、「その時そのキャラがどんな気持ちでその行動をとったのか」ということがわかるようになるんですよね。だから、自分がモデル、という言い方もできるのかなと。
──上記のインタビューでは、少し頼りなく優柔不断な和也に対して様々な意見が出ました。改めて和也というキャラクターについて、また彼の言動・行動を描くにあたって心掛けたというポイントを教えてください。
宮島:個人的に「カッコイイ顔でクズなことをしない」という指針をもって描いています。例えば「二股をする」ということを「クズなこと」だとしたら、それをするなら「やむに止まれずやった」という状況を作るように心がけています。
そうすることで、どんなに漫画的な「ぶっとんだ状況」でも共感しながら描けるんですよね。「クズなこと」を「クズなこと」だと認識しつつもやってしまうって、人間あるじゃないですか。
瑠夏が「仮彼女」になるときも、「目の前で号泣しながら『付き合って』って言っている人がいる」「しかもその子は水原の秘密を握っている」「水原も『付き合いなさい』と言っている」という状況だったらその場で「付き合う(仮)」という決断をしてしまうかな、と思って描きました(笑)。
──先生が描いていて楽しいキャラクターとその理由を教えてください。
宮島:みんな楽しいです! みんなそれぞれ感情を揺さぶられると言いますか。和也は描いてて笑っちゃいますし、水原は可愛い。麻美は怖いし、瑠夏は「すごいことするなぁ」と、我ながら思います(笑)。墨ちゃんは他4人とはちょっと違いますが、喋れない分、絵の表現で伝えられるように工夫するのが楽しいです。
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これ以上ない12話。第2期ではキャラクターたちにより焦点が!?
──千鶴に対する想いを自覚した和也、夢に向かう千鶴、思惑がよりわからなくなった麻美など、先の気になる展開で第1期は幕を閉じました。改めて第1期を振り返った感想を教えてください。
宮島:『彼女、お借りします』のアニメとして、これ以上ない12話だったと思います。作品の世界観をアニメで最大限表現していただいたなと……! 毎週毎週楽しみに観ていました。何か問題があったとしたら、原作の、僕のせいですね(笑)。
──そもそもアニメ制作陣に対して先生から何かリクエストをされましたか?
宮島:僕からスタッフさんにお願いしたのは「千鶴をあまりデレさせすぎないようにしてほしい」と「和也がクズに見えないようにしてほしい」という2点です。とくに千鶴についてはこの作品のキモの部分なので、強くお願いをしました。でも監督の古賀(一臣)さんはもとより同じように考えていてくださっていたので、話が早かったです。
──本作は豪華声優陣も魅力のひとつです。第1期を通してキャストの演技をご覧になった感想を教えてください。
宮島:皆さん素晴らしかったです。皆さんの演技で、「このキャラはこういうこのセリフこんな言い方なんだな」と教えていただくことが多かったです。今では原作のネーム描いていると、皆さんの声でセリフが再生されるほどです。
特に水原の「馬鹿っ」が本当に好きで、いつもちゃんと悶えていました(笑)。あのセリフはたいていその直前がシーンとした間なので、見ていると期待もしてしまいますし難しいと思うのですが、その期待をちゃんと超えてくる「馬鹿っ」が毎回聴けるので、声優さんはすごいなと思いました。
──第5話の船から落ちた千鶴の救出劇、第10話で栗林に本当のことを打ち明けた決意など、ここぞというシーンでのキャラクターたちの表情や動きが、アニメ特有のアプローチで描かれました。先生からご覧になって、アニメならではだと感じられた特に印象深いシーンを教えてください。
宮島:第7話の瑠夏の特殊エンディングが印象的です。原作が1話かけて描いていることを、曲をつけることによってエンディングで表現したところに、漫画では決して使えない歌の力・音楽の力を実感しました。羨ましいなと(笑)。
──最終話では第2期が発表となりました。最初にお聞きになった際の心境や期待されていることなどお聞かせください。
宮島:初めて聞いたときは、素直に「良かったな」と思いました! 1期で描いていただいた内容はどちらかというとストーリーが先行していく、ドラマっぽいイメージだったんです。
ですが、2期で描かれる内容はさらにキャラクターに焦点が当たっていて、よりアニメ映えするんじゃないかなと。また総作監の平山さんが、元からとても上手なのですが、さらにどんどん上手くなっているように感じるんです。ですので、まだまだパワーアップを続ける平山さんの絵にも期待したいです!
──最後に、第2期を楽しみにしている読者・ファンのみなさんへメッセージをお願いします。
宮島:上でも書いたように、さらにキャラクターたちに焦点があたって、アニメ的にも面白くなっていくと思いますので、楽しみにしていてください!!
和也もより水原に対する気持ちを自覚して、カッコよくなっていきます(笑)。1期では和也を好きになり切れなかった方にも、見て欲しいなと思います!
[構成・MoA]
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