今作のひかげは最初から“のんすとっぷ”で大絶叫!? 不安すら感じた悪ノリとは? 冬アニメ『のんのんびより のんすとっぷ』宮内ひかげ役・福圓美里さんインタビュー【インタビュー連載 第10回】
のどかな田舎でのびのび過ごす少女たちの姿を描いたコミック『のんのんびより』のアニメシリーズ最新作となる第3期『のんのんびより のんすとっぷ』(以下、『のんすとっぷ』)が好評放送中です!
2013年に第1期が放送されて以降、第2期、劇場版と、ゆったりとした雰囲気やキャラクターたちのやり取り、綺麗な風景描写で人気を博した本シリーズ。『のんすとっぷ』では、旭丘分校に通う少女たちの明るく元気な日常が、新たな仲間たちを迎えて彩られます。
その待望の第3期の放送を記念して、アニメイトタイムズではキャストやスタッフへのリレーインタビューを実施。
第10回は、宮内ひかげ役・福圓美里さんのインタビューをお届けします。れんげの姉、一穂の妹で、東京の学校に通っている高校一年生のひかげ。お正月など長期の休みには帰省し、いじられたり突っ込んだりと賑やかな振る舞いをみせてくれます。そんなひかげを今期演じて感じたことや印象的なエピソード、これまでの思い出などいろいろお話をうかがいました。
今回のひかげは、最初からフルスロットルなアホだなって(笑)
――第3期をやってみて、ひかげの新たな面を感じたことはありましたか?
宮内ひかげ役・福圓美里さん(以下、福圓):ひかげは今まで、斜に構えるというか クールな面を見せながらも、たまにアホになる感じだったのですが今回は最初からフ ルスロットルなアホというか(笑)。ツッコミに回ることも多くて、『のんのんびより』っ てこんなに疲れる作品だったっけ?と思うぐらい、ずっと大絶叫しています。
なぜかというと、夏海(越谷夏海)とセットで出てくることが今回はすごく多いので、悪ノリコンビでこれまでのシリーズよりもテンションが高いなと思います。
――悪ノリということでは、夏海もかなりですよね。
福圓:そうなんです。どんどんひかげに辛辣になっていて。すごい仕打ちを受けることも多かったですね(笑)。
――直近の放送回となる第10話もそんな2人の魅力全開でしたが、収録はいかがでしたか?
福圓:この回はれんちょん(れんげ役の小岩井ことりさん)と夏海(夏海役の佐倉綾音さん)の3人で収録したんですけど、吹雪での悪ノリのシーンが予想以上に長くて、だんだんと不安になりました(笑)。何をやっているのかわからない感じが本当に面白くて、途中で笑いそうになっちゃいました。
――完全にコントみたいな感じでしたよね。
福圓:そうそう。れんちょんと夏海は真顔なんですけど、ひかげは乗り切れてないのがおかしくて。あと、私が「生簀(いけす)」を「生贄(いけにえ)」と読み間違えちゃったのも印象に残っています。
――確かに、漢字の見た目は似ていますね。
福圓:この仕事をしていると「生贄」は結構多用されるんですけど、「生簀」と言うことはほとんどなくて。
――声優あるあるですね。一般人なら普段「生贄」は言わないですから(笑)。具体的に演じる上で意識したことやディレクションはありましたか?
福圓:『のんのんびより』ってナチュラルなお芝居の方がいいなと思っていて。ギャグシーンも勢いに任せて、わざと言葉を崩す感じにすることがあるんです。でも、このシーンでは「さすがに何を喋っているかわからないので、もう一回言ってください」と言われました(笑)。他の現場で「何喋っているかわからない」とはまず言われないので、笑っちゃいました。
――なかなか声優さんに対して言うことはないですよね。
福圓:ギリギリを攻めたいというか、ちょっと崩し過ぎかな?というぐらいが面白いので、その塩梅が難しかったです。
――確かに、どの程度崩すかはともかく、子供たちがワイワイやっているならその方が自然な気がします。
福圓:そうですね。『のんのんびより』は日常の話なので“ちょっと気を抜いて喋っている”ぐらいがいいかなと思っていて。今までは家の中ではなるだけ自然な呼吸で、このシーンは外で夏海とはしゃいでいたので、声を荒げながら崩すようにしました。
――第10話の前半はお年玉をテーマとした話でしたが、こちらはいかがですか?
福圓:お金のことになったらいくらでもプライドを捨てていくのは、これこそひかげ!って感じだなと(笑)。この話もそうなんですが、第3期はひかげが結構帰ってきていますよね。今までは全話を通してもそんなに出会えないキャラだったのに……。
――佐倉さんや名塚さん(宮内一穂役の名塚佳織さん)も、第3期はひかげよく帰ってくると話していました。
福圓:やっぱりそう思いますよね(笑)。
――東京に友達いるのかな?と不安がってもいましたが。
福圓:いるよ!(笑)
前半で2話続けて出たので、「今回はこれでひかげ(の出番は)最後ですかね?」と聞いたら「いや、全然あるよ」と。ちょっとお休みがあると帰ってきちゃうぐらいになっていて、やっぱり実家が恋しいのかなって思いました。でも、(出番が多いのは)ありがたいことです。
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変わったディレクションや物語の変則構成も『のんのんびより』らしさ
――そんな感じで登場する機会の多いひかげですが、第3期で特に印象的だったシーンをあげるならどこですか?
福圓:夏海が迷子になってしまうシーンですね(第3話「昔からこうだった」)。過去を回想する話で、いなくなった夏海をひかげが探しに行くお話です。シナリオを読んでいてとても感動したのに、収録では「いい人になりすぎているから、いい人にしないでください」「感動臭は全部抜いてください」とダメ出しされました(笑)。「ひかげはそんないい子じゃないので、一生懸命は探さないでください」と。
「一生懸命、相手のことを思いやってください」というダメ出しはよくありますが、「そこまで出さないでください」言われたのは初めてで、面食らいました(笑)。これぞのんのんびより!
――というのは?
福圓:感動に見せかけて笑いを誘い、笑ってると泣かされる。予測出来ない感じがすごく好きです。でもリアルってそうですよね。この変則構成も『のんのんびより』っぽいなと。
――確かに、夏海とひかげの過去の話は感動する内容でしたが、その前後には「虚無僧マン」も出てきて。
福圓:「虚無僧マン」もそうですし、前回(第2期『のんのんびより りぴーと』第11話「甘えんぼうになった」)での「そすんさー」(そすんすの使い手)もそうなんですけど、悪ノリした時の謎の小芝居がすごくお気に入りです。今回も余すところなく入っていて、どれも楽しかった(笑)
――トーテムポール星人が出てきた第4話には、新キャラクターのしおりも登場しました。彼女の印象はいかがですか?
福圓:『のんのんびより』ってキャラクターも少ないし世界観も出来上がっている作品なので、新しいキャラクターは難しいんじゃないかなって思っていたけど、見事にハマっていて、とても可愛いです。キャスティングもピッタリ。
久野美咲ちゃん(しおり役)は、会った時に「大丈夫でしたかね?」と言っていたんですけど、前からずっといたのかな?と思うくらいのんのんびよりの世界に合っていてすごいなと思いました。(キャラクターが増えて)賑やかになっても、この村の優しい空気や雰囲気は変わらないのもいいですよね。
なにより、しおりちゃんは本当に可愛いくて。れんちょんが最初のシリーズよりちょっとお姉さんになっているのは、本当に見ていて微笑ましいです。
――第3期で特に気になるキャラクターをあげるなら誰でしょうか?
福圓:今回は、特に楓さんとかお姉さん組がすごく好きですね。さとりなちゃん(加賀山楓役の佐藤利奈さん)お芝居もすごく素敵。今までは比較的、れんちょん目線というか、れんちょんから見たお姉さんたちのように見えていたんですが、今回は視点が一穂や楓に寄っているような感じもあるような気がします。
――目線という意味合いでも、楽しみ方の幅が広がったのですね。
福圓:そうですね。シリーズを重ねてきて、楓さんやこのみさんといったメインメンバー以外の個性がより出るシーンが多くなったと感じています。お母さんたちもみんな素敵で、いろんなキャラクターが深堀りされていくのはすごく楽しいです。これこそシリーズが長く続いたおかげだなって。
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みんなの空気が作品を良いものにしてくれました
――福圓さんは東京出身ですから、第10話のような雪遊びの経験はあまりないですか?
福圓:したことないですね。ちょっと積もった時に、マンションの空きスペースなどの綺麗な雪をさわったりはしますけど。学生時代も電車に乗って少し遠いところに通っていたので、地元の友達があまりいなくて。雪が積もっても、友達と遊ぶという思い出がないんですよ。『のんのんびより』の子供たちのように、雪が降ったから遊ぼうぜ!みたいな経験は羨ましいです。
――お年玉のエピソードもありましたが、何歳ぐらいまでもらっていましたか?
福圓:私もひかげと同じように高校生まではもらっていた気がします。ただ、親戚は遠くに住んでいたので、もらうのは親からだけでしたけど(笑)。
――お小遣いの延長な感じですね。
福圓:そうですね。逆に、親戚の子とかにあげたことがないんですよ。れんちょんやしおりちゃんみたいな子に「はい、お年玉だよ」とあげてみたいなって思います。
――では、雪のことに限らず、田舎への憧れや思い出についてお聞かせください。
福圓:いつも思い出すのは、母の出身地である佐賀ですね。小学生の時は夏休みにいつも帰って、地元のいとこたちと駆け回って遊んでいたので、田舎というとその風景を思い出します。『のんのんびより』の世界ほど自然豊かな場所ではなかったですけど、一緒に駆け回って、近所の家にも勝手に入っちゃったりしていた、私の唯一の田舎の記憶です。
でも、『のんのんびより』のように山があって自然が溢れていて田舎道があるようなところは、旅行でしか行ったことがないので憧れます。それを作品の中で疑似体験できるのがいつも嬉しいなと思っているんですよ。
――アニメ第1期からは7年以上経ちましたが、作品全体を通して印象的だったことをお聞かせください。
福圓:劇場版で久しぶりに収録した時に思ったことがあって。ひかげや夏海がギャグをわーっと言ったら、みんな笑ってくれるんですよ。本番はもちろん笑い声を入れられないのでテストの時ではありますが、それで調子に乗ってキャストを笑わせようと面白いことをやるんですね。みんなのほわっとした空気が作品をすごく良いものにしてくれるなって、その時にすごく思ったんです。
――キャラクター、キャストが少ないからこそ、家族感や一体感があるとほかの皆さんも話していました。
福圓:そうなんです。今まで後ろに座っているみんなを笑わせたくて変なことをいっぱいやってきたから、(少人数でのアフレコでは)何をモチベーションにしてギャグシーンをやればいいのか、最初はわからなくなっちゃって(笑)。お客さんのいない劇場のような感じだったんです。
――結局はどのように?
福圓:3人で録れてはいたので、だんだんと「れんちょんを笑わせる」とか個別ターゲットになっていきました。でも、みんなに支えられて、みんながいたからこそできていたんだなと改めて思いましたね。
――ご存知の方も多いと思いますが、原作が先日完結しました。それを受けて、改めて『のんのんびより』に対する思いをお聞かせください。
福圓:なんかどこかでずっと続くような気がしていたんですよね。『のんすとっぷ』の話を聞く前も、いつかまたやるだろうと思っていて。その「またいつか」をずっと持っていたんです。でも、ことりちゃんに会った時に「原作も終わるし、(アニメも)これで最後なんですね」と言われて、急激に寂しくなりました。
――『のんのんびより』の世界がなくなるわけではないですし、できるのであれば今後やりたいことはありますか?
福圓:CDドラマでも音声作品でもなんでもいいから、また全員で集まって収録したいです。やっぱり、みんなの声を生で聴きたいなって。
あと、難しいかもしれませんが、「終わりだよ」とはあまり言われたくないです。なんとなく明日も明後日もあるかもしれないし、のんのんびよりの世界はこれからもずっとあるんだって思っていたいというか。
――そういう感じでいてくれたら嬉しいですよね。では最後に、アニメ終盤に向けてメッセージをお願いします。
福圓:第11話は私が大好きなオススメ回で、特に大人の皆さんに刺さると思いますので、ぜひ楽しみにしていただきたいです。そして、第12話はこれぞ『のんのんびより』の最終回という内容になっています。最後まで見ていただけたら嬉しいです。
[取材・文/千葉研一]