死後50年以上経ってもなお、私たちにインスピレーションを与え続けるマリリン・モンロー。その色褪せないイメージを作ったのは何だったのか? 当時の理想の女性像とはかけ離れ、「下品」とまで非難されながらも自身のスタイルを貫いた彼女が、私たちに遺したものとは?
Photo: Donaldson Collection/Michael Ochs Archives/Getty Imagesパーマヘアに、セクシーな動き、絶妙な場所に位置するホクロ。マリリン・モンローは、20世紀で最も偉大なスタイルアイコンの一人であり、大衆のイマジネーションから決して遠く逸れることはなかった。
一見相反する性質の融合体が、モンローの魅力そのもの。
Photo: Michael Ochs Archives/Getty Images彼女は、美の女神アフロディーテであると同時に、隣にいそうな少女のようでもあり、また傷つきやすく見えて、官能的でもある。この一見矛盾した彼女特有の性質は時代を超え、「グラマー」という概念を確立したのだ。
私たちをひきつける彼女の魅力や伝説は、今もなお収まる気配がない。2016年には、1962年にモンローがジョン・F・ケネディにセレナードを歌うために着たジャン・ルイ(JEAN LOUIS)のドレスが、オークションの世界記録480万ドル(約5.3億円)で競り落とされた。
Photo: Bettmann/Getty Imagesシドニーのオペラハウスや、あるいはモナリザのように、彼女のイメージは私たちにとって馴染み深く、どこにでも目につくものになってしまった。その圧倒的な存在感が原因で彼女が「スタイル」というものにどれだけ貢献してきたのか、またどれだけそれに精通していたのか、ということに目を向けることを困難にしている。
セックスシンボルとしてのイメージ作るのに欠かせない、ファッションとメイク。
Photo: Ed Feingersh/Michael Ochs Archives/Getty Imagesわずか16年にわたるキャリアの中で、モンローは女優として、プロデューサーとして、歌手として、ビジネスウーマンとして、野心的な知識人として、そしてとりわけセックスシンボルとして、名声を確立した。1950年代のハリウッドで理想とされていた、内気で控え目な女性像からモンローは遠くかけ離れていた。彼女は「性の女神」としてのイメージを不朽のものとするためにファッションやメイクをツールとして巧みに操っていた。例えば、敢えて乳首を強調するために衣服の胸もとにボタンを縫い付けたり、唇を半開きにしたり……。数々の写真に収められたこのポーズは「ルック」として人々に広く認知されるようになった。
「モンローは私が出会ったなかで、全注意を自分のヒップに向けるただひとりの女性だ」
Photo: Ed Feingersh/Michael Ochs Archives/Getty Imagesデザイナーのビル・ブラスは、自叙伝でモンローのアパートで仮縫いしたときのことに触れている。「モンローは私が出会ったなかで、全注意を自分のヒップに向けるただひとりの女性だ」と彼は思い起こした。「縫い目がそこでどうあるべきかを正確に熟知していた」
Photo: Sunset Boulevard/Corbis via Getty Images映画『紳士は金髪がお好き』(1953)のためにウィリアム・トラヴィーラがデザインしたプリーツの入ったゴールドラメのドレスは、検閲官に露出が過ぎると判断され、映画ではほんの少しの間しか見られない。しかしモンローは、ビバリーヒルズホテルでの1953年フォトプレー・アワードの受賞式でそのドレスを着用することを譲らなかった。
私たちの脳裏に焼きつく、スクリーンの中のモンローファッション。
Photo: Bettmann/Getty Imagesモンローのスタイルで最もよく知られているものは、ほとんどが映画のスチール写真からだろう。『7年目の浮気』(1955)の大きくうねる白いホルターネックのドレス、『紳士は金髪がお好き』(1953)で着たピンクのダッチスサテンのトップと、それにマッチしたグローブ、そして『お熱いのがお好き』(1959)の薄い生地のビーズ付きガウン(それは驚くほどシアーで、妊娠中の彼女にはタイトすぎた!)などは、私たちのイマジネーションに焼き付いている。
Photo: Hulton Archive/Getty Imagesモンローは、映画におけるセクシュアリティというひとつのパラダイムを提供した。しかし、女性がいかに着飾るかということに本当にインパクトを与えたのは、彼女のオフスクリーンファッションだ。曲線を見せるために丁寧にダーツを入れたハイウェストのジーンズ、シャキッとした白いシャツ、ポロネック、ペンシルスカート、くびれた黒のミディドレス、ベルト付きのキャメルコート、そしてキャットアイサングラスなどがモンローのワードローブにはあった。
Photo: Evening Standard/Getty Images1950年代には彼女が身に着けていたものは現代ではスタンダードとなっているが、当時はリスキーとされていた。女優ジョーン・クロフォードはモンローの衣裳を「下品」と非難した。しかし後になってこそ言えることではあるが、今見れば、彼女のファッションへのアプローチは全く別のものにみえる。簡単にいえば、彼女がファッションに残したレガシーは「女性らしさを独自に攻略しパワフルにしたこと」だ。そして、それは今でも同じように通用する。
Photos: Getty Images Text: Libby Banks
CELEBRITY / StyleHappy Birthday マリリン・モンロー! 元祖セックスシンボルのスター性を分析。ブロンドの巻き毛、赤い唇、誰にも真似できないあのホクロ。死後数十年たってなお、マリリン・モンローは映画界で最も強い印象を与えるアイコンであり続けている。そんな彼女がスポットライトを浴びていた黄金の瞬間をスナップ写真で振り返る。