4月21日に94回目の誕生日を迎えたエリザベス女王と英ロイヤルファミリーが所有する、バッキンガム宮殿とウィンザー城は、ルイ16世が所有していた陶器や金箔に彩られたグランドピアノなど、数多くの歴史的な芸術作品がインテリアとして飾られている。美しいだけでなく、来客をもてなすための実用性も兼ね備えてた宮殿の内装から、ロイヤルファミリーの歴史を読み解こう。
Photo: Getty Imagesエリザベス女王とイギリス王室が所有するバッキンガム宮殿とウィンザー城の室内は、最高級のシルクタペストリーやテキスタイルが施され、歴史的な調度品がインテリアとして飾られている。壁にはレンブラント・ファン・レインやピーテル・パウル・ルーベンスによる貴重なアート作品が掛けられ、その空間はまるで美術館のようだ。この優美な内装は王族代々に受け継がれてきた歴史があるからこそ実現された。一貫して美しい内装が保たれているが、それぞれ異なるインテリア様式に影響を受けている。ロンドン中心部に位置するバッキンガム宮殿のインテリアは、ヴィクトリアン、リージェンシー、そしてエドワーディアン様式に従ったインテリアだ。また、数々の土地と物件を所有する王室だが、中でもウィンザー城は約1000部屋を誇る、世界最大級の邸宅である。圧巻のインテリアを巡ることで、部屋の用途とその背景にある歴史を感じ取ることができる。
「バッキンガム宮殿は驚きのある空間です。ラグジュアリーな調度品で彩られた室内は、招待客をもてなすための実用性も兼ね備えているのです。すべてのインテリアには意味が隠されていて、その背景を知ることで部屋の用途が理解できる仕組みとなっています」とUS版『VOGUE』インターナショナル・エディター・アット・ラージのヘイミッシュ・ボウルズは語る。
これら邸宅には、一般公開されている部屋もあるが、現在は新型コロナウイルスの影響により、すべてが閉鎖されている。再び公開される日を待ちわびながら、今は写真でその煌びやかな空間を楽しもう。
1844年の間 ── バッキンガム宮殿。
「1844年の間」にて、名誉デイムの称号を授与されたアンジェリーナ・ジョリーとエリザベス女王。2018年撮影。Photo: Getty Images「1844年の間」はバッキンガム宮殿で最も重要な部屋のひとつで、エリザベス女王がオバマ一家や中国の習近平主席など、来賓を迎える際に使用している。その空間はジョージ5世のお気に入りだった家具メーカー、モレル&セドンによるシルクで布張りされたソファやチェア、18世紀のデザイナーのデイビッド・ロトゲンのネオクラシックな机、そしてクジャク石のキャンドルスタンドで飾られている。この部屋は一般公開されていないが、エリザベス女王と著名招待客の写真で、中の様子を垣間見れる。
ホワイト・ドローイングルーム ──バッキンガム宮殿
Photo: AFLOエリザベス女王の毎年のクリスマスメッセージは、この煌びやかな「ホワイト・ドローイングルーム」で撮影されている。王家のパーティー会場としても使用されるこの部屋は、エントランスが特徴的だ。鏡の裏に扉が隠されており、ここからゲストたちが室内に招かれる仕組みなのだ。白い壁にギルディングのアートワークが施されたこの一室で最も高価なインテリアは、フランスの楽器メーカーのセバスチャン・エラードがヴィクトリア女王に送った、金箔に彩られたグランドピアノだ。暖炉の上にはアレクサンドラ女王の肖像画が掛かかっており、描かれた王冠には小さなダイヤモンドが散りばめられている。
玉座の間(スローンルーム) ── バッキンガム宮殿
Photo: AFLOバッキンガム宮殿の建築主任を務めたジョン・ナッシュは、劇場設計の経験があった。それが最も表現されているのが、「王座の間(スローンルーム)」だ。ロンドンの劇場街であるウェストエンドの展開的な赤のカーテンが特徴的で、壇上に置かれた2脚の王座は、チェアーズ・オブ・エステートと呼ばれる。1953年のエリザベス2世の戴冠式にも使用された王座だが、その際は1脚しかなかった。その後にフィリップ殿下の椅子として追加で作られたのだ。
クリムゾン・ドローイングルーム ── ウィンザー城
Photo: Getty Images「クリムゾン・ドローイングルーム」の名はその通り、鮮やかな真紅色に彩られた空間だ。ゴールドをアクセントにした、このリュクスな内装をデザインしたのは、ジョージ4世に仕えていたインテリア業者のモレル&セドン。この部屋は1992年のウィンザー城の火事で焼失した後、完全に修復された。
グリーン・ドローイングルーム ── ウィンザー城
Photo: Getty Images「グリーン・ドローイングルーム」は、2018年のヘンリー王子とメーガン妃の結婚写真の撮影に選ばれた場所だ。クリムゾン・ドローイングルームと同様に、モレル&セドンの家具コレクションとともに、かつてフランスのルイ16世の所有であったセーヴル焼の陶器の皿も飾られている。
グランド・レセプション・ルーム ── ウィンザー城
Photo: Getty Images最後は舞踏会やさまざまなイベントが開かれる、「グランド・レセプション・ルーム」。ここには、ギリシャ神話のイアーソーンとメーデイアの物語を綴った6枚のタペストリーが壁にかけられている。これは歴史的なパリの工芸メーカーのゴブリンズが製作したもので、同じくフランス製のブロンズ像も室内に飾られている。
Text: Elise Taylor
From VOGUE.COM
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