いよいよ2月9日(現地時間)に迫る第92回アカデミー賞の授賞式を前に、過去の受賞者たちの語った心に残るスピーチを振り返る。1人目は、映画『風と共に去りぬ』(39)で助演女優賞を受賞したハティ・マクダニエルだ。
ハティ・マクダニエル(左)とプレゼンターのフェイ・ベインター(右)。Photo: AP/AFLO1940年、映画『風と共に去りぬ』(39)で助演女優賞に輝き、アフリカ系俳優として初めてのオスカー受賞を果たしたハティ・マクダニエル。プレゼンターで前年の受賞者のフェイ・ベインターから紹介を受けて登壇したハティは、「私の人生で最も幸せな瞬間です。私を選んでくださった1人1人の優しさに感謝いたします」と喜びを語った後、「とても、とても謙虚な気持ちになりました。そしてこれを、今後の私の行動全ての指針としていきます。私の人種と映画界に恥じない存在であり続けたいと、心から望みます。胸がいっぱいで、自分の気持ちが伝えられないほどです」と言うと、ハンカチで目頭を押さえながらステージを降りた。
当時のアメリカは人種隔離政策が施行され、授賞式が開催されたアンバサダー・ホテルは通常、黒人の出入りは厳禁。この日だけ特別に入場が許されたが、ハティはヴィヴィアン・リーやクラーク・ゲーブルたちと同じ『風と共に去りぬ』チームのテーブルにつかせてもらえず、壁際のテーブルに同伴者と彼女のエージェント(白人)の3人で座った。
『風と共に去りぬ』(39)で共演したヴィヴィアン・リーとハティ・マクダニエル。Photo: Silver Screen Collection/Getty Images現在では考えられない扱いを受けながら、スピーチの中で自らのルーツへのプライドを静かに表明した。 彼女が切り開いた道に続き、再びアフリカ系の女優がオスカー受賞を果たしたのは半世紀以上経った1990年。映画『ゴースト/ニューヨークの幻』(90)でウーピー・ゴールドバーグが、同じく助演女優賞を受賞した。
Text: Yuki Tominaga