映画『ゴーストバスターズ/アフターライフ』では、1980年代に一世を風靡した『ゴーストバスターズ』シリーズへのオマージュが至るところで見られるが、なかでも本編終了後に登場した2つのオマケ映像では、往年ファンにとって胸アツな展開が描かれた。
本記事では、この2つのオマケ映像を徹底解説。オリジナル版に出演した“あの人物”の復活から、何やら意味深な伏線、そして今後のフランチャイズ展開の可能性まで、ポストクレジット・シーンに込められた思いを紐解いていきたい。
この記事には、『ゴーストバスターズ/アフターライフ』のネタバレが含まれています。必ず本編を鑑賞後にお楽しみください。
この記事には、『ゴーストバスターズ/アフターライフ』のネタバレが含まれています。必ず本編を鑑賞後にお楽しみください。
2394264 - GHOSTBSUTERS: AFTERLIFE
ベンクマン&ディナのその後
1つ目の映像は、シリーズのテーマ曲「Ghostbusters」と共に製作陣&メインキャストのクレジットが表示され、なぜか本編には出演していなかったシガニー・ウィーバーの名前がスクリーン上に現れた直後にやってきた。シガニー・ウィーバーの名前が表示されたことを疑問に思う暇もなく、その理由はすぐに判明する。
冒頭、3本の波線が記された大きめのカードと共に、女性が「これは何だか当ててみて」と問いかける。カメラが左にパンしていくと、そこには本編でも活躍したビル・マーレイ演じるピーター・ベンクマンの姿。目を閉じ、集中している様子のベンクマンは、思考をめぐらした結果、「線。2つ…いや、3つの……波線だ」と回答し、見事正解する。
往年のファンの中には、この時点でカードを手に持つ女性の正体を察した方もいたはず。その女性は、1984年の映画『ゴーストバスターズ』の冒頭、まだ大学に身を置いていた若かりし頃のベンクマンが口説こうとしていたブロンドの女子学生……ではなく、ゴーストバスターズに初めて相談しに来たクライアント第1号のディナ・バレットだった。シリーズ2作でディナを演じたシガニー・ウィーバーが33年ぶりの再演をこのオマケ映像で果たしたのだ。封切り前の2021年9月、ウィーバーは本作についてコメントを求められた際、「誠意がこもっていて、とても面白くて、チャーミングです」と話しながら、「誰もが驚かされるでしょう」と意味深な発言を残してもいた。
『ゴーストバスターズ』ではセクハラ発言を頻発させていた、お調子者のベンクマン。依頼しにやってきたディナを一目見るや、さっそくアプローチしていた。ベンクマンには最初こそ戸惑いと苛立ちを覚えていたディナだったが、次第に心を許すようになり、最終的に2人は恋人となった。
続く、舞台が5年後の『ゴーストバスターズ2』(1989)では、状況が様変わり。ディナとベンクマンは気まずい別れ方をしたらしく、2人はそれぞれ別の道を進んでいた。ベンクマンと別れてからディナは結婚。その後すぐに離婚し、美術館で勤めながらオスカーという小さな息子のシングルマザーになっていた。一方ベンクマンは、イゴン・スペングラー博士の言葉を借りれば「ついにイカれてしまった」ようで、低視聴率のテレビ番組の司会者へと転身していたのだった。
再びゴーストバスターズに案件を依頼したディナと再会したベンクマンは、「何で僕を振ったんだ」と別れた理由をディナに押し付けようとするなど、未練たらたら。しかし、ベンクマンはディナをデートに誘い、さらには復活した大魔王の生贄に捧げられそうになったオスカーを救出する。こうしてベンクマンとディナは再び唇を重ね、かつての関係を取り戻したのだ。
どうやらベンクマンとディナは復縁したようだが、その関係の続きはこれまで明かされてこなかった。しかし、『アフターライフ』のオマケ映像では、2人が遂に結婚していたことが示唆されている。カードを持つディナの左手の薬指には、ゴールドのリング。そして目を凝らしてみると、ベンクマンの左手薬指にも同じリングがはめられているではないか。これは2人の恋愛を見守ってきたファンにとって嬉しい後日譚となっただろう。
ちなみに、ベンクマンとディナが2人で遊んでいたのは、上述の通り『ゴーストバスターズ』で女子学生を口説くためにベンクマンが用いていたESP(超感覚的知覚)と呼ばれるカードを用いた実験だ。ズルをしたベンクマンは、ディナからの制裁として電流をビリビリと食らっている。ここからは、2人の間にあるパワーバランスが分かるというものだ。
この記事には、『ゴーストバスターズ/アフターライフ』のネタバレが含まれています。必ず本編を鑑賞後にお楽しみください。
この記事には、『ゴーストバスターズ/アフターライフ』のネタバレが含まれています。必ず本編を鑑賞後にお楽しみください。
ウィンストンが語るレガシー、シリーズ継続の可能性
ディナとベンクマンのその後を知れてホッコリしながら、フィービー役のマッケナ・グレイスが歌うエンドロール曲「Haunted House」と共に余韻に浸り、席を立とうかと思いきや、エンドロール終了後には2つ目の映像が登場した。どうやらジャニーンとイゴン・スペングラー博士の会話を映したオリジナル版『ゴーストバスターズ』の劇中シーンの一つのようだが、何だか観たことあるようでないような気もする。
実はこの映像、1984年の『ゴーストバスターズ』からカットされた未公開シーン。ここでジャニーンは、「私のラッキーコインなの」と言って、1964年に開催されたニューヨーク万国博覧会の記念メダルをイゴンに渡す。これにイゴンは「受け取るべきじゃないよ。もう返ってこないかもしれないよ」と断ろうとするも、ジャニーンは「とにかくもらって。家にもう一つあるからいいの」と答える。一見、何の展開も無さそうだが、このやり取りは次の場面に繋がっていく。
当時から数十年の時が経過した『ゴーストバスターズ/アフターライフ』で、ジャニーンはイゴンの財産管理人を務めていた。2人がどれだけ連絡を取り合っていたのかは分からないが、歳を重ねたジャニーンがイゴンに渡したおそろいの“ラッキー・コイン”を手に握っていたことから、ゴーストバスターズの面々が疎遠になった後も2人の関係は途切れていなかったことが察される。
すると、ビジネスに成功して巨万の富を築いていたウィンストンが、「イゴンは脳、レイは心臓、ピーターはただただクールだった」とジャニーンに語りかけ、過去に浸っている姿が映し出される。「それじゃあ、あなたは?」とジャニーンから聞かれると、「僕はセックスアピールさ」とジョークで返すウィンストン。そこでジャニーンは「自分の力でここまで来たんだね」と感慨深そうに問いかける。
レイが開業したオカルト書店の資金も賄っていたというウィンストンは、「自分のためにやったわけじゃない。子どものためにやったんだ。あと、“何にでもなれるんだ”ということの手本になりたかったんだ」と話す。次の場面では、ゴーストバスターズのかつてのオフィスに改造車のECTO-1を入庫するウィンストンの姿が映し出され、2つ目の映像は「危険(Danger)」と記されたエネルギー装置にカメラがフォーカスして締めくくられた。
実はこの映像では、『アフターライフ』以降も『ゴーストバスターズ』フランチャイズが継続されていく可能性が提示されている。注目すべきは、ウィンストンの「“何にでもなれるんだ”ということの手本になりたかった」というセリフと、最後にフォーカスされたエネルギー装置の2つ。「何にでもなれるんだ」という言葉は、“『ゴーストバスターズ』の可能性は無限大だ”とも解釈でき、さらにこれを後押しするかのようにエネルギー装置のボタンが点滅している。このエネルギー装置は、かつてニューヨークに大量のゴーストが放出されたきっかけとして知られている。つまり、ゴーストたちの再到来が示唆されていると考えられるのである。
これはあくまで考察にすぎないものの、実際のところ制作陣やキャストもフランチャイズ継続に前向きでいるようだ。オリジナル2作を手掛けた父親のアイヴァン・ライトマン監督からレガシーを受け継ぎ、『アフターライフ』でメガホンを取ったジェイソン・ライトマン監督は、『アフターライフ』に込めた思いをこう語っていた。
「私たちは、土台を作り、1984年に作られたオリジナルストーリーを蘇らせる必要がありました。そうすることで、他の物語が花を咲かせることができるかもしれない。私は怖い映画も観たいですし、面白い映画も観てみたい。『ゴーストバスターズ』には進むべき場所がたくさんあるんです。それを描いたのが『アフターライフ』です。世代同士がある意味で償い合って、一つの物語を終わらせることもあれば、他の物語を始めることにもなるんです。」
こう語るライトマン監督と、脚本を務めたギル・キーナンは、本国アメリカで『アフターライフ』が公開されてすぐに、製作・配給の米ソニー・ピクチャーズとプロデューサーとしての包括契約を交わしている。2人が今後どのような作品を手掛けていくのかは定かでないが、この契約締結は『ゴーストバスターズ』フランチャイズを継続させていくことの意思表示なのかもしれない。さらにライトマン監督は、別のインタビューの場で、『JUNO/ジュノ』(2007)や『ヤング≒アダルト』(2011)などでタッグを組んだ脚本家のディアブロ・コーディと、シリーズの将来的な可能性について話し合ったことを明かしていた。
『ゴーストバスターズ』の継続を望むのはライトマン監督だけではない。シリーズの原案・脚本を担当し、レイモンド・スタンツ博士役を演じたダン・エイクロイドも「ぜひ死にたいんです。ビル(・マーレイ、ピーター・ベンクマン博士役)や僕は、次で殺されるべきです」「生きているゴーストバスターズたちを4作目、5作目、6作目でどんどん使ってしまえば良いんです」と続編製作に意欲的なコメントを出している。
ライトマン監督の言う通り、『アフターライフ』は『ゴーストバスターズ』シリーズの新機軸として、従来のSFコメディに加え、ホラー/スリラー要素が増強されていた。さらにメインキャストは、「ストレンジャー・シングス 未知の世界」(2017-)のフィン・ウルフハードや『gifted/ギフテッド』(2017)のマッケナ・グレイス、『アントマン』シリーズのポール・ラッドをはじめとする旬の俳優たちで構成され、オリジナル版を知らない世代も親しみやすい仕上がりが印象的だった。こうした試みも全て、『アフターライフ』に始まる『ゴーストバスターズ』新時代の開幕に向けた布石なのかもしれない。
Source: ET Canada(参照:Movie Web),Gizmodo,Deadline,Happy Sad Confused