1980年代ごろからFRからFFヘの移行がはじまった
乗用車では2輪駆動の場合、FRというのはセダンもしくはスポーツカーに残っている程度で、ほぼFFだ。SUVにしても、FFベースで4WDにするのが基本だったりする。FFは今で言うところのコンパクトカーである小型車を中心にして始まったもの。それまでは小さくてもFRもしくはRRが基本だった。
FRからFFに本格的に移行するのは1980年代のことで、1980年に登場したマツダ5代目ファミリアは大ヒットとなったが、別名FFファミリアと呼ばれていて、FF化は大きなトピックスだった。また1983年にはトヨタAE86、つまりハチロクが登場しているが、こちらはご存じのようにFR。ただし、本来のベースであるカローラ/スプリンターはFF化されていて、過渡期だったことがわかる。
FRの利点をまずあげると、構造的にはシンプルで、ボンネット内にエンジン、フロア下にミッション、そしてリヤにデフと、各セクションをバラバラに置くことができる。つまりドライブトレインの配置に無理がない。さらにアクセルを踏んだときに後ろから押す感じは自然で、今でもセダンにFRを採用する車種が多いのはこのため。RRも含めての話しにはなるが、操舵(前輪)と駆動(後輪)なので、コーナーでも違和感はない。このコーナーでの違和感というのが、FFが当初は普及しなかった理由となる。
FFのメリットはエンジンとミッションをひとつにしてフロントに置くことで、操舵と駆動をすべて前輪で行えることにある。スペースの限られた小型車では、フロア下にあるミッションやプロペラシャフト、デフは車内空間を圧迫するため、フロントですべて完結するFFはとても画期的だったし、有利となる。本格的なFF2ボックスとして登場したフォルクスワーゲンの初代ゴルフが世界的ヒットとなり、小型車のベンチマークとなったことでもわかる。
最近ではFF独特の挙動やクセは抑えられている
ただ、問題は操舵と駆動を一緒にする点で、まず大きな問題はトルクステアと呼ばれる現象で、ハンドルを切っていないのに切れてしまったり、コーナーの途中でアクセルを踏むと暴れたりなど、不安定な状況になってしまう。これは左右のドライブシャフトの長さが異なるためで、ボンネット内の配置に制限が大きくなるFFの場合、とくにハンデとなる。
これはFFが普及した1980年でも顕著で、トヨタ・スターレットターボなどかなり暴れたし、雨の日の高速道路では横っ飛び的な挙動が出たりもした。ただ、これを抑え込みながら走るのが、楽しくもあったのだが。
構造的にもFF化には課題があって、背景にはあるのはやはり操舵と駆動を同じ軸でするという点で、ステアリングを切るとドライブシャフトのデフ側とハブ側で伝達力に差が出てしまうのが問題だった。
具体的にはハブのところにあるジョイントが問題で、1970年ごろのFFだと一般的なタイプだったので、伝達力に差が出るだけでなく、回転ムラが出たり、耐久性も落ちることから、結果的にフロントのハブまわりにガタが出るなどした。これを解消したのがその名も等速ジョイント(CVJ)と呼ばれるもので、ハンドルを切った状態でも、スムースに駆動力を伝達できるようになり、耐久性も高まった。これにより、問題は解決され、1980年代には低価格化も進んでFFが普及する後押しになった。
現在では紹介したようなFF独自のクセや挙動はかなり抑え込まれていて、採用車種やジャンルは幅広いものになっている。