タイムラグのない過給が胸のすく走りを見せた
吸入した空気を圧縮すれば、排気量以上の空気をシリンダーに送り込むことができ、燃やせる燃料の量も増えるから出力を高めることが可能だ。吸気を圧縮するにはポンプを使うが、その動力源にエンジンの回転を利用しているのがスーパーチャージャーである。ターボより低回転からパワーとトルクを発生し、タイムラグもほとんど感じない。そんなスーパーチャージャーを搭載した国産車を紹介していこう。
1)トヨタ・クラウン(GS120系)
トヨタは7代目クラウンのGS120系のときにルーツ式スーパーチャージャーを装着し、1985年9月に送り出した。これは日本で初めてスーパーチャージャーを装着した乗用車である。ベースエンジンは2リッターの直6DOHC4バルブ方式の1G-GEU型だ。これにスーパーチャージャーを装着したのが1G-GZE型エンジンで、動力の伝達には電磁クラッチを採用している。低回転から分厚いトルクを発生し、気持ちいい加速を見せつけた。
2)トヨタ・マークII3兄弟(X80系)
クラウンはレギュラーガソリンで160馬力/21.0kg-mのスペックを達成している。だが、X80系のマークIIではプレミアムガソリン仕様で170馬力/23.0kg-mを発生。軽量だったこともあり、さらに痛快な加速を披露している。振動とノイズはちょっと大きめだったが、加速フィールはよかった。(写真はクレスタ)
3)トヨタMR2(AW11)
1986年夏にはスポーツモデルにもスーパーチャージャーを採用している。搭載したのは日本初のミッドシップ・スポーツカーとして登場し、話題となった初代MR2の後期モデルだ。
AW11の型式を持つ初代MR2に与えられたのは、1.6リッターの4A-GE型直4DOHC4バルブエンジンに、スーパーチャージャーを装着した4A-GZE型である。4A-GE型は低回転のトルクが細く、扱いにくかった。この弱点をスーパーチャージャーでカバーし、軽やかな加速を手に入れている。だが、このMR2はレギュラーガソリン仕様だった。
4)トヨタ・カローラ・レビン/スプリンター・トレノ(AE92型)
AE92型レビンとトレノは、1989年5月に後期モデルを投入している。このとき、プレミアムガソリンを使って圧縮比を8.9まで高めたのだ。スペックは165馬力/21.0kg-mになり、最終型では170馬力を絞り出す。軽量ボディだから刺激的な加速を見せた。
5)トヨタ・エスティマ
1990年代に入ると、アンダーフロア・ミッドシップの個性派ミニバン、エスティマにスーパーチャージャーを搭載。車重が重く、荷物をたくさん積んだり、多人数乗車の機会が多いミニバンは、性能的に物足りないクルマが多い。このウイークポイントをスーパーチャージャーの助けを借りて払拭した。1994年にフェイスリフトを行ったが、このときに2.4リッターの2TZ-FZE型直4DOHCスーパーチャージャーを主役としている。過給機の追加により、走りの実力は飛躍的にアップした。(写真は同型車)
6)三菱デボネアV
飛行機メーカーを母体とする三菱は、早い時期から過給機に着目している。フルラインターボを標榜したが、スーパーチャージャーにも目を向け、1987年にフラッグシップのデボネアVにスーパーチャージャー仕様を加えた。エンジンは2リッターの6G71型V6SOHCだ。
スペックは150馬力/22.5kg-mと控えめだが、2リッターだと重いボディを引っ張るのは大変である。そこで低回転からパワーとトルクを発生し、俊敏な加速を引き出せるスーパーチャージャー仕様を設定したのだ。当時は3ナンバー車の維持費が高かったのだが、スーパーチャージャーの助けを借りて、5ナンバー車で3ナンバー車並みの動力性能を手に入れたのである。
7)三菱ミニキャブ/ブラボー
スーパーチャージャーは、排気量の小さいクルマにも最適だ。三菱は軽トラックのミニキャブやブラボーにスーパーチャージャーを搭載し、元気な走りを取り戻した。
8)スバル・レックス/サンバー
1988年、軽自動車のレックスにスーパーチャージャーを装着。それまでレックスのスポーツモデルはターボを搭載していた。が、タイムラグのないスーパーチャージャーのほうが有利だと考え、ターボを廃してスーパーチャージャーに切り替えたのである。後には軽商用トラックのサンバーなどにもスーパーチャージャーを拡大採用した。
9)スバル・ヴィヴィオ
その集大成がレックスの後継となるヴィヴィオだ。1992年3月に誕生したが、658ccのEN07型直4DOHC4バルブエンジンに、スーパーチャージャーを組み合わせたEN07X型を送り出した。驚かされたのは、軽自動車なのにプレミアムガソリン仕様だったことである。64馬力/9.0kg-mのスペックだが、低回転でパンチがあるだけでなくレッドゾーンは9500回転までストレスなく回った。フルタイム4WDでないとパワーを持て余してしまうほど、刺激的なじゃじゃ馬だったが、運転するのが楽しい。
10)マツダ・カペラ
スーパーチャージャーを活用した特異な例がマツダだ。1987年5月にカペラはモデルチェンジしたが、このときに異色のパワーユニットを量産化している。(写真は同型車)
それがコンプレックス・ディーゼルエンジンだ。マツダではプレッシャーウェーブ・スーパーチャージャーと呼んでいた2リッターのRF型直4SOHCディーゼルで、ワゴンのカペラカーゴを中心に好評を博した。低回転から気持ちよく加速し、荷物満載でも登坂路を苦にしない。
11)マツダ・ユーノス800
そして1993年秋にプレミアムセダンのユーノス800を発売する。注目のパワーユニットは、量産車として世界初となるミラーサイクルエンジンだ。2.3リッターのKJ-ZEM型V6DOHCにIHI製のリシュロム式スーパーチャージャーを組み合わせ、3リッターエンジン並みの動力性能(220馬力/30.0kg-m)を実現している。しかも熱効率を高めているから、燃費は2リッターエンジンと遜色ない。