アップルが5月末に公表した2020年のサプライヤートップ200に中国メーカー12社が新たにランク入りし、中国メーカーが全体に占める割合は19年の52%から57%に上昇した。アップルが中国のサプライチェーンへの依存を深めたとみる人は多いが実際にはどうなのか。
アップルの主力製品はiPhone、MacBook、iPad、AirPods、Apple Watchだ。これらの製品を分解すると、アップルにとって重要なサプライヤーはどこか見えてくる。
01.チップ、ディスプレイ、メモリーの三大コア部品は米日韓が握る
ガジェットの分解レポートで有名な「iFixit」がiPhone 12 Pro Maxを実際に分解してみると、中国のサプライヤーは唯一「恵州徳賽電池(DESAY)」が入っているものの、それ以外は米国、韓国、日本などの企業が主で、米国のサプライヤーが絶対的な地位を占めていることが分かった。
▲iPhone 12 Pro Maxマザーボード 画像提供:iFixit
分解写真では、アップルが自主設計した大きなA14チップがひときわ目を引く。チップ内には「Micron」の6GB LPDDR4Xメモリが内蔵され、アップル開発のA14パワーマネジメントICもフラグシップ機に使用されている。
ニュースサイト「Techinsight」が発表したiPhone 11 Pro Maxのコストに関するレポートによると、スマホでコストが最も高い部品はプロセッサー、ベースバンドチップ、カメラやディスプレイのモジュール、メモリー、非電子部品、高周波部分品であり、コスト全体の80%近くを占める。
▲iPhone 11 Pro Maxの部品のコスト内訳 画像提供:Techinsights
iPhone 12 Pro MaxのA14チップはアップル製、X55ベースバンドとRF高周波モジュールはクアルコム製、スマホの3つのカメラはLG製、ディスプレイはサムスンとLGの2社が提供し、メモリーはMicron、フラッシュメモリはキオクシア(旧東芝メモリ)製だ。
iPhoneの重要なサプライヤーは韓国や日本といった政治的リスクのない国が担っている。
▲データ提供:Electronics360、Techinsights、iFixit
iPhoneのマザーボードにすきまなく配列されている部品の中に、ドライバICがある。これらのチップのコストは高くはないが、パワーマネジメントIC、ディスプレイドライバIC、オーディオデコーダIC、VCSELレーザードライバなど、どれも極めて重要な部品だ。
これらの部品も、テキサス・インスツルメンツ、スイスのSTマイクロエレクトロニクス、オランダNXPセミコンダクターズN.V.などが請け負っている。
この状況はiPhoneに限らず、MacBookとiPadも同様だ。ここで、最新モデルのMacBook Air M1とミニLEDディスプレイを搭載しているiPad Pro 2021を見てみよう。
▲データ提供:Electronics360、Techinsights、iFixit
この2つの製品には、中国サプライヤーの部品は見られない。プロセッサーはすべてアップルが自社開発したM1チップが使用され、メモリー、フラッシュメモリは基本的にMicron、SKハイニックス、キオクシアなど有名な米日韓の企業が握っている。
▲MacBook Airマザーボード上のM1チップ 画像提供:iFixit
各種パワーマネジメントチップ、ドライバICは、テキサス・インスツルメンツ、STマイクロエレクトロニクス、ブロードコムなどの米国メーカーが常連のサプライヤーだ。台湾の「環旭電子(USI)」のWiFi、ブルートゥースモジュールの技術もアップルの2つのコア製品で使われている。
▲iPad Pro 2021のマザーボード 画像提供:iFixit
最新のミニLED技術が使われているため、ディスプレイ技術を保有する多くの台湾企業がアップルのサプライチェーンで一層重要になっていることに注目したい。
台湾はミニLEDチップの加工技術が優れており、アップルのミニLEDディスプレイのサプライチェーンで極めて重要な役割を担う。2年以内に台湾の表面技術の地位が揺らぐことはないと予想する業界関係者もいる。
また、アップルのスマホやタブレットのカメラは基本的にソニーとLGが提供している。ソニーはこの分野に強みがある。
▲iPhone 12 Pro Maxのメインカメラを解体 画像提供:iFixit
Apple Watch、AirPodsなどに使用される部品、特にチップ、ディスプレイ、メモリーの三大分野は基本的に米日韓企業の天下だ。ごく一部のマイク、スピーカーなど音響部品は中国の「歌爾声学(Goertek)」も提供している。
アップルのiPhone、iPad、MacBookの三大製品に対して、コア部品を提供している中国メーカーは1社もない。
02.「組み立て工場」に未来はあるか
このように冷静に調べてみると、アップルがこのほど更新したサプライヤートップ200のリストも額面通りに見てはならないことが分かる。
新たに加わった36社のサプライヤーのうち中国企業は12社あったが、これらの企業の主要業務は素材、機構部品に集中していた。
一方で、新たに加わった米国のサプライヤーは半導体関連が主で、日本企業は素材関連とはいえ先端素材の企業だ。韓国はアップルのサプライチェーンでの地位が一層高まり、RFプリント基板も韓国製だ。
▲画像提供:エレクトロニクス関連雑誌「ESM China」
現在、台湾「フォックスコン(Foxconn Technology Group、富士康科技集団)」はiPhoneの8割近くの生産を担う組み立て企業だ。一方、中国の「立訊精密(ラックスシェア)」もAirPodsイヤホンのOEMで経験と技術を積み、iPhone組み立てを請け負うようになった。
アップルのスマホは中国なしには生産できないが、それは中国のOEMが必要なのであって、コア部品ではない。
中国ディスプレイ製造大手「BOE(京東方)」がディスプレイ分野に食い込んだことは中国企業にとってアップルのコア部品での快挙ではあるが、製品がどう評価されるかは、市場の検証を待たねばならない。
作者:WeChat公式アカウント「智东西(ID:zhidxcom)」雲鵬
(翻訳・二胡)