昨年、このマツコデラックスさんのポスターをあちこちの駅で見るたびに「行かねば…」という気持ちに駆られていたマンモス展〜その「生命」は蘇るのか〜@日本科学未来館。
東京開催はとっくに終わっていましたが、ついに福岡での最終日も迎え、完全に終了したようですね。おつかれさまでした…❣️
東京会期中に伺い、めーっちゃくちゃ面白かったので、今回は改めてその内容を振り返り、まとめたいと思います!
行けなかった方も、生命科学という面白いテーマについて知るきっかけになれば…と思いますよ
2005年に日本で開催された万国博覧会“愛・地球博”で人々を熱狂させた冷凍マンモス「ユカギルマンモス」や近年発掘された貴重な冷凍標本などを展示していた、マンモス展〜その「生命」は蘇るのか〜。展示品の中には世界初公開のものも数多くあり、史上最大級のマンモス展となっていました。
生命はどこからきて、どこへゆくのか。
我々は発展のために何を選択するのか。
展示物や研究紹介による情報提示とともに、この展示は多くの疑問を投げかけてきました。
さて、展示室に入った瞬間、目に飛び込んでくるのはこんな一文です。
--いつの時代もマンモスは人類の夢であり続ける。
誰も見たことがなければ、なぜ絶滅したのか、どのように生きていたのかも知らない生物。なのに、どうしてこうも私たちはマンモスに心惹かれてしまうのでしょうか。
過去の人類にとって、マンモスは恐竜や原生生物のように太古のロマンへと私たちを誘う古生物学としての夢の対象でした。
しかし時代が進んだ今、マンモス研究は古生物学にとどまらず、新たな地球と人類の未来をつむぐ可能性を秘めた先端生命科学上の夢にもなっています。
絶滅してなお時を超えて、様々な問いと夢を人類にもたらしつづけるマンモス。本展のメインメッセージが、この一文には込められていると感じました。
展示品は、永久凍土から発掘された子ケナガマンモスの標本から始まります。
ミイラ化してはいますが、4万年も前に生きていたマンモスが、毛までしっかり残ってこんなきれいな姿で出てくるなんて、“永久凍土はタイムカプセル”というだけあってロマンがありますよね!
本展は大きく「過去」「現在」「未来」の3部構成になっていて、まずは過去パートから。メインホールへ行くと、さっそく巨大なマンモスの骨格標本がお出迎え!
恐竜の骨格標本みるときは、単純に「かっこいいー!」とテンション爆上がりするのですが、マンモスの標本はなぜだか若干厳かな気持ちになってしまいました。
かつての人類にとっても、マンモスは食料であると同時に畏怖の対象だったそうです。その気持ちがなんとなくわかるというか…。
ちなみにちょっとこじんまりとしてるので分かりにくいのですが、この骨格標本のすぐ傍に、ケナガマンモスの実際の毛を触れるコーナーがありました。フワフワかと思ってたら、ワラみたいな感じなのね。笑
ところでマンモスの祖先って、どんなだったか想像つきますでしょうか。巨大で全身毛に覆われていてーーというのは、実はマンモスのわりと最終形態の姿だったようです。
最初の頃は毛もなく、アフリカなど熱帯気候で過ごしていたマンモスの祖先は現在のゾウの姿に似ていました。
それがヨーロッパなどに移動し、また寒冷地へ分布を広げるにあたり、その厳しい環境で生きるために毛に覆われた姿に進化していったのです。
ホールには他に、氷河期に生きていた生物の貴重な標本などが展示されています。写真は一番イケメンだったホラアナライオン。↓
続いて現在パートへ。
ここからは、実際の研究状況に迫っていきます。まず驚いたのは、世界で発見されるマンモスのうち80%はロシア連邦のサハ共和国で発掘されているということ。
サハ共和国の土壌はすべて永久凍土で、冬はマイナス50度という極寒の地だそう!ただ、近年温暖化の影響で夏の気温が30度ほどにのぼり凍土がとけることで発掘しやすくなっており、研究が進んでいるのだとか。(マンモスラッシュも要因の一つだそうですが)
温暖化って悪いことしか一切ないのかと思ってたけど、色んな側面があるんですね〜。
とはいえ、永久凍土の中に閉じ込められていたメタンやCO2が放出され温暖化がさらに悪化することが懸念されてたり、一方でこうした土地で農業できるようになってくると将来的な食糧危機に多大な貢献ができるかもという見立てもあったり…。
物事には光と陰があり、そのどちらも理解し議論、選択することが何事においても重要だということですね。
ちなみに永久凍土のレプリカが置いてありました。勝手に永久凍土って氷やと思ってたけどふつうに土の見た目。笑
さて、このマンモス展では、マンモスの鼻や皮膚、バイソンやライチョウなど世界初公開の冷凍標本も展示されていました。
これらは所蔵元であるロシアのマンモスミュージアムに行っても見られない(冷凍庫に非公開保存されている)ので、間近に見れるなんてもう、超超超〜貴重な機会だったようです。
さあ、最初はマンモスの皮フと仔ウマの冷凍標本。奥にあるのが皮フなのですが…すごい、毛穴が見える!この一個一個の穴からあの毛が生えてたのか…という謎の感動。
写真はうまく撮れなかったのですが、ユカギルバイソンの標本が個人的には好きでした。胃の中から有毒な草が発見されたことから、中毒死の可能性を指摘されている個体だそう。たしかになんとなく表情が苦しげで、妙に感慨深いものがありました。
そして目玉は、ケナガマンモスの鼻!こちらも世界初公開!!
鼻は骨が入っていない肉だけの部位なので、切れたり食べられてしまってきれいな状態で見つかってるのは世界中でこのひとつ--まさしく「世界に一つだけの鼻」なのだそうです。日本でこんな展示会をやってくれてありがとう〜…。相当なお金と労力がかかってると思いますが、また何度でもこういうステキな機会を日本に持ってきて欲しいなあ
そして最後の未来パートへ。
ここでのテーマは、現在近畿大学がやっているマンモス復活プロジェクトの内容に焦点が当てられ、サブタイトルの〜その「生命」は蘇るのか〜に繋がっています。
写真は撮り忘れましたが、ここは実際の発掘ドキュメンタリーのほか、プロジェクトの経緯がコミック調のパネルを使って軽快かつわかりやすく展示されており、飽きさせない工夫が素敵でした。そしてパネルの前で「こういう展示会を見た子供のなかから、マンモスのロマンに惹き込まれて研究の世界に入って未来を輝かせる子が出てくるんやろか…」と勝手に想像して、尊すぎて涙ぐむアラサー独身女。(怖い)
ところで近大のマンモス復活プロジェクトについては、以前こんなニュースが話題になりました。近畿大学は、約1万年前に絶滅したとされるマンモスを「体細胞核移植法」と呼ばれるクローン技術で復活させることを目指し、ロシア・サハ共和国の科学アカデミーと共同研究しているのですが、その道のりへの一歩を踏み出せたという話ですね。
こうした生命科学研究の進歩は、絶滅危惧種の保護や再生のみならず、先端医療や食糧問題、地球環境問題などあらゆる分野に役立てられる可能性があります。未来の地球に貢献する素晴らしい近代科学の発展と成果、研究者さんたちの努力には感嘆するばかりです。
しかし同時に、映画ジュラシックワールドさながらの世界を想像してゾッとする人も多いのではないでしょうか。もし本当に蘇らせてしまったら?過去に絶滅した命を、人がもてあそぶという神のような所業。そこには倫理上の問題や生態系への影響のほか、私たち人間には想像も及ばないようなリスクが数多く存在するかもしれないのです。
だからこそ今、少し立ち止まって、生命科学のあり方や発展の仕方を社会全体で議論すべきなのかもしれません。
このマンモス展は、その議論の土壌をつくる前段階として、より多くの人が生命科学の「いま」を知ることができる素晴らしい機会だと感じました。たしかにマンモスを題材にするというのは注目度も高いし、社会への問題提起にうってつけかもしれませんね…。とかつらつら考えていると、最初に紹介したポスターのコピーがなんだかずしーんと胸にきます。
マンモスが蘇り、雪が降りしきる光景。果たしてそこに人は存在しているのでしょうか?私たちはうまく共存しているのでしょうか?だとすれば、それはどんな世界なのでしょう。
出口の手前の壁にも、こんな一文がありました。
科学技術の発展によって、生命を自在にいじることができてしまいかねない、そんなSFのような世界が現実化している今だからこそ、生命とは何か、ということを改めて考え、私たちは議論しなければならないのかもしれませんね。
さて、大トリはユカギルマンモスの実物展示でした。愛・地球博でも見たのですが、あの時は人が多いし流し見で(というかコンベアに乗せられて寿司みたいに流された記憶)まじまじと見ることはできてなかったので、じーっと間近で見られることに感激。が、ここだけ写真撮影はNGでした…
外にでたところにレプリカが置いてあったのでパシャり。
非常に満足度高く、色々考えさせられる展示会でした。また是非、やってほしいですし、今後も夢とロマンに溢れ、また、未来に向けて活発な議論の種になるような情報発信に心から期待しています!