クルマ好きなら一度は憧れたことがあるだろうスーパーカー。その黎明期から現代までをたどる連載企画。第42回は「ヴェンチュリ チャレンジ 400」だ。
ヴェンチュリ チャレンジ 400(1992-1993年)
全長は4mあまりだが、全幅は2m近い。ロードクリアランスは比較的あるので、公道走行も問題ない。
1985年に設立されたフランスのスポーツカーメーカーのMVS(フランス語で「スポーツカー製造会社」の略)は、MVSヴェンチュリ→ヴェンチュリと社名を改名するなど紆余曲折を経ているが、21世紀に入ってからはEVメーカーとなって今も存続している。1990年代にはF1のチームオーナーだったこともあり、また現在はフォーミュラEにも参戦しているから、その名を知っているモータースポーツ好きの読者も多いだろう。さらにEVの世界最速記録などにもチャレンジしている。
そんなヴェンチュリが1992年のパリ モーターショーで発表したのが、今回紹介する「チャレンジ 400」だ。ボディデザインは、当時ラインアップしていたミッドシップスポーツカーの210(210psの2.5L V6搭載)および260(260psの2.8L V6ターボ搭載)をベースにしているが、両サイドの大きなエアインテークやフェラーリ F40風にそびえ立つ巨大なリアウイングなど、かなり過激にモディファイされている。
パワーユニットはベース車同様のPRV(プジョー/ルノー/ボルボ)共同開発のV6だが、排気量は3Lにアップされ、シリンダーヘッドは4バルブDOHC化されている。しかも、各バンクにターボチャージャーとインタークーラーを装着し、最高出力は400ps、最大トルクは49.0kgmを発生。公称の最高速度は350km/h。このパワースペックは、まさに「チャレンジ」400という名にふさわしい。
カーボン製のインパネにVDO製とイエーガー製のメーターが収まる。MOMO製のステアリングはノンアシスト。
インテリアも実戦仕様といった感じで、コクピット内はロールケージで覆われ、シートはフルバケットタイプに5点式のフルハーネスも備わる。カーボン製のインパネにサイドウインドーはアクリル製のスライド式と、まさにスパルタンなものだった。
チャレンジ 400は75台ほどが限定生産された。また、ヨーロッパではF1グランプリの前座レースを含めた、ワンメイクレースのシリーズ戦も展開された。日本にも数台が輸入され、レースには参戦していないがナンバーを取得して公道を走行している。
1993年のル・マン24時間レースには、チャレンジ 400をベースに最高出力を500psにまでパワーアップした「LM500(もちろん、LMはル・マンの略だ)」というマシンが7台出場し、総合24位(クラス9位)を筆頭に、5台が完走を果たしている。
フェラーリ F40風に高くそびえ立つリアウイングも特徴的。右リアフェンダー上のフュエルキャップもレーシングタイプ。
ヴェンチュリ チャレンジ 400 主要諸元
●全長×全幅×全高:4120×1990×1170mm
●ホイールベース:2400mm
●重量:1050kg
●エンジン種類:90度V6 DOHCツインターボ
●排気量:2975cc
●最高出力:400ps/6000rpm
●最大トルク:49.0kgm/3500rpm
●駆動方式:縦置きミッドシップRWD
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:前245/40ZR18、後285/35ZR18
●当時の価格:2300万円