約半世紀ぶりに内部公開が実現し再び脚光を浴びる"太陽の塔"! 【シネマの時間】第41回は、その魅力と謎に迫るドキュメンタリー映画『太陽の塔』をご紹介。1970年大阪千里丘陵で開かれた日本万国博覧会(大阪万博)のアイコンとして一際異彩を放ったのが芸術家・岡本太郎が制作した太陽の塔でした。9月29日(土)〜全国公開です!
こんにちは。アートディレクターの諸戸佑美です。
1970年、芸術家の故・岡本太郎氏がデザインした日本万国博覧会(大阪万博)のシンボル ”太陽の塔" が耐震改修工事を終え鮮やかに再生し、今年3月から内部の一般公開も始まってますが、読者の皆さんは ”太陽の塔” をご覧になったことはありますか?
”太陽の塔”は、金色に輝き”未来”を象徴する頂部の「黄金の顔」、”現在”を象徴する正面の「太陽の顔」、”過去”を象徴する背面の「黒い太陽」そして、人間の”精神世界”を象徴する「地底の太陽」という4つの顔を持っています。
内部にある展示空間「生命の樹(き)」には、生物の進化の歴史を表現したオブジェが飾られ、それらの多くが現代の技術で復元され、躍動感に満ちた空間を体験できます。
また、外から見ることができる3つの顔の他に、当時地下に展示されていたものの、万博閉幕後に行方がわからなくなっていた「地底の太陽」を再現、「第4の顔」「幻の顔」とも呼ばれる貴重な展示も見ることができるようになりました。
しかし、作者である岡本太郎は、何のためにこの巨像を創ったのでしょうか?
【シネマの時間】第41回は、その”太陽の塔”の謎と魅力に迫った長編ドキュメンタリー映画『太陽の塔』をお送りします。
監督は、安室奈美恵やAKB48、Mr.ChildrenなどのMVや数々のCMを手がけ、カンヌ広告祭ではヤングディレクターズアワードなど3部門を受賞、公募によって選ばれた映像ディレクターの関根光才氏!
当時、岡本太郎の周辺で太陽の塔の事業に関わっていた人々の証言、さまざまな分野の専門家やアーティスト、クリエイターのインタビューなどによって、芸術論だけでなく、社会学・考古学・民俗学・哲学の側面から岡本太郎が語られ、”太陽の塔”に込められたメッセージを解き明かしています。
9月29日(土)より渋谷シネクイントほか全国公開中!
是非この機会にお楽しみくださいませ!
1970年、日本万国博覧会(大阪万博)は、大阪府吹田市の千里丘陵にて、アジア、日本初の国際博覧会として「人類の進歩と調和」をテーマに開催され、77カ国が参加し約6400万人を動員しました。
会場施設の設計を統括する基幹施設プロデューサーに丹下健三。
テーマ展示の制作を担うテーマプロデューサーを岡本太郎が務め ”太陽の塔” を制作。
「芸術は爆発だ!」という言葉で今でも記憶に新しい芸術家・岡本太郎は、一体何のためにこの塔を創ったのか?
ドキュメンタリー映画『太陽の塔』では、当時の記録フィルムのほかに岡本太郎記念館館長の平野暁臣、人類学者の中沢新一、美術批評家の椹木野衣、コピーライターの糸井重里、アーティスト集団のChim↑Pom、探検家の関野吉晴など太郎と「太陽の塔」について語っています。
そのほかチベット言語学者、密教学者、チベット仏教僧侶、考古学者、学芸員といった人々にもインタビューを敢行。
その内容は曼荼羅のように彩られ、 ”太陽の塔” や岡本太郎を知らない人たちへも魅力的に構成演出されています。
「岡本太郎のヒストリー」などを語る、川崎市岡本太郎美術館学芸員の大杉浩司と佐藤玲子
ダンサーの菅原小春は、岡本太郎のエネルギーや哲学を身体から溢れるようなダンスで表現
縄文の少女(織田梨沙)のフィクション/ドラマシーンも見どころ
”太陽の塔” の頂部の「黄金の顔」は、未来。
腹部の「太陽の顔」は、現在。
背部の「黒い太陽」は、過去を表しています。
「新聖感をあらゆる意味で失ってしまった現代に、再び世界全体に対応した、新しい祭りを甦らすことができたら。
『祭り』であるためには新聖な中核が必要だ。太陽の塔はそのシンボルである。
根源に呼びかけ、生命の神秘を吹き上げる。神像のようなつもり。
それを会場の中心に、どっしりと根を張ってすえつける。
おおらかな凄みで、すべての人の存在感をうちひらき、人間の誇りを爆発させる司祭として」ー岡本太郎の言葉より
大阪万博の記録フィルムから。「太陽の塔」背部の黒い太陽は過去を表している。
”太陽の塔” 内部にそびえ立つ「生命の樹」。
アメーバには虫類、恐竜から人類に至るまで292体の生物模型が取り付けられています。
赤い色が印象的な「生命の樹」は生物の進化の道筋を示すとされていますが、体内のいろいろな器官を表すと考えることもできます。
太郎はあらゆる境界を越えていく人でした。
精神と物質、人間と動物、縄文と現代。
劇中では、「縁起の理法」や「無碍(むげ)」という言葉が語られますが、「縁起」はいろいろなものが関係し合っているという考え方、「無碍」とは妨げがない、壁がないという意味です。
パリで太郎と交流があった文化人類学者のマルセル・モースや作家のジョルジュ・バタイユ、粘菌の研究で知られる南方熊楠、禅学者の鈴木大拙らの思想とどう共鳴しているのかなど、森羅万象に深く探求されています。
”太陽の塔” 内部にそびえ立つ「生命の樹」
渋谷駅連絡通路に設置されている岡本太郎による巨大壁画「明日の神話」は、”太陽の塔”と対をなす、太郎の最高傑作でパブリックアートの代表とも言われます。
第五福竜丸が被爆した際の水爆の炸裂の瞬間がモチーフとなっており、悲惨な体験を乗り越え、再生する人々のたくましさを表現。
メキシコで”太陽の塔”と同時期に製作された本作は長年行方不明となっていましたが、2003年に発見され修復を経て、2008年10月から東京都の渋谷駅連絡通路に恒久設置されています。
巨大壁画「明日の神話」
■展覧会『太陽の塔』あべのハルカス美術館にて同時開催!
大阪・あべのハルカス美術館にて「太陽の塔」展覧会も同時開催中です!
ぜひこの機会に、映画と併せて岡本太郎の芸術・感性・魂を体感してみてはいかがでしょうか。
【展覧会概要】
大阪吹田の千里丘陵にそびえ立つシンボル「太陽の塔」。
1970(昭和45)年に日本万国博覧会のテーマ館の一部として岡本太郎(1911-1996)が作り上げた「太陽の塔」が、今年3月ついに息を吹き返しました。
本展では、失われた展示空間を3次元で再現。
太郎がテーマ館全体の根源を表現した地下展示を追体験します。
万博という人類の祭りに太郎が問いかけたものの根源とは?
太陽の塔が内包するものとは?
その構想段階から完成、さらには再生事業までを網羅。
太陽の塔の関連作品や精巧な模型に加え、映像や音響など多彩なメディアを駆使し、岡本太郎の感性を大きなスケールで体感する展覧会です。
会場:あべのハルカス美術館
(大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16F)
開催期間:2018年9月15日(土)~ 11月4日(日)
開館時間 火~金 / 10:00~20:00、月土日祝 / 10:00~18:00(入館は閉館30分前まで)
休館日:9月18日(火)
出典: https://www.aham.jp/exhibition/future/taiyounotou/
■映画『太陽の塔』作品紹介
映画『太陽の塔』は、9月29日(土)より渋谷・シネクイント、新宿シネマカリテ、シネ・リーブル梅田ほか全国ロードショー!
公式サイト:http://taiyo-no-to-movie.jp
監督:関根光才
製作:井上肇、大桑仁、清水井敏夫、掛川治男
エクゼクティブプロデューサー:平野暁臣
プロデューサー:曽根祥子、菅原直太、鈴木南美、倉森京子、桝本孝浩、後藤哲也
ラインプロデューサー:佐野大
プロダクションマネージャー:西野静香
撮影:上野千蔵
照明:西田まさちお
録音:清水天務仁
編集:本田吉孝
本編集:木村仁
カラリスト:Toshiki Kamei
CGチーフディレクター:尹 剛志
アニメーションディレクター:牧野惇
音響効果:笠松広司
音楽:JEMAPUR
製作:映画『太陽の塔』製作委員会(パルコ、スプーン、岡本太郎記念現代芸術振興財団、NHKエデュケーショナル)
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業) 独立行政法人日本芸術文化振興会
企画:パルコ
制作:スプーン
配給:パルコ
製作年:2018
製作国:日本/日本語・英語・チベット語
上映時間:112分/シネスコ/5.1ch
©2018映画『太陽の塔』製作委員会
映画『太陽の塔』登場人物
岡本太郎(芸術家)
赤坂憲雄(民俗学者、学習院大学教授)
安藤礼二(文藝批評家、多摩美術大学教授)
糸井重里(コピーライター)
植田昌吾(太陽の塔設計担当者)
大杉浩司(川崎市岡本太郎美術館学芸員)
奥山直司(密教学者チベット仏教学者)
嵩英雄(太陽の塔ショットクリート技術担当者)
唐澤太輔(龍谷大学世界仏教文化研究センター博士研究員)
小林達雄(考古学者、國學院大学名誉教授)
コンチョク・ギャムツォ(チベット仏教僧侶)
佐藤玲子(川崎市岡本太郎美術館学芸員)
椹木野衣(美術批評家、多摩美術大学教授)
シャーラプ・オーセル(ポン教僧侶)
ジャスティン・ジャスティ(ワシントン大学教授、日本美術研究家)
菅原小春(ダンサー)
春原史寛(美術史研究者、群馬大学准教授)
関野吉晴(探検家)
舘鼻則孝(アーティスト、ファッションデザイナー)
千葉一彦(テーマ館サブプロデューサー)
Chim↑Pom(アーティスト集団)
土屋敏男(テレビプロデューサー、映画監督)
中沢新一(思想家、人類学者)
長野泰彦(チベット言語学者)
並河進(ソーシャルデザイナー)
奈良利男(太陽の塔設計担当者)
西谷修(フランス思想哲学者)
平野暁臣(空間メディアプロデューサー、岡本太郎記念館館長)
マユンキキ(マレウレウ)
織田梨沙=縄文の少女
【シネマの時間】
アートディレクション・編集・絵・文=諸戸佑美
©︎YUMIMOROTO