もくじ
どんなクルマ?
ー ティグアンがベースの7人乗り
ー ディーゼル主体のラインナップ
どんな感じ?
ー パワーと引き換えにした洗練性
ー パワフルな分、燃費は低下 シャシーは万全
ー 3列目のスペースも予想通り
「買い」か?
ー 150ps仕様がおすすめ さもなくば…
スペック
ー VWティグアン・オールスペース2.0 TDI 190のスペック
どんなクルマ?
ティグアンがベースの7人乗り
フォルクスワーゲンが、SUVに本腰を入れはじめた。時間はかかったが、バリエーションはますます増えそうな気配だ。
1月に英国で発売されたティグアン・オールスペースは、そうした展開の一環だ。要は、ティグアンをベースに、2座の3列目シートを追加したモデルである。
われわれはすでに、フランス・マルセイユでの国際試乗会でこれを走らせているが、英国の公道に持ち込むのはこれが初めてだ。
基本的にティグアンがベースであることは明らかにみてとれるが、フロント周りは北米専売モデルの大型SUVであるアトラスに似たデザインが与えられた。
ラジエーターグリルやボンネットは高さを増し、リアドアは延長されている。さらに細かく観察すれば、リアのクォーターウインドウも形状が変わっていることに気付く。
とはいえ最近、フォルクスワーゲンのデザイナーはあまり色気のない堅実なスタイリングがお好みのようだ。
ディーゼル主体のラインナップ
ティグアンから大きく変わったのは、109mm延長されたホイールベースだ。これにより、3列目シートを設置するスペースを稼いだだけでなく、荷室容量の最大値が1655ℓから1775ℓに拡大された。
これは5シリーズ・ツーリングを多少上回るが、2005ℓを呑み込むスコダ・コディアックには見劣りする。
フォルクスワーゲンは、顧客の9割がディーゼルを選ぶと見込んでいる。そこで、ガソリンが1.4ℓ・150psと2.0ℓ・179ps、2機種のTSIであるのに対し、ディーゼルは150psと190psの2.0ℓTDIに、239psの2.0ℓBiTDIも用意する。ちなみに最後に挙げたツインターボ版ディーゼルはアルテオンで試乗したが、力強いものの洗練性には欠ける。
トリムはティグアンとほぼ同様の設定だが、最廉価版はSEでなく、SEナビゲーションとなる。これはSEに対してボディ同色やクロームの外装パーツや8.0インチのタッチパネル式ディスプレイなどが追加された仕様だ。
その上位に当たるSELには、12.3インチのデジタル計器盤であるアクティブ・インフォ・ディスプレイや、4モード式の4モーション4WDシステムを装備。
最上級仕様のRラインには、20インチのホイールやスポーツサスペンションが備わる。試乗しなければなんとも言えないが、そうしたアイテムがファミリーユース志向のオールスペースに適しているかは疑問を感じるところだ。
どんな感じ?
パワーと引き換えにした洗練性
普通に考えれば、150psの2.0 TDIが売れ筋になるところだろう。大柄なクルマに積んでも十分なほど、力強く、燃費にも優れたユニットだ。以前に乗った際に、われわれはこれを「ラインナップ中、速度と経済性がベストバランス」としている。実際、0-100km/hは10秒を切り、燃費は18km/ℓ近いのだから、議論の余地はないはずだ。
それでは、1ランク上の190ps仕様はどうか。多少のパワフルさと引き換えにサウンド的な洗練性はやや犠牲になっているが、基本的には同じエンジンであり、全体的な印象はあまり違わない。
そこに、1250ポンド(約19万円)の価格差に見合う価値はあるか。たしかに、パワーの増したエンジンは魅力的だ。中回転域で、1845kgのオールスペースを難なく走らせる。最大トルクは40.8kg-mに1900rpmで達し、必要以上に飛ばさなければ、静粛性を保つべく7段DCTがより上のギアへ穏やかに自動変速することを許容する。
高速道路でも同様で、このクラスのクルマの多くがそうであるように無理なく走り、しかも巌のごとく動じない。
5座仕様のティグアンでは、クッションの利いた乗り心地がハイライトというべき長所だったが、それはオールスペースにも受け継がれている。もっとも、メカニズムがほとんど変わらないのだから、それは予想できる範疇だが。
パワフルな分、燃費は低下。シャシーは上々
予想できるという点に関しては、エンジンについても同じことが言える。公式には、150ps仕様と燃費は同じで、混合モードで17.0km/ℓとされている。ただし、これはあくまでもNEDCテストによるモード燃費に過ぎない。
実際には、40psの増加分を享受すれば、燃料消費の増加が避けられないことは言うまでもないだろう。また、このチューニングにより、負荷をかけた際のエンジンサウンドがややラフになっている。それらを考慮すれば、われわれとしてはやはり150ps仕様をおすすめしたいところだ。
この手のクルマで英国のB級道路を攻め込むことはないだろうが、そうせざるを得ない状況になれば、バランスの取れた、予測しやすいハンドリングと優れたグリップを示してくれる。
スローなステアリングにはやや慣れが必要だが、少なくとも精確さは備えており、よくしつけられたロールは、コントロールを損なうことなくそれなりのペースで走ることを可能にする。
ウェットコンディションでは、滑りやすいコーナーで後輪が駆動されることにより、4モーションの恩恵をより感じられる。オールスペースはボディサイズの大きさにかかわらず、狙ったラインを通すことに長けている。また、4WDにより牽引重量も増加し、150 TDIでは2000kgから2400kgへ引き上げられる。
3列目のスペースも予想通り
1列目シートのスペースは広く感じられるが、これはトランスミッショントンネルやスカットルの低さによるところも大きい。しかし、シートのホールド性が足りないのは残念なところだ。サイドサポートは、もっと大きくして、安心感を高めてほしかった。
スペース面で言えば、1/2列目ともに190cm弱の乗員が座っても不満はない。これは、MQBプラットフォームの拡大版を用いたゆえだ。
ただし、3列目はそうはいかない。
身長が160cmを超えるようなら、そこには座らない方がいい。余裕があるのは頭上だけだ。それ以外の場所であれば居心地は上々だ。室内が灰色で埋め尽くされ、どうにも無機質に過ぎるとしてもだ。
「買い」か?
150ps仕様がおすすめ さもなくば…
ここで問うべきは、190ps仕様に選ぶ価値があるかということ。われわれの答えは、ノーということになる。
たしかに、ディーゼルの特性はオールスペースにマッチするが、150ps仕様に対する動力性能のアドバンテージはわずかだ。5人以上での乗車や、さらに荷物も多く積むような機会が多い、もしくはしょっちゅうトレーラーを牽引するのであれば、高められたトルクには魅力を感じるだろう。
しかし、そういう状況にないのなら、出費なりのメリットは得られないだろう。150ps仕様の方がやや洗練されている印象で、それを敢えて捨てるに足るだけの説得力がある理由は乏しい。
では、そもそもオールスペースに購入する価値はあるのだろうか。同じエンジンを積むスコダ・コディアックはより安価で、スペースは広く、走りもいい。そういうことだ。
VWティグアン・オールスペース2.0 TDI 190のスペック
■価格 3万6155ポンド(約542万円)
■全長×全幅×全高 4701×1839×1674mm
■最高速度 209km/h
■0-100km/h加速 8.6秒
■燃費 17.0km/ℓ
■CO2排出量 153g/km
■乾燥重量 1845kg
■パワートレイン 直列4気筒ターボ1968cc
■使用燃料 軽油
■最高出力 190ps/3500-4000rpm
■最大トルク 40.8kg-m/1900-3300rpm
■ギアボックス 7速DCT