日本の大学でも取り入れるところが増えてきた「リベラルアーツ」。そもそもリベラルアーツとは何でしょうか?ひと足先にこの考え方が発展した、アメリカのリベラルアーツカレッジの現状も併せてご紹介。注目を浴びる背景を探りながら、リベラルアーツをわかりやすく解説します。
リベラルアーツとは?
Dencey/CC-PD-Markvia commons.wikimedia.orgリベラルアーツは英語で「liberal arts」、人間が自由になるための技能がそもそもの意味です。古代ギリシャで生まれたこの概念はローマ帝国に伝わり、文法・修辞・弁証・算術・幾何・天文・音楽の「自由七科」となりました。
現代では、大学で幅広い分野の教養を習得するための学問という意味で使われています。日本の大学の教養科目に近いですが、目的は単に知識を得るだけではなく、それを使いこなした人間としての成長です。つまりリベラルアーツとは、人間力を高めるための総合的な学問と言えるでしょう。
リベラルアーツカレッジとは?
via pixabay.com上述したリベラルアーツを基本とした教育体制の大学が、リベラルアーツカレッジです。世界のなかでも特にアメリカには、多くのリベラルアーツカレッジがあります。
リベラルアーツカレッジの第一の特徴は、ハーバード大学などの総合大学と比べて小規模で、アットホームな教育環境であること。大学院が併設されていないので、教授からの直接の指導を多く受けられるメリットがあります。
また人文系、理系にこだわらず複数の分野から科目を選択するため、主専攻・副専攻はフレキシブル。たとえば「音楽史とバイオ科学」など、主専攻と副専攻が全く違う分野でも構いません。卒業後は総合大学に編入したり、他大学の大学院に進学したりする人も多くいます。
アメリカでリベラルアーツカレッジが発達した理由は?
via pixabay.comところでリベラルアーツカレッジは、なぜ生まれ故郷のヨーロッパよりアメリカで発達したのでしょうか?その理由は、次の3つだと考えられます。
1. 欧州では昔から高校で手厚いリベラルアーツ教育が行われている。しかしアメリカの高校は違っているため、その部分を大学で補う必要があった。
2. 民主主義の国アメリカでは、市民自身が考え行動するため教養を高める必要があった。
3. さまざまな文化的背景を持った人々から成るアメリカでは、米国人としてのアイデンティティをしっかり持たせる必要があった。
アメリカの主なリベラルアーツカレッジ
アメリカの主なリベラルアーツ・カレッジをご紹介しましょう。どの大学もリトルアイビーと呼ばれる名門大学。リトルアイビーとは、小規模校ながらアイビーリーグと同レベルの教育受けられると人気を集める、大学群のニックネームです。ウィリアムズ・カレッジ(マサチューセッツ州)
Daderot /PD-selfvia commons.wikimedia.orgアメリカのリベラルアーツカレッジで最も名門と言われる、1793年創立の大学です。アメリカUS News社が発表している「大学ランキング」にて、13年連続1位を獲得しています。教育の質がかなり高く、そのレベルはハーバード大学やイェール大学にも劣りません。アマースト・カレッジ(マサチューセッツ州)
Ibn Battuta/PD-uservia commons.wikimedia.orgウィリアムズ・カレッジのライバル校と名高い、1821年創立の名門大学です。日本とも関係が深く、「少年よ大志を抱け」で知られるクラーク博士、同志社創立者の新島襄も学びました。およそ850もの科目から、学生が自由にカリキュラムを組める「オープンカリキュラム」が有名です。ボウディン・カレッジ(メイン州)
Daderot/PD-selfvia commons.wikimedia.org1794年創立、第14代米国大統領フランクリン・ピアースも学んだ名門です。リベラルアーツを「学生が万が一のリスクに見舞われたとき、それを支援するための教育」と考えていることが特徴。専攻・副専攻のジャンルが幅広く、古典学はもちろん LGBTに関する研究まで広く学べます。
アメリカのリベラルアーツカレッジの現状は?
via pixabay.comアメリカのリベラルアーツ・カレッジですが、最近の評判はどうでしょうか?もともとリベラルアーツとは、人間力を高める学問。しかし大学では人間力うんぬんより、収入に直結するもっと実用的なことを学びたいという傾向が近年のアメリカで強まっています。
高い学費を奨学金で賄うアメリカの大学生たちにとって、卒業後高収入の仕事が見つかるか否かは死活問題になることがその背景です。私立大学で学費も高く、現在注目度の高い分野に強いわけではないリベラルアーツカレッジとなると、人気も全盛期ほどではありません。しかし先ほどご紹介したような名門リベラルアーツカレッジは、依然として高い人気です。
今後もリベラルアーツカレッジは注目の存在
リベラルアーツとは、学問を通じて人間としての成長も目指す理想的なコンセプト。アメリカではカレッジの人気は下火になったものの、リベラルアーツの精神が消えたわけではありません。
日本にも東京大学、ICUなど昔からリベラルアーツにのっとった教育を行う名門大学はあり、近年はとりいれる大学も増えています。お子さまの大学進学を考えたとき、アメリカ・日本の名門リベラルアーツカレッジはこれからもオススメと言えそうです。