今、Amazonプライム・ビデオで配信されている『プロ野球
そこそこ昔ばなし』のMCを務めるナイツのふたりに、魅力をうかがう本企画。後編は、出演者の魅力を中心に話を進めたい。
野球を知らなくても楽しめる!
出演者の構成は、プロ野球をよく知る塙 宣之さん、当時それほどでもなかったという土屋伸之さん、まったく野球を知らない吉田明世さんというMC陣に加えて、レギュラーゲストに近鉄バファローズ〜中日ドラゴンズ〜西武ライオンズと渡り歩いた名選手、金村義明さん。加えて、トークテーマに合わせたゲストが2名、トークテーマに合わせてやってくる。
塙 金村さんのトークは天才的。でも、実績は半端ないんですよ。彼が報徳学園で出場した夏の甲子園では、4番打者を努めながら、全試合をひとりで完投したんですから。それだけでもフリになる。さらに言うと、エピソードの固有名詞が常に具体的なのが、リアリティを与えていますよね。ピー音が入ることもしばしばですけど(笑)
土屋 金村さんとその他のゲストとの組み合わせによって、放送回のカラーが変わるのも面白いですね。金村さんとの関係性もあるでしょうし、先輩後輩、同僚といった上下や横の関係が滲み出る。そういう違いを感じるのもまた、番組のひとつの楽しみ方だと思います。
さらにスパイスとなるのは、進行アシスタントの吉田さんだという。野球のことも、当時のこともわからない平成生まれの彼女だからこそ突っ込める部分もあり、それがほどよい味つけとなる。
塙 吉田さんは、中途半端ではなく、まったく何も知らないところがいいですよね。だからこそ、「弱かった」とか「人気がなかった」とか、スタッフが用意した失礼とも思えるセリフでも、ぐいぐいと斬り込めちゃう。
土屋 ゲストの皆さんも、隣に吉田さんがいると話しやすいみたいですね。あの世代の人にしてみれば、扱いが慣れているんでしょう。ホステス感覚で語りかけています(笑)。
塙 VTRを流してスタジオで受けるような番組作りが多いなかで、トークオンリーでつなぐ。これだけシンプルな作りですけど、30分もつんですからすごい。
土屋 カットされている部分もあるくらいですからね。これは、長さ的に、というだけでなく、内容的にも、ですが(笑)。
まだコンプライアンスが叫ばれていなかった、80〜90年代。この番組からは、そうした時代の流れも感じさせてくれる。
塙 ファンとして実感するのは、パ・リーグとセ・リーグの格差や、巨人の別格感は、想像以上でした。彼らの話でリアルに伝わる。今のプロ野球界とは、変わりましたね。
土屋 当時の選手たちからは、今の選手に感じるアスリート感ではなく、プロ野球選手というべつの特別な職業というか組合のような仲間意識や一体感を感じます。
塙 漫才協会をはじめとする演芸界にも、ある種似ているようなところがありますね。金村さんが慕っていた元近鉄の栗橋茂さん。彼のことを金村さんは“師匠”と言っていて、まさに師弟関係だなと。パワハラに近いのかもしれませんが、今となっては金村さんが笑って話せるようないい関係。今の球界にないとはいいませんが、濃厚なものだったと思います。
土屋 師弟関係の何がいいかって、弟子が何かをしでかしたときには、師匠が責任をもってケツを拭くところ。それもあるから、弟子も下手なことはできないんですよね。
最後、ふたりに、この番組の魅力を改めてまとめてもらった。
塙 番組の作りがゆるいせいか、ゲストの皆さんが構えないでしゃべってくれるんです。いわば飲み屋感覚。往年の名選手たちと一緒に飲んでいるような気分で当時を懐かしんでもらえたらいいですね。家のお父さんは、ご家庭のチャンネル争いに負けているでしょうから、自分のスマホでこっそり、イヤホンつけながらでも見ていただきたいですね。
土屋 今の時代のコンプライアンスとか、そういったものからすり抜けるような話がたくさん聞けます。イチローさんの話から、僕ら世代からしても昔の話なんかもある。それでも、皆さんの話力もあって、野球が詳しくない人でも楽しめます。そこまで野球にハマってなかった僕ですら、爆笑がつきないですから。
Amazonプライム・ビデオで、現在14話まで配信中(全15話)。通勤の合間でも、深夜寝る前にでも、自分の時間で楽しめる。思わずニヤつくこと必至なので、公共の場で視聴するときは、お気をつけて!
『プロ野球そこそこ昔ばなし』
配信:Amazonプライム・ビデオ
放送:毎週金曜 全15話
出演:ナイツ、吉田明世、金村義明ほか
巨人の人気一辺倒だった昭和のプロ野球界で活躍した名プレーヤーたちをゲストに迎えるトーク番組。豪傑伝説やパ・リーグの貧乏話などが満載。
ナイツ
ツッコミの土屋伸之(右)、ボケの塙 宣之(左)が2001年に結成した人気、実力を備えた漫才コンビ。漫才協会の真打として浅草演芸界も牽引。「M-1グランプリ」決勝進出(2008-2010)、「THE MANZAI」準優勝(2011)など受賞多数。
Text=髙村将司 Photograph=斉藤大嗣