師匠か、恩師か、目をかける若手か、はたまた一生のライバルか。第43回は、外国育ちのふたり。
ペイシャンスキャピタルグループCEOケン・チャンが語る、JAPAN CAPITAL REALTY社長・齋藤サニー聖一
20年近く日本で大型不動産の投資をしていました。クリスティーズのブランドで、日本で高級住宅販売の取引をやっている人と聞き、ぜひ会いたいと思いました。すると、お互い日本で生まれて幼い頃まで住んでいて、アジア、アメリカに渡り、金融を経たという経歴もよく似ていて。
共通の友人もたくさんいたので、あっという間に打ち解けました。連絡先を交換して、また会いましょうということになって、すぐに会ったんですよね。
昨年、娘が生まれたんですが、それ以降は新米パパとしての役割をたくさん教えてもらっています。幼い娘とどう接していくのがいいか。ファミリーの素敵なやりとりをじかに見せてもらっていますから、とても勉強になります。
ちょうど私は、増え続けるインバウンドに対応するべく、ツーリズム用の大型不動産開発を手がけようと起業したばかり。これまではビジネスの関わりはありませんでしたが、今後はぜひ一緒に仕事をしていきたいです。
やっぱり一番尊敬できるのは、パパ業をしっかりこなしているところですね。どうやっていいパパになるか、今は大きなテーマですから。独立の背景には、娘と過ごせる時間を増やしたいという気持ちもあったんです。
その意味で、サニーは家族を大事にされている、いいお手本。奥さまへの気遣いも学ばせてもらっています。ファミリーでのお付き合いもぜひ継続して、いろいろ教えてほしい。一方で仕事でも、クリスティーズブランドやサニー人脈をぜひ活用させてもらえたらと思っています。公私ともどもどうぞよろしくお願いします。
齋藤サニー聖一が語る、ケン・チャン
金融の仕事を経てハリウッドで役者をしていたんですが、オーディションの時、仕事を休まないといけない。それで役者の多くは飲食店で働きます。僕は時間に融通の利く不動産投資やエージェントの仕事に就きました。その縁から、5歳まで住んでいた日本に3年前に来ることになり、知人に紹介されたのが、ケンです。
不動産業界では有名で、とってもいい人だと聞いていたんですが、本当にそうでした。日本特有の業界慣習から、ゴルフ場での礼儀作法までアドバイスをもらって。年齢も近いし、なんとも気が合うし、信頼できる新しい友達ができたと、僕のファミリーにも紹介しました。
仕事の実績も素晴らしいんですが、何よりいつも謙虚。僕のなかでは、英語のconscienceという言葉がぴったりです。日本語に訳すと「良心」。ケンだったら、無人島にふたりで流されてもうまくやっていけると思っています。
カラオケがとんでもなくうまいらしいんですが、まだ聴けてないですよ(笑)。
ケンに子どもが生まれて、僕が伝えたことは、何より大事するべきは、家族だということでした。子どもが熱を出したら、アポイントをキャンセルするのは、アメリカでは当たり前。そんなことも僕からアドバイスしました。
仕事で日本に来ましたが、僕の妻とふたりの娘はロサンゼルスに住んでいます。僕が娘たちと一緒に過ごせるのは、年に3分の1ほど。家族を大事にしているのを知ってくれていますから、もっとアメリカにいる時間を長くすることができないか、仕事の面でも提案をしてくれています。本当に幸運な出会いをもらいました。
Ken Chan Chien-Wei
1967年生まれ。6歳まで日本で過ごし、シンガポール、アメリカへ。モルガン・スタンレー証券、ABNアムロ証券を経て2005年にGICジャパンの日本支社代表に就任。’19年よりペイシャンスキャピタルグループ代表取締役CEO/CIO。
齋藤サニー聖一
1964年生まれ。ウォール街の証券会社を経て2017年、クリスティーズ社の日本の不動産部門代表に就任。海外ドラマ「SWAT」、「Hawaii Five-O」、「Westworld」などに出演し、俳優としても活躍。
Text=上阪 徹 Photograph=太田隆生