最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座、いざ開講!
「学歴はええよ。人の税金使って学校行った。東京大学だろ」ーーー福岡県北九州市の北橋健治市長について語った麻生太郎財務大臣
向かうところ敵なしだ。もはや麻生太郎財務大臣がどんな失言、暴言を口にしようと、それほど大騒ぎすることもない。11月17日、福岡市で行われた市長選の応援演説。そこで麻生財相は、北九州市の北橋健治市長について、こう発言した。
「学歴はええよ。人の税金使って学校行った。東京大学だろ。しかし、結果として人口は減らして、税収は減らした」
税金を徴収し、その使いみちを決める財務省のトップだ。彼にとっては、"人の税金"="俺の金"という認識なのだろう。それが気に入らないのだろうか、つい一言言いたくなる。彼のロジックでいえば、日本中の国公立の小中高大学を出たすべての人間が"人の金"で学んだことになるし、彼の優秀な下僕である東大出身の財務省の官僚たちも“人の金”で学んだことになる。みんな税金を使ったことを反省すべきだ。
ちなみに麻生財相自身は、父の麻生太賀吉・元麻生セメント会長が彼のために創設したといわれる麻生塾小学校から、学習院初等科に編入。学習院大学政治経済学部を卒業している。一切、税金を使っていない。さすがである。総理大臣時代には、漢字が読めないことが話題になったが、なにしろ税金を使った教育を受けていないのだ。そのくらいは許容すべき範囲とすべきだろう。
もはや芸の域に達したと言ってもいい麻生財相の失言、暴言。「麻生太郎 失言」でグーグル検索をすれば、過去の記事まで膨大にヒットする。この10月にも記者会見で「飲み倒して運動も全然しない人の医療費を、健康に努力している俺が払うのはあほらしくてやってられんと言っていた先輩がいた。良いことを言うなと思った」と言い放ち、批判されたばかりだ。
しかも彼の場合、謝罪や撤回はほとんどしない。部下がセクハラしようが、不正を働こうが、財務大臣の職にとどまり続ける。座右の銘は「天下為公」。公のためなら、自らがどんなに叩かれようと、ひるむところがないのだ。
もはやメディアも野党も国民も「麻生ならしょうがない」という心境に達している。厚顔無恥とも思える堂々たる態度は、男として、人間として、見習いたいものだ。言い間違いばかりしていて、パソコンを使わないサイバーセキュリティの担当大臣は、これからもひたすら言い間違いをし続ければいい。政治資金収支報告書を修正し続けている地方創生を担当する大臣も、どんどん言い訳をし続ければいい。
税金で学んだ私たちも見習おうではないか。石の上にも三年。どんなに批判されても、信じて、やり続ければ、やがてみんなが慣れる。ビジネスパーソンとして、あるいは人間として信頼や尊敬を得られるかどうかは、また別の話だが。
Text=星野三千雄
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