今永昇太(横浜DeNAベイスターズ) インタビュー
■横浜DeNAベイスターズの今永昇太投手は中学時代、軟式野球部に所属していた。意外なことに、当時は決して目立ったピッチャーではなかったという。中3夏は地区の1回戦負けで、ストレートの最速は110キロ台。“投げる哲学者”は、何を想い、何を目標にして練習に励んでいたのか。3月11日に発売した『中学野球部の教科書 育成年代の「技術と心」を育む』より、インタビューを一部抜粋して公開する。(前編)
野球が楽しく、面白かった中学時代 放課後は自分たちで練習に取り組む
――今永さんは、北九州市立永犬丸(えいのまる)中の軟式野球部でプレーをされていました。硬式クラブではなく、軟式の部活動を選んだ理由から教えてください。
今永 小学校のときにソフトボールをやっていたので、そこから硬式に変わることの恐怖心みたいなものがありました。体もそんなに大きくなく、周りに比べて上手なわけではなかった。その当時、野球が上手な選手がボーイズやシニアに入るイメージがあったので、そんなことも考えて野球部を選びました。
――中学入学時の身長・体重は覚えていますか。
今永 170センチはなかったと思います。168センチぐらいで、体重は50キロちょっと。背の順で並ぶと、真ん中より少し後ろぐらいです。
――当時の練習を振り返ってみて、何か思い出すことはありますか。
今永 決して、「強い」と言える中学校ではなかったですけど……、顧問の先生が結構偉い立場の方で、平日の練習に顔を出すのが難しい状況でした。だから、放課後は自主練習のような形が多かった印象があります。
――そうなると、自分たちで野球をやっている感じだったのでしょうか。
今永 そうですね。当時を振り返ると、「野球が楽しいか、楽しくないか」という気持ちの部分が、野球を続けていくうえでの一番大事なモチベーションでした。その中で、自分たちで練習をやれていたのが楽しかったし、何か面白いなと思いながら練習をしていました。自分たちの好きな練習ばかりやっていた思い出があります。
――今永さんの場合は、投げる練習ですか?
今永 いえ。あの頃のぼくは打つことが好きだったので、平日は練習の始まる20分ぐらい前にグラウンドに出て、野手をやっている友達と対決していました。野手の人は結構、ピッチャーをやりたがる傾向があるんですよ。土日になると先生がグラウンドに来るので、しっかり練習していました。
「その練習に価値を見出すことが自分のためになる」
――チームによっては、監督が厳しく指導しているところもあります。中学生のときに、厳しい練習を乗り越える意味はどこにあると思いますか。
今永 プロ野球選手の立場になって今思うことは、結局のところ、その練習に価値を見出すことが自分のためになるのかなと。見出せるかどうかは自分次第。ただ、指導者の方にも、選手にそう感じてもらえるような伝え方をしてほしいですね。
――たとえ厳しい練習であっても、選手が「これは価値のあるもの」だとわかれば取り組み方も変わってくると。
今永 そうですね。そうすれば、選手も「なぜこの練習をやるのか」を理解できる。中学生の頃って、好きなことにどんどんのめりこむ年齢ですよね。好きだから頑張れる。そういう気持ちでいることが、野球を上達させる一番のポイントだと思います。(後編につづく)
■【書籍情報】
『中学野球部の教科書 育成年代の「技術と心」を育む』
(著者:大利実/ 296ページ/四六判/1800円+税)
部活動ガイドラインの導入によって、以前に比べて活動時間が短くなっている中学野球部。長時間練習、反復練習、トップダウンの厳しさを重視した指導法では、子どもたちの技術と心を育てられなくなっています。令和の時代に求められる指導法とはどんなものか。部活指導に悩む指導者をサポートします。
「成長期」「思春期」の選手にどう向き合うか? 7人の名将が明かす「チーム作り」「技術指導」の秘訣
【巻頭インタビュー】
■今永昇太投手(横浜DeNA)
「日常生活すべてが、野球につながる」
■石川・星稜中 田中辰治 先生
人間性も野球も日本一
「チーム星稜」の伝統
チーム作り/技術指導(打撃編)
■東京・江戸川区立上一色中 西尾弘幸 先生
中学野球は土台作り
「もっと野球をやりたい」と思える選手を育てる
チーム作り/技術指導(打撃編)
■栃木・宇都宮市立陽西中 丸岡秀樹 先生
「勝ち上がる集団」になるために――
公立中学校のチーム作り
チーム作り/技術指導(守備・打撃編)
■山梨・山梨市立山梨南中 平井成二 先生
「勝利にふさわしい」チームは
学び続けた先にある
チーム作り/技術指導(捕手編)
■兵庫・神戸市立兵庫中 石川勇介 先生
野球を学び、野球に学ぶ
理想の打撃を追い求めて
チーム作り/技術指導(打撃編)
■山口・下松市立末武中 松前優 先生
『自分との勝負に勝つ』
目標達成のための心構えと技術指導
チーム作り/技術指導(走塁編)
■宮城・松島町立松島中 猿橋善宏 先生
「ひとりでも戦える。どこでも生き残れる」
その力を身に付けさせてあげたい
チーム作り/技術指導(投手編)
練習メニューの一部はQRコードで読み込んで、動画で確認することができます。
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『中学野球部の教科書 育成年代の「技術と心」を育む』