Q1:アウトカウントを勘違いして…
Q1:1アウト一、二塁でレフトフライ。レフトが3アウトと勘違いし、ボールをスタンドに投げ入れてしまった。どのような判定になる?
外野手が3アウト目の飛球を捕ったあと、ファンサービスでスタンドに投げ入れることがある。しかし、アウトカウントを間違え、2アウト目のボールを投げてしまった場合、判定はどうなるのか。1アウト一、二塁、レフトフライという場面で起きたプレーである。
A:ボールデッドで各走者は2つの安全進塁権を与えられる。
B:打者のアウトは無効。シングルヒットとなり満塁で再開。
C:打者のアウトは無効。ホームランとなり3点入る。
正解は…
A:ボールデッドで各走者は2つの安全進塁権を与えられる。
2003年5月21日、福岡ドームで行われた巨人対ヤクルトで珍プレーが起きた。
6回表1アウト一、二塁でヤクルトの鈴木健が放ったレフトフライを、巨人のクリス・レイサムが捕球。2アウト一、二塁となるはずだったが、何とレイサムが捕球したボールをレフトスタンドに投げ入れてしまった。3アウトと勘違いしてのファンサービスだった。
この場合、どのような判定となるのか。
公認野球規則7. 05「次の場合、各走者(打者走者を含む)は、アウトにされるおそれなく進塁することができる」を示した7. 05(g)(2)の項に、こう記されている。
「2個の塁が与えられる場合――送球が、競技場のフェンスを越えるか、くぐるか、抜けた場合。――この際はボールデッドとなる」
「送球」とは、味方の野手に投げるものという印象が強いが、野手の手から離れたものは全て送球という考えになる。スタンドに投げ入れたとしても、送球になるということ。これによって、二塁ランナーの宮本慎也がホームを踏み1点。そのあと、2アウト三塁で試合続行となった。
この試合は結局、巨人が2対1でヤクルトを下すが、もしレイサムのボーンヘッドがなければ、先発の高橋尚成は完封勝利だった。
7. 05(g)(2)がよく適用されるのが、野手の各塁への送球が悪送球となり、スタンドに入ったとき。走者一塁でショートゴロ、この送球がスタンドに入った場合は、二、三塁で再開となる。
Q2:捕手が送球時に球審と接触して…
Q2:一塁走者の二盗を刺すために、送球しようとした捕手の右腕が球審と接触し、投げることができなかった。このときの判定は?
一塁走者の盗塁を刺そうとして、送球姿勢に入った捕手。ボールを握り替え、投げにいこうとしたときに、後ろにいる球審に右腕がぶつかってしまった。そのため、送球が逸れて盗塁は楽々セーフ。球審の妨害に対するルールはあるのか。
A:球審の妨害となり、一塁走者の盗塁は取り消し。
B:審判は石コロ。妨害にはならずに、二盗は認められる。
C:球審が1試合の出場停止となる。
正解は…
A:球審の妨害となり、一塁走者の盗塁は取り消し。
「妨害」と聞くと、攻撃側のチームに発生するペナルティのようだが、それだけでなく攻撃側・守備側・審判員・観衆の種類の妨害が存在する。
2003年6月12日、甲子園球場で行われたウエスタンリーグの阪神対広島で珍しいプレーが起こった。
3回裏2アウト一塁の場面で、一塁走者のブルックス・コンラッドが二塁にスート。広島の捕手・白濱裕太が送球しようとしたところ、右腕が球審に当たってしまい、二塁への送球が逸れてしまった。
このような場合、どのような判定になるのか。根拠となるのが公認野球規則2.44(c)(1)と5.09(b)である。
2.44(c)(1)「審判員の妨害――(1)盗塁を阻止しようとしたり、塁上の走者をアウトにしようとする捕手の送球動作を、球審がじゃましたり、はばんだり、妨げた場合」
5.09「次の場合にはボールデッドとなり、走者は1個の進塁が許されるか、または帰塁する。その間に走者はアウトにされることはない」。(b)「球審が、盗塁を阻止しようとしたり、塁上の走者をアウトにしようとする捕手の送球動作を妨害(インターフェア)した場合――各走者は戻る」
以上2つの規則から、球審の捕手に対する守備妨害が適用され、一塁走者のコンラッドは一塁に戻されることになった。なお、白濱の送球がアウトであれば、守備妨害は適用されずに、アウトはそのまま有効となる。
Q3:打球が塁審に直撃したら…
Q3:一塁線を抜いた痛烈な打球が、野手の後方にいた一塁塁審に直撃。跳ね返った打球をセカンドが捕り、打者走者よりも早く一塁へボールを送った。このときの判定は?
一塁線上を抜ける完全な二塁打コースの打球が、ファーストの後ろにいた一塁塁審に直撃。打球の方向が変わり、セカンドの前へ。打球をさばいたセカンドは、打者走者よりも早く一塁へ送球した。攻撃側にとっては不運な打球となったが、この場合「アウト」となるのか。
A:塁審に当たった瞬間、ボールデッドとなり2つの安全進塁権が与えられる。
B:審判は「石コロ」。ボールに当たっても、インプレーで試合が続く。つまり、打者はアウト。
C:審判に当たったので、ノーカウント。
正解は…
B:審判は「石コロ」。ボールに当たっても、インプレーで試合が続く。つまり、打者はアウト。
「審判は石コロである」という言葉を聞いたことがある読者は多いはず。
公認野球規則6.08「打者は、次の場合走者となり、アウトにされるおそれなく、安全に一塁が与えられる」の(d)項に、その根拠となる記述がある。
「野手(投手を含む)に触れていないフェアボールが、フェア地域で審判員または走者に触れた場合。ただし、内野手(投手を除く)をいったん通過するか、または野手(投手を含む)に触れたフェアボールが審判員に触れた場合にはボールインプレーである」
石コロとなるのは後者。内野手の後方にいる塁審に当たるということは、「内野手をいったん通過」した打球。ファーストの後ろにいる一塁塁審に当たった場合は、ボールインプレーとなる。
2013年8月11日、広島対巨人で起きたプレーだった。3回裏2アウト一塁で菊池涼介の痛烈な打球が一塁線に飛び、ファーストのホセ・ロペスの横を抜けていった。
ところが、 ロペスの後方にいた一塁塁審に直撃。跳ね返った打球をセカンドの藤村大介が捕り、ファーストでアウトにした。抜けていれば、一塁走者はホームインしていた可能性もあった。
ただし、石コロにならない場合もある。それは、6. 08(d)項の前者。「野手(投手を含む)に触れていないフェアボール」とは、野手の前に位置している塁審に当たること。守備機会よりも前に、塁審に打球が当たってしまったら、ボールデッドとなり打者は一塁への安全進塁権が与えられる。
走者は投球当時の占有塁に戻されるが、走者一塁だった場合は押し出される形で二塁へ進む。
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