SUBLIME WITH ROME来日目前、メンバーが語った「SUBLIMEから学んだ無限の可能性」
レゲエ×ダブ×ロックを体現する唯一無二のミクスチャー・バンド、SUBLIME WITH ROMEが21日(月)に来日公演を行う。今回、来日目前のローム・ラミレス(Vo, Gt)が電話インタビューに応じてくれた。
―もうすぐ来日公演が迫っているタイミングでの取材になりますけど、まず今年はSUBLIME WITH ROME結成10周年を迎えますね。
そう! このバンドになってもう10年だ。なんか信じられない気がするよ。ライブをやって、レコードを出して、と繰り返してるうちにここまで来たけど、改めて振り返ると、何もかもがあっという間だった。しかも、今もって最初の頃と同じようにワクワクしながら、みんなでジャムってこうして生き残っているんだからね。
―当時の雰囲気はどんなものだったんですか。当初は何本かライブをやるために始めたバンドだったと聞いてます。
ああ、そうだよ。エリック(・ウィルソン:Ba)とは普通に音楽仲間で、これっていう特別な出会いがあったわけじゃなく、気がついたら友達になっていた。そういう連中がお互いの家に気軽に集まってジャムる、みたいな雰囲気が当時はあったからね。俺とエリックはそうやって、いつの間にか曲作りのパートナーになっていたんだ。で、あいつ(エリック)の思いつきで、「ドラマーを入れて、ショウをやってみないか?」と提案されてね。俺もそろそろいいかもね、みたいな感じで賛成して、あいつが引っ張ってきたドラマーと音合わせしたら、いい感じだったんで、じゃあライブをやってみるかと。でも最初は特にアナウンスはしなかったんだ。会場も小さなバーだったし、試しにやってみるかぐらいのノリだったからね。それが噂を噂を呼んで、世界中から人が集まったんだよ。この名前のバンドが15年ぶりに演奏するのを聞きつけて、わざわざ飛行機で飛んできた人もいたからね。あの日はマジで魔力みたいなものを感じたよ。その勢いでここまで続けてきたようなものさ。
―当時、SUBLIME WITH ROMEの音楽をこれからどうしていこう、という展望はあったんですか?
正直、俺自身は流れに身を任せていただけで、先のことは全く考えていなかった。ただ、楽しかったのは間違いなくて……特にツアーはね。ツアーに関してはどんどんやっていこうという話をしていたし、俺もまだ行ったことがない場所でショウをやるのが楽しみだった。とはいえ、それまではホームレスも同然で、何をやってもうまくいかない人生の袋小路みたいな時期だったから、バンドでツアーするというのがどういうものなのか、まずそこからわかっていなかったんだよ。だから何を期待していいのかもわからず、とにかく天から降ってきたようなチャンスに飛びついたというわけさ。
―描いていた夢、みたいなものもなかった?
いや、それを言ったらSUBLIMEだよ! 俺が初めて惚れ込んだバンドがSUBLIMEだったからね。自分もいつかああいうバンドに入りたいと思い続けていたからさ。彼らの音楽だけじゃなく、ライフ・スタイルにも憧れていたし、すごくしっくりくるものを感じていたから、受けた影響は半端じゃないよ。ずっと彼らを追いかけて生きてきて、それでエリックと知り合えたんだから、ラッキーとしか言いようがないね(笑)。
SUBLIME WITH ROMEの10年間
―あなたは夢を叶えたことになりますね! SUBLIME WITH ROMEとして過ごした10年間、いろんな出来事があったとは思いますが。
この10年でバンドが俺のファミリーになったという感覚があるんだ。それって素晴らしいことだと思うよ。
―10年待たずに解散するバンドもいますからね。
ああ、仮に10年続いたとしても、仲良しじゃいられなくなることがほとんどだと思う。どんな人間関係でも、長く一緒にいれば、良いところも悪いところも、何もかもが曝け出されるからね。ところが俺たちは一緒に笑い飛ばせるように関係性になったんだ。もちろんいろんな出来事があったけど、自分の意見を押しつけるとか、決めつけるとか、そういうことはなかったし、お互いにぶつかり合っても最後はみんなで笑えるような関係なんだ。だから、今もツアー先で一緒に過ごすのが楽しくて仕方なくてね。あと、学んだのは余計な期待をしない、ということかな。俺たちは音楽をやっているミュージシャンには違いないけれど……ただの人間だってことを思い知るからね。常に謙虚さを持ち、とにかく今を楽しむことにしているよ。おかげで様で活動を振り返っても、どれもこれも良い思い出ばかりさ。
―カルロス(・ヴェルドゥーゴ)がドラマーになってからは2年ぐらい経ちますよね。彼がバンドにもたらしたものは何だと思いますか?
良いアティテュードだね。(笑)。
―というと?
もちろんドラマーとしても優秀なんだけど、それ以前に人として優れてる。いい奴だし、穏やかだし、仲間思いだし、俺たちと同じでツアーが大好きなんだ。ツアーを楽しめるかどうかは大きなポイントだからね。俺たちぐらいツアーに出っ放しのバンドは人によっては、ずっとハッピーでい続けることが難しい場合もある。特に家族を持っていると、その辺のバランスを取るのは容易じゃないからね。でもカルロスは全く問題ない。
―カルロスとは以前からの知り合いだったんですか?
うん、何度か会ったことはあった。カルロスとは2年前のツアーから手伝ってもらったから、そのツアーを通して深く知り合ったようなものなんだ。前ドラマーのジョシュ(・フリーズ)はツアーが厳しくなってきて、あいつ自ら言ってきたんだよ、「このバンドのドラムを託せるやつがいるとしたらアイツ(カルロス)だ。超ファッキン・バッド・アスだ!」ってね。
―(笑)。
エリックにはそのセリフがすごく印象的だったらしくてね。そしたらなんと、カルロスはエリックの近所で、車で15分ぐらいのところに住んでいたんだ(笑)。それで早速、会おうということになり、話はトントン拍子に進んだというわけさ。ジャムってみたら、これなら上手くいく!という手応えも感じたからね。
3rdアルバム『Blessings』が内省的になった理由
―そして、カルロスは今年5月にリリースされた最新3rdアルバム『Blessings』で初参加してます。今作の制作自体はどんなプロセスで進んだんですか?
ちょっと時間がかかったね。俺もそうなんだけど、アーティストって割といくつか曲ができたらとりあえずスタジオに入って、レコーディングを進めながら残りを仕上げていくというパターンが多いんだけど、今回は俺がまず自分で曲を一通り書き上げてしまいたかったんだ。歌詞まで全曲しっかりと書き上げた上で、スタジオでは録音だけに専念するようにしたかった。そうすることで音や演奏の良さをとことん追求できると考えたからなんだ。実際、その通りの仕上がりになったと思う。ただ、曲作りには時間を要した。いい曲を書くには手間暇がかかるものなんだ。レコーディングに値すると自信を持って言える曲ができたら、スタジオでバンドに披露して、彼らが納得してくれたら録音に進む。ほかのメンバーにとっては俺が歌詞で悩んでいるのをただ待っているという手持ち無沙汰な時間も省けるし、スタジオでしかできないことに専念できて良かったんじゃないかな。
―じゃあ、レコーディング自体はスムーズに進んだと?
ああ、レコーディングはスムーズだったよ。
―曲作りには手間暇がかかるということですが、今作の楽曲は何かテーマめいたものはあったのでしょうか?
最初は思うままに書き始めたんだけど、ちょうどそれが俺が結婚して初めて子供を持つことを考えて……みたいな人生初の出来事と向かい合う特殊な時期だったんだ。俺にしてはかなり内省的になっていたんだよね。それに伴って、バンドの10年を振り返ったり、自分の今までの人生を振り返ることも多かった。そんな自分の気持ちを曲に書いてみたいと思っていることに気がついて……それも後から考えて、わかったことなんだけどね。完成したアルバムを改めて聴いた時に初めて「あ、そういうことだったんだ!」と自分で理解したんだ。俺の息子が将来、これを聴いて父親が何を考えていたか知ってくれたらいいなと。
―内省的になっていたというのはとても腑に落ちます。今作は過去2作品にあったパンキッシュな曲調は影を潜め、あなたの歌を前面に押し出したメロディアスな曲調が増えてますよね。
ああ、そうかもしれない。俺の感覚としては、歌詞のストーリーがまずあって、その舞台を設定するような感じで曲を仕上げたんだ。
―なるほど。今作の中で個人的には「Spiderweb」が特に好きです。
それは嬉しいね(笑)。その曲はエリックがツアーバスの中で弾いていたベースラインが元になってるんだ。すごくいい感じのグルーヴで俺も気に入っていたからね。そのインスト・バージョンをスタジオで聴き返していたんだけど、今回の曲作りに本格的に取り掛かる前で、あんまりいいアイデアも浮かんでこなかったんだ。でもあの曲のグルーヴは気に入っていたから、「絶対アルバムに入れたい!」と思って書いた曲なんだ。歌詞の内容は自分の気持ちがそのまま表れてる。アイデアが浮かんでこない不安やフラストレーションだったり、レコードを作っても誰か聴いてくれるんだろうって(苦笑)、自信をなくして自分に対してネガティヴになってしまうことがあるんだよ。特にアルバムを作る前はそうなんだ。でもあの曲でドアの扉が開いた状態になり、次に書いたのが「Light On」でね。アルバムでやりたいことがはっきり見えてきた状態で書いた真逆の曲なんだ。
―あと「Thank U」はどうですか。打ち込みを使っていて、他の曲と趣が違いますよね。
ああ、その曲はアルバムにギリギリ間に合ったものでね。今回サンプルを使った曲がいくつかあったんだけど、他は権利をクリアにできなくてね。でも「Thank U」はどうにか間に合って収録することができたんだ。ただ、本当にギリギリでバンドで集まって仕上げる時間もなかったんだ。で、俺は割と引きこもり癖があるんだけど、妻はそんな俺をいつも外に引っ張り出してくれるんだよ。「たまには陽に当たらないと、人と会わないと!」って。俺はそれにすごく感謝してて、彼女がいなかったら思い切り引きこもり人生を送っていたと思うんだ。彼女のおかげで思い切ったこともできるし、より良い自分になれているんじゃないかな。そんな思いをそのまんま曲にしたら、40分ぐらいで仕上がってしまった。それをメンバーに送って聴かせたらすごく気に入ってくれて、「俺たちにも弾かせろ!」と言ってくれたんで、急いで車を飛ばしてエリックのところへ行ってベースとドラムを入れたんだ。
スカっぽいリズムはアメリカじゃ人気がない
―新曲は既にライブでやっているそうですが、観客の反応はいかがですか?
いい感じだよ。曲によっては既に歌詞も覚えてくれて、昔の曲に負けないくらい大声で歌ってくれるからね。特に「Wicked Heart」、「Light On」、「Black Out」辺りは反応がいいかな。俺自身は「Spiderweb」がウケると期待してたんだけど、どういうわけかスカっぽいリズムはアメリカじゃ人気がなくてね。レゲエほどはウケないんだ。アメリカ以外の国だと、途端にスカが大ウケですっごく盛り上がるんだけどね。
―新曲も増える中で、SUBLIME時代の「Wrong Way」「Date Rape」「Santeria」などもいまだにライブを披露してますが、楽曲に向き合う上で何かしら変化が出てくるものですか?
俺にとっては新曲もSUBLIME時代の楽曲もプレイする上での気持ちは何も変わらないんだ。どっちが余計に興奮するとか、そういうのもなくてね。俺にとってSUBLIMEのレガシー・ソングを演奏するのはパーティ感覚なんだ。リスナーとして昔からずっと大好きだった曲ばかりだからね。それを自分でプレイするようになってから既に10年が経っているし、演奏そのものは楽勝なんだよ。その曲に相応しいエネルギーを表現することに専念すればいいだけだからね。一方で新曲は自分自身を投影して書いたものだから、プレイしながら曲を書いていた時の気持ちが生々しくよみがえってくるから、また違う緊張感と集中力を伴うものなんだ。まあ、どっちも楽しいものだよ。
―SUBLIMEというバンド名を冠していくにプレッシャーを感じることもなく?
それも別にないね。そもそも俺ほどのSUBLIMEファンはいないってくらい大好きだから。SUBLIME WITH ROMEはあのSUBLIMEでないことを、俺が一番わかってるんだから。俺はただあのバンドに関連したことをやっているだけで、それをとても光栄に思っているんだ。そして俺たちのファンはきっとSUBLIMEと同じようにこのバンドを愛してくれている。そう俺は信じてるよ。
―あなたは音楽だけでなく、SUBLIMEのライフスタイルに憧れていたと話していましたが、あなたがこのバンドで届けたい最大のメッセージというと?
果てしない可能性だよ! 本当にそれに尽きる。でっかい夢を持っていい、変わったっていい、こういう音楽の本質はそこにある。エリックはいつかロックスターになりたい、スーパースターになりたい、という夢を叶えた。俺もSUBLIMEのおかげでいろんな可能性が拓けて、音楽だけでなくこの業界でいろんなことを覚えて、より広い世界を知って、家族を持つことができた。可能性は常にそこにあるんだから、広い心を持って、前向きに取り組んでいくだけでいいんだ。俺の人生もクソみたいなことが山ほどあったけど、それも含めて生きてることに感謝する前向きさが大事だね。それがこのバンド全員が心がけているメンタリティだと思うよ。自分に正直に、嘘のない生き方をすることさ。
―あなた自身、今抱いている夢はありますか?
昔は世界征服!とか言ってけど(笑)、今はもっと家族と過ごす時間を持ちたいと思ってるよ。ようやく自分に自信を持てるようになってきた俺を支えてくれている大事な人たちと、もっと一緒にいたいと思うようになったんだ。
―では、最後になりますが、あなた方のライブを待っている日本のファンにメッセージをお願いできますか。
日本は大好きで、一番好きな国かもしれないね。妻も日本を愛してやまないからさ。残念ながら今は妊娠中なんで、来年は一緒に行く予定にしてるんだ。とにかく、俺たちを日本というと美しい国に招いてくれて嬉しいよ。日本のパンク・ファン、ロック・ファンに心からの愛を!
<INFORMATION>
SUBLIME WITH ROME
10月21日(月)東京・渋谷duo Music Exchange
OPEN 18:00 / START 19:00
TICKET ¥7,000(税込/All Standing/1ドリンク代別途必要)
問:クリエイティブマン:03-3499-6669
https://www.creativeman.co.jp/event/sublime-with-rome/